【だべりぶ#3】イントロダクション

【空き教室】


「レディースあーんど水野メェン。ようこそ、アタシたちの部室へ!」

「私をレディースと区別しないでください会長。───あれから許可下りたんですか?」

「当たり前でしょ水野。アタシを誰だと思ってるの?」

「トランプの革命で引きずり降ろされた元生徒会長」

「知ってる水野、正論とか事実をそのまま伝えることって、犯罪になる場合とならない場合があるんだよ?」

「うわ、自己中な岡野だ」

「結論、シベリア送り」

「それはもはや独裁者じゃん」

「───すみません、遅くなりましたわ!」

「遅かったね姫崎さん。何かあったの?」

「はい。実は、廊下さんでバナナさんの皮さんを踏んでしまいまして……」

「ろ、廊下にバナナの皮?」

「トゲさんの付いた甲羅さんはそのはずみに避けられたので、結果オラーイだったんですけれどもね」

「あ、一人だけ某配管工カーレースの世界に生きてる? あとオラーイじゃなくてオーライね」

「……あ、そうそう。来る途中でアイテムボックスさんを割ったのですけれども」

「アイテムボックスを? ……まあ、あるか」

「トリプルあかこうらが手に入りましたので、皆さんもおひとつどうぞ」

「あ、ありがとう……どう使うのこれ」

「あれ、もしかして水野ってこういうの初めて?」

「初めても何も」

「そっか……遅れてるね」

「なにに?」

「───さて、ようやく全員そろったことだし、はじめての部会でも開催しますか!」

「ふふ、なんだか楽しくなってまいりましたわ!」

「……今日展開のスピード早くない?」

「あ、わたくしダッシュキノコさんを食べてしまったのでその名残かもしれませんわ。ごめんあそばせ水野さま」

「え、あれがブーストするのってカートだけじゃないんだ」

「……えい」


ガン


った!? 会長、いきなり何するんですか!?」

「だって、水野とひめっちがアタシを無視してラブラブし始めるんだもん。そりゃ、あかこうらの一つや二つ投げたくもなるってぇ」

「……会長、次からは口で言ってください。当たると痛いし、なにせ避けられないので」

「も、申し訳ございません会長さま……」

「───そういえば、みんなアタシのこと『快調』って呼ぶけど」

「『会長』ですね。絶好調の方ではないです」

「そうだったそうだった。……これって、アタシがまだ自己紹介してないからだよね?」

「言われてみればそうですわね。わたくし会長さまの名前さんを知りませんわ」

「流石に水野はアタシの名前知ってるよね?」

「いや……」

「えー? 選挙のときとかに聞いたでしょ、忘れちゃったの?」

「……割と聞いてなかったかも、です」

「意外と水野さまにはそういうところがありますからね。本当にしようのない生き物さんです」

「上位存在の独白じゃん」

「じゃあ今回のテーマは、自己紹介で決まりー!」

「それではまずはわたくしからお手合わせ願いますわ!」

「これバトルものだったの?」

わたくし姫崎ひめざきと申します。HRさんは18ですわ」

「あれ、ホームルームの数字が違う気がするんだけど……」

「ひめっちの好きなことは?」

「部位破壊さんが好きですわ!」

「おっと?」

「好きな武器は?」

「ハンマーさんですわ!」

「これモンハンの話してる?」

「アタシは部長かべなが! HRは768ね」

「HRってホームルームじゃなくてハンターランクのこと?」

「よくみんなからは『怪鳥』って呼ばれてるの」

「だから『会長』ね。狩りの基本を教えてくれるやつじゃないから」

「さて、そろそろ水野さまも自己紹介さんをなさってはいかがですか?」

「そうだよ水野。アタシたちだけ個人情報を渡すなんてフェアじゃないよ?」

「もう名前バレてるんでよくないですか……」

「そういうわけにもいかないでしょー。これから一緒に蜜月の時を過ごすんだからさー」

「あなたとだけは絶対に嫌なんですけど……」

「───あー、水野? その口調やめない?」

「はい?」

「だから、アタシへの言葉遣い。同じ学年なんだし、タメ口でいこうよ。ひめっちにはタメなのに」

「……姫崎さんだって、敬語ですよ」

「それは、ほら。アイデンティティってあるじゃん」

「なら私の口調もアイデンティティです」

「違うよ? 水野のアイデンティティは、サム過ぎるツッコミ(笑)とその変顔だけだよ」

「……もともとこういう顔です。───もう姫崎さん、なんとかしてよ」

「はい、こちらを受け取ってくださいませ」

「……なにこれ」

「南斗聖拳さんの秘伝書さんですわ」

「『南斗貸してよ』じゃなくて『何とかしてよ』って言ったんだけどね。というかこれ、部外者に貸しても大丈夫なやつなの?」

「読み終わりそうになったら教えてくださいませ、続きをお持ちいたしますわ」

「そんなマンガの貸し借りみたいに……」

「ですから、わたくしたち、もう友達さんですわよね?」

「……そう、だね。姫崎」

「! わあ……」

「……えい」

「! ───よかった、後ろを気にかけといて」

「くそっ、みどりこうらは避けられるから奇襲には不利……!」

「そんなくだらないことしてないで、部活の名前とか決めるよ───部長」

「! わ、わあ……」

「……ちゃんと2,000字書いてきたんだから、納得いくまで話し合おうよ」

「み、水野さま、後ろ!」

「え───ったあ!?」

「あ、みどりこうらは反射するから……」

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だべりぶ 似若 雄/Niwaka Yu @Niwaka_Yu

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