これからも、どこまでも。

とるてぃ

これからも、どこまでも。

 今までたくさん走ったね。色んな道を歩いたね。



 目をキラキラさせた君と出会ってから今日まで、あっという間だったな。僕の体がヒーローと同じ色だって、君はとてもはしゃいでいた。



 出かける時は、いつも一緒。糸から糸が離れるあの音が、僕らが外に出る合図だった。公園へ、海へ、町へ。僕と君が出会った場所へも何度も行ったね。



 公園では君と一緒に砂まみれになったね。汚れた僕らを、困った顔をしたお母さんが待ってるんだ。でも、僕はそれが幸せだった。だって、砂まみれの体は君とたくさん遊んだ証拠だもの。



 転んだ日は助けられなくてごめんね。僕のバランスが崩れてあっと思ったのだけれど、どうしようもなく一緒に倒れるしかなかった。ヒーローみたいに手を伸ばせたら良かったのだけれど。帰り道泣きじゃくる君から降ってくる雨を、ただ受け止めるしかなかった。



 夜になると君と離れてしまうから、少し嫌い。でも、夜更かしされる方がもっと嫌だ。だって、たくさん眠ってくれた方が次の日元気に走れるから。これからも早寝するんだよ。



 普段と違う道を歩いたこともあったね。あの道はいつもよりも震えがたくさん響いて、驚いたよ。見上げる景色も見たことないほど色鮮やかだった。道行く人みんなの足取りが軽やかで、なんて楽しい場所なんだと体全体で感じた。君が楽しんでいることも分かったよ。だって、いつもと僕に伝わる音が違うんだもの。でも日が落ちると疲れちゃったのかな、お父さんの腕に抱かれて一緒に寝てしまったね。



 日に日に、僕と僕が離れる距離が長くなっていった。僕で地面を蹴る音は大きくなり、リズムは速くなっていった。それは君の成長の証。本当に大きくなったんだね。でも、それはお別れの前触れでもあったんだ。



 ついに君の足は、僕では包み込めないほど大きくなってしまった。

 それに僕の体はボロボロで、穴まで開いている。これじゃあ君を砂ぼこりから守ってあげられない。また転んで怪我をしたら大変だ。



 だから、お別れだ。ああ僕の友達よ、そんなに泣かないでおくれ。泣けない僕まで泣きたくなってしまう。



 僕より一回り大きな後輩よ、僕の友達を頼んだよ。足をしっかりと包んであげておくれ。そして色んな景色を見てきてね。



 元気でね、僕の友達。まだ見ぬ道を歩んでおくれ。

 これからも、どこまでも。

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これからも、どこまでも。 とるてぃ @Toruti

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