わたしは緑の指を持っていない

西しまこ

薔薇も椿もミモザも枯れた

 残念なことに、わたしは緑の指を持っていない。

 いや、むしろ茶色の指なのでは⁉


 何しろ、枯らすのである。

 庭に薔薇を植えた。

 消えた。

 椿を植えた。

 消えた。

 果てには、ミモザも枯れてしまった。

 毎年花が咲くのを楽しみにしていた花カイドウも枯れた。


 呪いのようである。


 なぜ枯れてしまうのだろう?

 わたしの指が緑ではなく、茶色だからだろうか?

 植物をうまく育てる指を緑の指という。わたしの指は植物を枯らす茶色の指なのだ。


 だけどわたしは庭が季節ごとに変化していく様を見るのが好きだ。

 紫陽花は勝手に元気に咲くし、柿もちゃんと実がつく。

 南天は、母が刈り取ってしまって以来、二年赤い実をつけていなくて、とても悲しい。わたしの茶色の指に負けずに、毎年赤い実をつけていたのに。わたしは南天の赤い実が好きだ。来年こそは赤い実を誇らしげにつけて欲しい。葉っぱは元気だから、きっと実をつけるはず、と信じている。


 イロハモミジも勝手に彩りを見せてくれる。

 青い葉が太陽に輝く時期も好きだし、だんだん赤くなっていく様も美しい。そして赤い葉が散り、ウッドデッキに絨毯をつくると、秋だなあとしみじみする。

 そういえば、ツツジの花も毎年花開く。花を咲かせる短い期間、わたしはあの紫がかったピンクの花を眺めるのだ。幼い日の想い出とともに。わたしは小さいころ、よくツツジの花をつんで、ままごとの材料にしていた。


 わたしには緑の指がない。残念ながら。

 だけど、元気に生い茂る庭木もある。

 だんだん芽吹く様子にも、青々として生い茂る様子にも、そして黄色く茶色くなって寂しくなっていく様子にも、心を慰められる。

 茶色の指のわたしの庭で、わたしを励ましてくれているようだ。


 薔薇も椿もミモザも枯れた。

 だけどまた、植えてみたいなと密かに思っている。



 茶色の指でごめんなさい。

 せめて爪を薔薇色に染めようかとも思うけれど、ネイル苦手なんです。





       了

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