第6話

「嘘でしょ?冗談じゃない!」


「ごめ~ん」




信じられない、どういう神経しているわけ?

ヒロトはしたり顔で形だけの謝るポーズを見せた。



それが余計に、癇に障る。




「ねぇ、わたしに恨みでもあるの?」


「まさかぁ~?だってありんちゃんとデートだよ?皆に自慢したいじゃん」




……あぁ、駄目だ。



やっぱり、ヒロトには日本語が通じない。

いや、日本語だけじゃなく地球語、人間語が通じない。



バン、っとテーブルを両手で叩き、その拍子に立ち上がった。

テーブルの上で踊るグラスと、周囲から集まってくる視線。



ひそひそ声の後に隣のテーブルに座っていた若い女性2人が躊躇いがちに、こちらへ近寄ってきた。




「あの~?俳優の月島ヒロトくんですよね?それから、そちらは~」


「……人違いですから!」




最後まで言わせてなるものか!と、女性が言い終わる前に切り返した。

彼女はポカンと口を開けている。




「わたし、モデルのありんによく似てるって言われますけど、別人ですから!」


「……え?でも、そっくり……?」


「違いますから!!」




とは言ったものの怪しんだ視線を送ってくる女性2人。

そしてそれを楽しそうに眺めているヒロトが、声を出さず口だけを動かした。




"墓穴掘ったね"

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