第一章「聖者の漆黒」第三部「回天」第1話
一般的な子供としての生活はもちろんなかった。
二歳年下の
小学校に入る頃に両親の
「あなたには、二つ年上のお兄さんがいたのよ」
母の
「お
遠くを見るようにして話し続ける母の顔を、まだ幼い
「……外で遊ばせてあげることも出来なくてね…………あなたが元気に育ってくれて……それだけでもお母さんは
まだこの時の母の感情を理解出来るほど、
「……お前もいつかは誰かと結婚して子供を産むだろう…………」
いつもの夕食の席で、父の
「お前のお兄さんのことだ…………
父のその時の表情を、その先も
もちろん父に
社会人になってすぐ、両親を安心させたい感情もあって
地元のスーパーマーケットを数店舗経営する会社の事務員として働いていた
そして
子供が産まれたのは二三歳の時。男の子だった。
そしてすぐに、
そのまま二歳の誕生日の直前に
悲しむ
「
そして、最初は
しかしその時の
そして
両親は
それでもやはり、すでに
両親は娘に対して
いつの頃からだろう。
家の中には暗さしかなかった。
その暗さが呼んだのか、
☆
もう少しで、あれから一年。
昨年の秋。
その家族が病院の
ホスピスとは
しかし
当然
その
「ウチの神社が
背後からの
「
建物自体はまだ売りに出されているわけではない。
その
その時に
結果的には、事件性だけでなく、オカルト的な
そして、二人はその後も関わり続けることになる。
時間的には夕方。
とは言ってもこの季節。まだ意識しなければ陽の
それでも不思議と二人の足音が響く。音を吸収する物質が少なくなることで、
二人ともここに入るのは初めてだった。
それでも
それはこの
その時の記憶は、二人にとって、とても忘れられるものではなかった。
☆
周囲には
病院からは少し距離があった。
その中でも、
「部屋は?」
アパートの二階を見上げながら
そして応える。
「そこの階段を登って……一番奥の部屋です」
言いながら足が動いていた。
先頭に立って階段を登り始める。
「────情報ではここに引っ越したのは一年くらい前……何も変わってなければ
完全に
表面が
──……いるのかな…………
ドアの奥からは何も聞こえない。
独特の嫌な時間が過ぎていく。
やがてドアの向こうからの小さな声。
「…………はい…………なんでしょうか…………」
目を
強い影が、その顔の大半を
「……
ドアの奥の影────
その表情に、
「……病院でのこと……お話を、
「────…………すいません……………………」
小さく低い声と共にドアが閉まり始め、
──……今を逃したらもう助けられない…………
──……? ……助けられない……?
「────本当のことを知りたいんです」
それに続くのは、
「あなたは何も悪くない!」
そこには、予想だにしなかった、両目を
「あなたには何の
他人の過去、感情が見える。
それが
しかし、それは
──…………
その
──……守らなければ…………
そんな感情だけが
そして、ドアが開いた。
☆
現在は事件そのものは解決したとはいえ、あれ以来
どうして自分はあれほどまでに
なぜあれほどの感情が込み上げてきたのか。
そこにあるであろう〝意味〟が
一階は
二階は食堂と
三階は六号室から一二号室。
事件の中心となった
元々八〇歳で
そしてホスピスにやってきた。
誰もいなくなった現在は、どの部屋のドアも開け
かつて、その部屋には
そしてもう一人の
いつの間にか、
やがて、
その現場となった室内。
そこに足音を響かせながら、先に口を開いたのは
「まず
話し始めた
「最初に
その
「まず電話で言ったように、その
「どういうことなの……?」
返しながら
「まさかとは思いますけど……」
すぐに返した
「……情報が間違っているのか、
「でも
確かに
と言うよりは〝まだ言えないこと〟。
でもそれは、
「……
「誰かに
「
その
「
すると、
「……
しかし
「
すぐに返した
「ただの
「
「ほか?」
「自殺した代表の
「……まさか…………」
「
「
「ちょっと多すぎ…………そもそも存在しないはずの
「今回の
その
──……
「あの
「あの
「死んだよ…………」
その
他には何も聞こえない。
聞こえるのは
「…………自殺……」
予想していなかった
僅かに、ゆっくりと下がっていく
「少し前…………
「間違っても……私たちのネタの一つのために産まれてきた人じゃない…………あの人にはあの人の人生があったはず……でもそれを今からどうにか出来るわけじゃない…………でも彼女の人生の始まりが
言葉は出てこない。
「ちなみにこの
「…………
「危険だから関わるなってさ……わざわざ私に伝えてまで…………ますます手を引くわけにいかないじゃんね。もう私の仕事なんだから……それに、
「────待ってくださいよ
「この間の一枚だけ残ってた写真の
その
やっと言葉を返せた。
「待ってください…………でもあれ、
「分かるよ。でも、
「調べましたけど、実際にあれと同じ物って見つからなくて……だから
「……
その日本文化の
「あれ? でも、神社の
「そうだよ。元々は向こうの文化だもん」
「え…………」
再び
それを
「〝鳥の
「よく
オカルト
それを分かっても、
「真ん中歩いてたら他の人の通行の
「もしかして夜の神社が
「お
「ああ……なるほど……」
「
「アンバランスですよねえ」
「何かの
「それこそ
「かもね。どっちにしても
そう言った
背中に冷たいものが走る。
そして、次の
「でも……私はもう一度行くよ。あそこにいる人に約束したからね。〝
しかし、力強い。
☆
その日の昼前。
朝から強い陽差しが降り注ぐ日。
すでに陽と同じ、気温も高い。
予約があったわけではない。
しかし
「
その
「私は
そして、深々と頭を下げた。
〜 あずさみこの
第三部「
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