第一章「聖者の漆黒」第二部「回顧」第3話
静かな夜。
虫の声も、木々の
最も、自室の
あの後、
恐ろしいものを見た。
そうとしか表現出来ない。
今まで妹だと思っていた者は、人では無かった。少なくとも
──…………あれは人の〝目〟では無い…………
──……人の心を
──……ともすればやはり
手を掛けた
──……よもや別の〝
しかし、やがて
以前と同じ、白い
「……
どこまで付け離していいものか、その距離感に
「……
何かを
「
──……まさか…………私はまだ…………
「私は……
☆
やはり、その夜はおかしな夜だった。
流れた空気が
しかしその
声だけ。
「声もかけずに
「
その声が続く。
「
「では…………」
「……
顔を上げた
その赤い輝きに、
そして言葉を
「
「
声を
そして、
それは
それを両手で
「
そして、
──……よもや私を
──………………違う………………
☆
以前のように
その
「……明日は
──…………準備?
〝 ……
──……? ……
〝
──……
しかし、その背中は、今はどこにも無い。
〝 気付かれたか……すでに遅いか…… 〟
そして、廊下にけたたましい足音。
「
しかし、遅かった。
広い
その中央。
そこから
その中に
その横で片手に
首を大きく切り
それが総てを照らし出す。
「すでに……命は見えません……」
もちろん
──……どうする…………
「……
「
「
「しかし
「私のせいです……私が
──…………明日は
「それが私の〝
──……明日の
──……私は……
──…………それが……
☆
本殿。
外から見える一番大きな
まさに神社の中心と言ってもいい。
基本的な
現在の大きな本殿に建て替えをした時、当時の当主────
それは、現在でも
一度神社を出た
その日も、
もちろん、呼んだ相手は母の
本殿の正面及び横の
「さすがに今年は暑いですね」
そう言いながら
「だったらエアコンでも付けたらいいのに」
そう言う
「
「まあ……ねえ……」
広すぎだしね、と言いかけて
そんな状態での
──……何かを
「最近……〝
──…………そっち?
予想外な
「……あそこは…………良くありません」
「良くないって……なんで知ってるの? ゴシップなんて
「あなたが危険だから言っているのです」
常に冷静な印象があった。だからこそ、
──……どうして知ってるのか…………
「説明はあるの? 説明も無しにただ危険って言われてもさ…………私も仕事だからね」
謎が
分かることは、
だからこそ
関わってはいけない理由を知っている。
──……
──…………じゃあ
二人の姉がそれをどう感じているのか聞いたことはない。
──……やっぱり……あそこにはもう一度行くことになる…………
「説明ですか……」
「
「質問に質問で返して
「私は独身ではありませんよ」
「
「このまま気付かずに関わり続ければ……危険だと言っているのです…………手を引きなさい。関わってはいけません」
「つまり……説明は無しか…………」
少しだけ強めの風が、
その風を感じると、なぜか
──……めんどくさいなあ…………
「
「
「分かんないなあ。そこまで言っておいて私に手を引けと?」
「……
──……時間のムダか…………
しかし、
そして、そのリスクは
口を開く
「誰かが風を
──…………誰か……?
そう思った
そして
「…………私は約束したんだよね…………」
その言葉に、背中を向けたままの
──…………約束……?
「……またあそこに行くって、私は約束したから…………」
──……誰と…………
「だから、必ずまた行くよ…………〝あの人〟が待ってる…………」
その
やっと合わせた
──…………だれだ………………
「よもや……〝呼ばれた〟とでも…………」
その
しかし、その
──……お母さんも…………総ては知らないのか…………
「まさか〝ウチ〟が
ゴスロリの
まるで何かを
本殿の木の階段を降りると、幅の広い
その音はやがて大きな
何度も塗り替えられたであろう
──……この
そして、やっと気が付いた。
反射的に声を
「相変わらず
その声に応えるかのように、
「あなたの作り出す〝
そう言いながら
そして、
そして、
──……お
「お姉ちゃんから私に直接なんて珍しいじゃない。いつも裏でコソコソしてたくせに」
僅かに視線を下げたまま、ゆっくりと口を開いた。
「
「
──……でも、
お互いに
しかし
「……あなたがどこまで
「ああ、それね」
「私は〝ヒルコ〟の産まれ代わりなんだって……小さい頃にお母さんに言われた…………」
いわば、もう一人の〝
そう最初に言ったのは
──……私は……お母さんの子供じゃないの…………?
──……神社から追い出されたらなくなる〝産まれ代わり〟なんて…………
「ヒルコの産まれ代わりだから……お姉ちゃんは私を
そう言いながら
石の階段を一歩降りながら、再び口を開くのは
「怖かった?」
ローファーの靴底が、階段を一歩ずつ
しかし小さく、やっと口を開く。
「知らないほうがいいことも…………あるのですよ…………
小さくなるその声に、
☆
駐車場自体も車五台分だけ。元々が普通の神社ではない。通常の
今日も
その駐車場に着くなり、スマートフォンに
「そっちの
『だいぶありました』
スピーカーから返ってくる
『最初にもう一度確認したいんですけど、長男がいるんですよね? しかも一年もせずに亡くなってる……』
「そう。どうしたの?」
『いないんです』
「いない?」
『
「は?」
その
そこはフリーになる前からよく出入りしていた所でもあるが、現在はメインに仕事を回してもらっている雑誌社でもある。オカルトライターの仕事をさせてくれてもいた
そして、
「もう一つ、面白いことが分かりまして…………」
「去年の〝
『ああ……あの事件が何よ』
「
『どういうことよ』
その
「〝
☆
石の階段は十段程。
そこを登り切ると大きな
太い木で作られ、
あちこちの
そんな
黒い和服。
しかし長い黒髪は背中で一つに
夏の始まりの頃。
その周囲は
小さな
その音は本殿の階段の手前で止まる。
そこに、本殿の奥からの声。
「……元気そうで何よりです」
その声は、
返る声は
「
一年前のあの夜────。
使用人たちが集められ、
それだけの時間を
その
まだ暗い森の中。前後を使用人に
──……もし殺せたとしたら……
──…………だったらどうして……
──……何か……おかしい…………
聞こえる音は、背後。
そこで、使用人は
──……
──…………さすがだ……私ほどでなくとも
そして、使用人は本人の意思とは関係無く
そのまま
そして、
その姿に顔を振った
「死ぬか、戻るか、自分で決めなさい」
そして、
〝……私のせいです……私が
──……本当に…………
──……
──………………やられた……
──……あの人は…………
──…………私を追い出す為に…………
「
あれから一年後の
それでも背中を向けたままの
むしろ冷静でいようと努めていたのは
「
「〝
しかし、返す
「……
まるで
その
「その
まるで分かっていたかのように
「……
「やめなさい
一言だけ返す
どこからが
最初からか、
事実を知るのは今となっては難しい。
一つはっきりしているのは、
「
間を空ける
「────このままというわけにも…………いきませんね…………」
「どうすると……」
返す
しかし、その
「……今度こそ……私が…………
──…………ならぬ…………
「あの時……私を
──…………それが出来たなら…………
「……
──……
「それとも…………私に…………勝てるおつもりですか…………」
〜 あずさみこの
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