第13話 「風立ちぬ」と筒井百々子先生
私にとって、大切な作品「青春アニメ全集」
OPの歌すらない、少し変わったアニメ作品ですが、私にとって本当に宝物のような作品集です。
ちなみにですが、EDには曲があって、「ダ・カーポ」さんが担当しています。
「青春は舟」という、個人的には名曲なんですが、カラオケに行っても「ダ・カーポ」さんの欄にしばらくありませんでした。
番組全体の音楽を担当されているのが、これまた私の大好きな「坂田晃一」さんです。
ですので、「ダ・カーポ」さんの「青春は舟」を含め、多くの楽曲を坂田さんが手がけています。
劇中に流れる曲も本当に最高で、坂田晃一さんは同時期にNHKの大河ドラマ「いのち」や「おしん」の曲も手掛けている日本音楽会の重鎮でもあります。
また、この方の曲は、サントラなどがほとんど出てこなかった経緯もあり、数年前にようやく坂田晃一さんのベストみたいなCDが出た御蔭で、カラオケに「青春は舟」が入ってきて「やったー!」と思っていたら、また消えました・・・・酷い!。
話は少し逸れますが、当時見た「おしん」、今見るとまた別の視点だって気付きます。
当時は子供目線で見ていましたが、今は親目線で観てしまい、10年前の再放送時には、もう泣きながら見ていました(笑)。
坂田さんの音楽には、最初からノスタルジーが仕込まれているような気がします、狙っていたのなら凄い手法ですが。
前回触れた「あすなろ物語」を見て、自分には前世か過去世があると気付いたのもこの頃です。
このノスタルジーは、もう表現できません。自分もこの時代に居たんだと、確実に解るほど、あの時の衝撃ったらありません。
そんな作品群ですので、当然同じく影響を受けた作品が他にもあります。
その一つが「風立ちぬ」です。
この番組は、完全オムニバス方式ですので、とにかく作風自体が1話ごと異なります。
先の「あすなろ物語」が、まったく萌えを意識せず流行を追わなかったのに対して、この「風立ちぬ」は、少し少女漫画路線を取っていました。
原作を知らなかったときに見ていますので、これほどまでにピュアな恋愛があるのかと、叩きのめされた記憶があります。
本当に・・・・ピュアでした! もう、なんか、もう! って感じの。
この時の衝撃が影響して、この作品でキャラクターデザインをしていた人を、あとで調べてみたらあの作品との共通点があったのです。
キャラデザをしていたのは「筒井百々子」さんです。
番組のクレジットを見ていて、「あれ、この人、覚えがある」と思ったのですが、しばらくは解りませんでした。
それでも後から「あ」と気付いたのが、あの「ペリーヌ物語」です。
たしか、アニメーターの一人で、筒井さんが入っていました。(エンディングにもお名前が入っていますね)
そして、ペリーヌとの共通点はもう一つあって、ヒロイン「節子」の声を担当されていたのが、ペリーヌの声をされていた「鶴ひろみ」さんでした。
もう、本当に絵柄とマッチした声で、清純な節子の声にピッタリでした。
前回触れた島津冴子さんといい、本当に独特の声質、惜しい方でした。
例によって、マニアックな衝撃を受けた私は、この後「筒井百々子」さんのその後を追いかけてしまいます。
筒井さんは、アニメーターの後に漫画家へ転向され、幾つかの作品を描かれています。
もちろん、買いました!
そして、大好きになりました。
今では入手困難な本ばかり、世知辛いですねえ。
このころ、私は絵柄が女性向けだとか、男性向けだとか、そういう発想自体が損をしている、と感じはじめていました。
漫画の半分が女性向けなら、読まないことで自分は人生の半分を損している、そんな風に感じたのです。
今ならそれは受け入れられる発想かもしれませんが、当時はある意味斬新な発想で・・・・男子で少女漫画を読むのは、なかなかに勇気の要る時代。
それでも筒井百々子先生の本は一所懸命読みました。
とてもやさしいタッチで、優しい内容、その影響もあってか、その後、こういった優しい、サラサラとした絵柄が好きになり、「榛野なな恵」先生の「Papa told me」あたりにドはまりしました。
こうして、青春アニメ全集は、色々と私に影響を与えて行きました。
ほかにも「人生劇場」「路傍の石」「潮騒」「野菊の墓」「伊豆の踊子」「春琴抄」「オリンポスの果実」・・・・凄いですね、これほどまで日本文学に正面から向かっていった番組は類を見ません。
それでも、どうして私はこれほどに、これら日本文学オムニバスにハマったのでしょうか?
以前も書きましたが、私は小説が苦手な人間でした。
文字を読むのが苦手、創作を読むのが苦手。
なら、どうしてこれらに取りつかれたようにハマったのでしょうか?
小学生の頃の事でした。
私のいた学区は、とにかく荒れていて、小学校だと言うのに登校してこない生徒や、脱走してしまう生徒が続出するような異常な学区です。
中には、脱走したまま2週間も行方不明になり、その間、民家に入っては盗みを繰り返し、ようやく警察に捕まったと思いきや、その拘束を振り切って更に逃走、そんな小学生がいたくらいです。
学級文庫にエロ本があり、トイレの便器は全て割られ、換気扇の羽も全部割られていました。
常識も倫理も、何一つ効かない世界、両親は私に中学受験をさせようと、激しく勉強を強要しました。
私の人生は、どこか極端な所があって、この頃も毎日死にたいと思うほどの勉強漬けの日々、テレビも禁止、外出も禁止、唯一心が休まるのが国語の試験でした。
小学生の国語の試験は、短い文章を読んで、後から問いに答えるタイプがほとんどで、その短い文章は、大概日本文学で有名なものを使うことが多く、短いながら名作の切り抜きのような文章を読んで、その世界に想いを馳せるのが唯一の楽しみ。
そして、後から解るんですよね、あるわあるわ、青春アニメ全集の中に出てくる作品の多くに、これら試験問題に使われたものが沢山あることに。
小説が苦手だった私にとって、入り口としては丁度良いのかもしれません。
真面目に本に向き合ってしまえば、自分は頭の中がうるさくて、まともに読めませんので、このくらい短い中に、多くの表現を入れてある抜粋であれば、その後を想像することもできますし、頭の中はうるさくないのです。
この「頭の中がうるさい」という表現は、ちょっとおかしな人に思われるかもしれませんが、右脳が強い私のような人には、多くある現象ではないでしょうか。
誰かの創作を読んでいると、自分ならこうする、とか、この方が面白い、などの雑念が入りやすいのです。
それでも、井上靖さんの「あすなろ物語」だけは、その後の鮎太がどうなったのかが知りたくて、全部読んでしまうのですが。
これも読んでいて、やっぱり井上靖さんは、自分と同じ時代を生きた人なんだ、と痛感しました。
どうしても、この作品の時代が、自分の時代だと思えてしまう、不思議な現象がこの頃から延々と続いてしまいます。
もちろん実年齢は井上靖さんとは大きく異なりますが(当たり前ですが)。
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