第12話 「青春アニメ全集」という・・

 前回、マルコポーロの冒険が実はどこにも残っておらず、つい先日まで幻の作品として扱われていた、とご紹介しました。

 ちなみに、このマルコポーロが辿ったトルコ~アルメニア~イランあたりのお話は、私が前に書いていた「娘の「肩たたき券」を転売したバカ親父のせいで、大冒険と大恋愛をする羽目に」の異世界パートに出てくる地域です。

 丁度、今放送している地域がその辺ですので、ぜひ見てみてください、多分これからの異世界系作品で取り上げられる可能性がありますね。(ヨーロッパ・中国・日本を背景とした作品が飽和状態ですので、ちょっと斜め上の地域にスポットが来そうな、来なさそうな・・・)

 

 そして、私が最も危惧したのが、私にとって大切な作品が、消えてしまうのではないか、という不安でした。

 どうか、この作品には消えないでほしい、そんなマイナーながら、名作なんです。

 そのタイトル「青春アニメ全集」と言います。


 ・・・・知っている人、どれくらいいるんでしょうか?


 番組内容は、完全なオムニバス形式で、続いても前段・後段の2話構成くらいで、ほとんどが30分番組1話完結になります。

 そんなオムニバス、毎週毎週人を感動させられるのか、と思われますよね。

 これが凄かったんです。

 当然、1980年代半ばの作品ですし、正直文部省推薦でも狙っていたのか? と疑うような作り、萌えなんて微塵もありません。

 とにかく、真面目に作られた作品ばかりでした。

 どうしてそれほど感動したか、そりゃ、原作が日本の名作文学だからでしょう。

 そうなんです、このアニメ番組、日本文学の中核を成す名作ばかりをオムニバスにしているので、そもそも原作クオリティーは最高な訳です。

 私が最初に、それも偶然見た回、それが「あすなろ物語」です。

 いや、もう、感動なんてもんじゃありませんでした。鳥肌が立ちました。

 人間って、30分でここまで感動出来るんだ、って、思わず反省(反省?)したほどです。

 やはり、感動巨編って、最低でも2時間は必要って当時は思っていましたから、まさか、この尺で精神状態が硬直するほどの感動があるなんて。

 作った方も作った方で、この超大作を30分によくもまあ収めたものです。

 「あすなろ物語」の原作は、いくつかのパートには分かれているものの、全体としては長編小説です。

 この番組では第一編の「深い深い雪の中で」が描かれています。

 劇中では、主人公の鮎太が小学生時代のお話ですが、雪深い田舎の村落に19歳になる親戚の娘「冴子」が同居するところから始まるのですが・・・・この絵柄が、まったく可愛くもなく、美人でもない、それでいて、どこか懐かしいような、人間味を感じることが出来る独特の表現でした。

 思春期直前の主人公の元に、19歳のお姉さんが同居、その時点で主人公にどんな影響を及ぼすか、考えるまでも無いのです。

 この19歳の、ちょっと不良っぽい冴子の声を、もうそのまま「島津冴子」さんが担当されていて、これがまた実に役にピッタリというか、もうこの人でなかったら誰がやるんだ、というほどにはまり役だったと思います。

 島津冴子さんは、丁度この頃に様々な役でヒットしていた頃で、数ある声優さんの中でもちょっと独特の声質だったと感じます。

 この時代の声優さんって、オンリーワンな方が数多くいましたが、どうして現在の声優さんは、なんとなく同じような声質の人が多いんだろうって思います。

 劇中で印象的だったのが、冴子が鮎太の耳元で囁く「トオイ、トオイ山ノオクデ、フカイ、フカイ雪ニウズモレテ、ツメタイ、ツメタイ雪ニツツマレテ、ネムッテシマウノ、イツカ。」と言う言葉で、小学生高学年で19歳のお姉さんに耳元でこんなことを言われたあと、あんな事件が起これば、人生観が変わるだろう、と容易に想像つきます。

 この物語は、井上靖さんの自伝的な作品で、なんだかものすごい少年時代を過ごされたんだな、と感じます。

 先ほど、キャラクターは可愛くもなく美人でもない、と書きましたが、それは現在の価値観に照らしての話であり、正直私にとって今見ても冴子の表現手法はとても魅力的に描かれていました。

 これが、他に例がない独特の描き方で、30分の中で彼女がどんどん魅力的に見えてくるのです。

 最近では「千と千尋の神隠し」で、主人公の千尋が、最初変なキャラクターだな、と思っていたら、最後の方はもう感情移入しちゃって、凄く可愛く見えた、的な、そんな表現方法です。

 本当に見てほしいのですが、何しろレンタルもやっていませんし、DVDも販売されてたのですが、残念ながら現在は販売中止になっています。

 タイトルも「アニメ文学館」として発売されていましたが、あまり売れなかったようで、色々調べましたが、レンタルビデオ屋でも置いているところがほとんどなく、地方の図書館で閲覧できる程度のレベルでした。

 本当に欲しくて、買おうと思ってに入れていたところ、突然販売が中止になり、遂に入手できなかった、というくらい入手困難な映像です。


 この青春アニメ全集、あすなろの他にも、優れた作品がまだあります。

 次に、こちらも本当に見てほしい、という作品をご紹介したいと思います。

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