第27話 松山千春の『恋』の思い出。

 さて高校受験の追い込みの頃にこの松山千春の『恋(作詞作曲松山千春)』がチャートインしたので、早速モーリスのギター使って耳コピして歌いまくったわけだが、そりゃ男女交際進行中ってことは恋愛進行中なのであって、『恋』出たらやらない選択肢はない。


 とここで、この小説にはありがちな厨房時代と無関係な話に飛ぶんだが、なにしろ松山千春がらみなので、社会人体験を絡めない手はないと思うわけだ。


 社会人経験おあり、というか会社員経験おあり、の方々には痛いほどわかっていただけるものと思われるが、職場カラオケで松山千春を絶唱するタイプ、しかもこの『恋』なんかを絶唱するタイプの人たち、怖い人多い、の件である。小説書いてるわりに全然新たな知見でもなんでもないことを言い立てるのもどうかと思うが、小説書くにあたって絶対に屋上屋を重ねてはいけない、という法もなかろうと考えあえて書く。


 実際これ自分も遭遇したし。やはりもともと松山千春のキャラクターそのものにそういうところがあるし、ミュージシャン本人にファンが似るっていうことは往々にしてあることなのは、わかっているんだが松山千春好きは特に怖い。なので中3の時『恋』さんざん唄い倒したんだが、職場のカラオケではとにかく松山千春全般避けた。まずその松山千春好きの怖い人になんらかの怖い思いをさせられた人たち、の一群もいるし、当の松山千春好きが、他人の松山千春ナンバー歌唱に関してあれこれ言ってきそうな一触即発な雰囲気ってのもあるし。


 それとこれは今でも明々白々に鮮明に覚えていて、ネット上、各所で既に書いたことだが、また書くと、とある店商売の職場の店舗責任者が松山千春好きで、しかもガチで歌が上手い人で、物凄い切れ者で、職務遂行に関してはかなり優秀な人だったと思うんだが、何しろ癖の強い者の集まる職場だったし、さらにいえば90年代冒頭で、どっちかといえば「反逆」に価値を見出す者がまだまだ多い時代だったため、いわゆる「ハラスメント」も、「逆ハラスメント」、つまり部下が上司をいびり倒す案件の方が圧倒的に多い時代であり、この松山千春好きの店長のケースだと、もちろん本人も怖い人なんだが、まわりにさらにもっと「怖い人」が集まったおかげで、「松山千春好き」が逆ハラスメントに遭っている、という地獄のような状況が生まれていたのだった。しかもその状況下、自分は最下層の若手ヒラ正社員という立場でいたのでかなりややこしい目に遭う。


 店舗改装で大々的に広告もうって、一同開店にむけ、慌ただしく動くさなか、オープン直前、自分はたまたまその時「レジ」担当で、そのレジ周囲に音響システム一式据え付けられているわけだが、松山千春好きの怖い店長がつかつかと歩み寄ってきて、CD棚をあれこれ物色して、ふむふむ、やっぱりこれだな、と一枚のCDをデッキにセットし、自分に向かって、開店と同時に再生スタートするよう指示して去って行った。


 そう、それは松山千春のベスト盤なのだった。もう嫌な予感しかしない。


 何からスタートしたのかはもうわからない、デッキにセットする時にこだわりの曲順に細かく設定しなおしていたのかもしれないが、多分『銀の雨』かなにかが流れ始めて店は開いた。


 ですぐさま、古参社員の人か、あるいは副店長だったか、そのあたりはもう忘れたが、「おいおいおいおいおいおいおい、改装オープンだってのに、これはないだろう」つって有無を言わさず、TスクエアのF1か何かの定番音源に切り替えて、まさにタッチアンドゴーで高速で去って行った。


 で、怖い店長が「?????」って表情で近寄ってきて、「で?」と訊くので、恐る恐る経緯を説明したんだが、

「ふーん?君ってそういう人だったんだ」と静かに去って行ったのである。


 まったくもって徹頭徹尾理不尽過ぎる出来事であった。


 というようなこととは全く関係なく中3の自分は『恋』を歌ってたんだが、しかしこれ内容的に、厨房のリアルな恋の進行と結び付けて、つまり小倉さんのことを思い浮かべながら唄っていたのかどうなのか、ちょっとよくわからなくなってきたな。


 かなり「倦んだ」成年男女の話って感じだもんな。これ。

単に純粋に「音楽」というか「声楽」の楽しみとして唄っていただけかもしれない。


 なにしろ、こちとら「部屋の鍵」の受け渡しとか全然やってないし。

そもそも「お宅訪問」の場合、両親同席、みたいなやつだったし。ははは。


 で、前の方の回で「壮大」な歌い上げ曲の数々をあげつらって書いたが、この『恋』もラインナップに加えてもいいかもしれない、と今思った。


 ちょうど前回森山良子の『恋人』に触れたことでもあるし、タイトルに「恋」の語句を含む、1980年3月、つまり中学卒業までに聞き知って、印象深い曲の数々を挙げていく。


 やっぱりなんといってもフィンガー5の1973年『恋のダイヤル6700(作詞阿久悠作曲井上忠夫』だな。そうそうフィンガー5は自我の芽生え前の小学校低学年時の流行なので記憶定かじゃないんだが、ちゃんとした「ステレオセット」の前段階の、ポータブルレコードプレイヤー時期に親にねだって生涯初入手した「おれの」シングル盤がまさに1973年『個人授業(作詞阿久悠作曲都倉俊一)』だったのは確かだ。


 で、1974年『恋のアメリカン・フットボール(作詞阿久悠作曲都倉俊一)』ってのもありましたね。


 やはりその「コーセー歌謡ベストテン」スタート前の記憶ってこう無理矢理掘りこさないと浮かんでこないものなのだなあ、と今あらためて実感中ですわ。フィンガー5クラスですらこの27話にくるまで全く失念してたってことですもんねえ。


 あくまで1980年まで、ってしばりだと、そうそうないかな、と思いきや、いくらでもありますよねー、ってことでこれを忘れちゃいけないってのが1978年『青葉城恋唄(作詞星間船一作曲さとう宗幸)』でして、ぶっちゃけ当時はヘビロテで聴いた唄った!ってことはなかったんだけど、大阪近鉄バファローズ消滅後、東北楽天ゴールデンイーグルスのファンになった経緯もあり、会社員の頃に一人旅で2005年から連続5年仙台へ試合観戦を兼ねて行ってまして、その2005年にフラッと広瀬川周囲を散策して驚いたんですわ。いや、これが杜の都の「杜」っていうことなのか!?みたいな。


 事前に、仙台って都会なんだろうし、都会を流れる一級河川ってことなんだろうし、ってことで多摩川とか、あとは隅田川やら荒川とか、ああいう景色を想像してたら全然違うんすよね。ああいう整備された人口感は薄くて、とにかく深くて鬱蒼としていてほんとうに緑が濃いうえに、ダイナミックに蛇行してたりなんかして、野趣に溢れすぎ!!って思いました。景色が目に飛び込んできた瞬間に。


 ああ、これは唄わざるをえないわ、って思いましたからね。


 で「恋」のタイトルの80年代以前の印象深いのっていうと、1968年ピンキーとキラーズ『恋の季節(作詞岩谷時子作曲いずみたく』で、これは多分那覇の邸宅で『長崎は今日も雨だった』のようにテレビの前で直立不動で歌真似してたと思いますわ。


 そうそうもしかして森山良子の『禁じられた恋』もギリギリそのテレビで見てたかもしれない。なんかこう『恋の季節』と『禁じられた恋』ってセットになってる感覚ありますわ。個人的に。


そしてなんといってもあれですよ西城秀樹1974年『激しい恋(作詞安井かずみ作曲馬飼野康二)』がありましたねえ。


 これはもうテレビのなにかの歌番組で見て知ったわけですけど、これほど「一度聴いたら忘れない」唄い出しってありますかね?他に?


 ってことで今ちょとつべ動画で振りかえってますけど、いやいやこれは凄いっすわ。何から何までゴージャス感に溢れてる!!


 ああ、「激しい」とは正義なのか?と激しく思わざるを得ない!!みたいな。






















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