第28話 さよならの前の『異邦人』
いやあ、『異邦人(作詞作曲久保田早紀)』流行りましたよねえ、と、アンタッチャブル山崎 が「いやあ『北酒場』流行りましたよねえ」と冒頭切り出して全然違う内容の漫才を始めるとか、そういうのでなしに、『異邦人』の話をちゃんとする。
『異邦人』1979年10月1日発売で、あれよあれよの大ヒットで、そこから年末年始にかけチャートを賑わせたので、自分らがTD中卒業する直前の大ヒット曲ということなのであり、そりゃまあ詞と曲と編曲、そして本人のルックスも含めの後世に残る名曲となったわけだが、中森明菜もカヴァーしていることだし、いろいろな意味で全く文句のつけようのない売れ方だと思うし、今となっては、その売れるまでの経緯そのものも広く知れ渡っているっていう何から何まで破格の超ド級なわけだが、この小説、次で終わろうと思ったときの「最後から2番目」感覚だすのにどうしよう?って瞬時の気の迷いも無きにしも非ずだったが、そうと決めたら、やっぱこれだな、と。
単純にタイトルの『異邦人』っていう語句に反応してるんだが、那覇からパスポート使って関東南部に住まい始めましたよ、っていうのが自分の70年代のスタートだったわけで、そこからアラ還の今現在にいたるまで、あちこち転々と過ごしてきた、この数十年のあれやこれや全部ひっくるめると、まさにいついかなるときも「異邦人」な感覚あるなあ、みたいなね。
どこにいても、「ずーっとここにはいないだろうな」っていう予感がつきまとい、でもってそれが結果になってあらわれる、と。
ま、しかし、それを深刻に考えたことはない。そういうものだ、とどこかの時点で割り切った。
その「どこかの時点」ってのは小5小6のクラスメート吉田さんとの別れの時ではない、と思う。
明らかにこの久保田早紀の『異邦人』ヒットの頃からだと思う。
でまあ、歌の文句のなかの「サヨナラだけの手紙」すら書かず、去るんだな、っていうような。
いやこれは、そういう行為を褒めてくれともけなしてくれともなんとも言えないところはあるんだけど、まあとにかく別離にあたっての「儀式」とかいちいち壮大なものはいらないんじゃないか、っていうような感覚はこの頃からだろう。
常に腰を低く、軽く、っていうようなね。腰を低くってのは、謙譲の意味じゃなく、かがみこんで身をひそめるみたいな感じですかね。
で、ちょっと自分の居場所ってものがよくわからんわ、的な異邦人的なあれこれの唄ってものをいろいろ探ってみよう。
そういうのはほんとに「1980年3月まで」しばりでも枚挙にいとまがないほどにたくさんありますわな。
あれこれ考えるの面倒くさくなってきたので、ああ、これほんと居場所無い感じだよなあ、っていうのの最たるもの、の曲をいのいちばんに出すと『青空ひとりきり(作詞作曲井上陽水)』ですよね、そりゃもうね。で、ですね、これを引き合いにだしたかつての自分の文章をざっくり、載せますね。2004年6月13日の野球日誌です。
2004年6月13日 (日) 合併合意の日「青空ひとりきり」が鳴り響く。
近鉄 - 日本ハム 13 回戦 13:02 大阪ドーム
FS 0 3 0 0 0 2 1 1 0 7
BU 4 0 0 1 0 0 2 0 1X 8
終了 近鉄8勝5敗 観客: 30000 人
[投手] 日本ハム : 正田-芝草-河本-建山-横山
近鉄 : バーン-小池-吉川-吉田
[HR] 日本ハム :
近鉄 : 鷹野4号[ツーラン]大西3号[ツーラン]
[勝ち] 近鉄 : 吉田 2勝 4敗
[負け] 日本ハム : 横山 2勝 2敗 13S
早番だったので職場のPCのヤフートップで
合併合意を知る。
以後数時間まじめに吐き気と眩暈に襲われる。
しかしおれも少しは世間の荒波にもまれてきた大人だ。
とにかく気を鎮めることに努めた。
そのときぐるぐる頭で回ってたのは
「♪楽しいことならなんでもやりたい。
笑える場所ならどこへでも行く。
悲しい人とは会いたくもない。
涙の言葉で濡れたくはない。♪」
ってゆう陽水の「青空ひとりきり」の節。
おれが最も敬愛する「邦楽」の「アーティスト」ってゆうと
やっぱ陽水なんだよね。
「最愛」のチームが消えることが確定的になって
真っ先に思い浮かんだ。
石本酷使の岡本監督時代、10・19、
ブライアント4連発、野茂石井同時入団の奇跡のドラフト、
そして鈴木啓司の暗黒時代、福留入団拒否・・・・
おれの年齢から言えば、
今現在の大阪近鉄よりは、過去のチーム、または選手たちのほうに
より思いいれを強くしていても不思議ではないんだろうが、
おれは98年以降のノリ、ローズを中心とした
「より現在に近い」近鉄を一層愛しているのだ。
ローズが抜けた時点で覚悟はしていたが、
いざ現実をつきつけられるとただただ呆然とする他はない。
いま金村がプロ野球ニュースで
名前こそ出さないまでも「ノリ」をやや悪玉に挙げた感じの
コメントを出してた。
そのことをとやかく言うつもりはないし、
それで金村を嫌うつもりもない。
当然のことながらこれは
近鉄、オリックスだけの問題ではなく、
「日本の野球全体」の問題だと思う。
日に日にじわじわと「衝撃波」が広がっていくだろう。
巨人や阪神も安穏としてられないはずだ。
とにかくまず言いたいのは
「合併」で「球団数減」なんてのは笑止千万、愚の骨頂だ、ってことと、
それに付随して出てくる「1リーグ構想」なんてのも絶対支持しない。
ってこと。
「大阪近鉄死守」なんてなことはさすがに言わないので、
基本的な立場としては
「パリーグ死守」だな。
記者会見を見て思ったのは
「おまえらは今後一切野球界周辺に現れるんじゃねえ」ってただそれだけ。
なので「おいおいこれレールウェイズ?」みたいな、
「スタメン構想ごっこ」はいまのところまるっきりやる気にならない。
とにかく現実的に「いまそこにある」試合をめいいっぱい戦って
とにかく「日本一」を目指せ、とただそれだけだ。
で、こうゆう「非常事態」が「メロドラマ」的に作用して
あれよあれよ、という間にリーグ優勝、そして日本一、
と簡単に事が運ぶほど世の中甘くないと思う。
その意味で今日の試合、スコア的に「劇的」だったので
「よーしこれで、ここから神がかり的に」とかはおれは思わない。
ただ、「点の取り合いのシーソーゲーム」を制した、ってのは
実は今季、けっこうなかった展開なのでその意味では
「新たな勝ちのパターン」を得たって意味では大きい。
いわゆる「経験値」があがったってやつね。
とにかく鍵を握るのは北川と鷹野。
この「フルシーズン働いたことのない」二人。
「おやおや疲れが出始めましたかね。」ってなスイングを
金輪際しなければ、なんとか打線は形になるだろう。
「生活かかってる」微妙な層の人達だし。
で、ふたりとも今日はよかった。しかしこれを続けられるかどうかだ。
シーズン、シリーズを勝ち抜くための「生命線」は、
従来の牛では考えられない、それこそ「奇跡」の
「先発陣」だ。
これがあるので真面目に「優勝」はあり得ない話ではない、と
おれは思っている。
岩隈、バーン、パウエルの3本柱。
これをあらゆる順列組み合わせ、知略を駆使して最も効果的な
順番で回す。プレーオフ寸前になったらそれこそ
「捨て試合」も計算づくで作る。
そしてノリは必ず復帰すること。
あさっての「東京ドーム」最後の
「大阪近鉄」は当然万難を排して現場で見届ける。
尚、ダイエー球団の営業戦略なのか
「前売り」一塁側は完売。
どうやら「東京ドームをダイエーファンで埋め尽くそう」作戦なのか
前売りは「ダイエー得意」のローソンの端末でしか買えない様子。
おれは2週間程前に本社の近くのローソンで
3塁側内野指定一枚買っておいたのだ。
当日券はどう売るのかは知らない。
とにかく、
正真正銘、最初で最後の「ダイエーー近鉄」at東京です。
ってことで以上2004年の野球日誌を載せてみたんだけど、
なにしろほんと当時、パ・リーグファンかつ大阪近鉄ファン、っていうのは世の主流からみれば、ほぼ完璧な「異邦人」感ありましたねえ。
ええ、そりゃもう、こんな騒ぎがおこったときには
まじめに、ぼくたちどこからきてどこへいくんだろう?
っていうような感じになりましたよ。
これいま振り返ると、観客数発表が実数でない丼勘定のころっていうのが、またなんともいえない物悲しさがありますよねえ。
ということで、最後から2番目の話、で厨房時代の音楽と恋の話から大きく逸脱しまくったわけですが、それもまた人生ということで。
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