第3話 みちこ先生
小学生時代、私は大人が嫌いだった。多感だった私を腫れ物扱いし、誰も私に深くは関わろうとしてこなかった。私の周りには嘘ばっかり言って私の機嫌を損ねないように取り繕う大人ばっかりだった。しかし、みちこ先生は違った。間違ったことは間違っているといつもはっきりと私に教えてくれた。そして、いつも真剣に私に向き合ってくれた。時には言い合いもした。しかし厳しさの裏にいつも優しさがあり、先生の言葉に何度も勇気づけられた。私がこの仕事に就いた理由も彼女にあった。本当に大好きだった先生は当時、やや太っていて、いつも笑顔で元気いっぱいだった。そして、カウンセリングルームに来た先生にその面影は一切見られなかった。
彼女は私の事なんて覚えていないように淡々と私を見つめていた。私は彼女のそんな反応にどこか安心感を持ったのと同時に寂しさも感じた。私は仕事と割り切り、とにかく私情を挟まず彼女との対話を通して、心理的状況をアセスメントしようと試みた。「今から質問します。答えられなかったら、答えなくて結構です。よろしくお願いいたします。」ゆっくりと彼女はうなずき、ただひたすら私を見つめていた。そんな彼女にどこか圧を感じた私は、手に汗かきながら一つ一つ質問をしていくのであった。名前や、年齢、趣味、今困っていることなどを淡々と自信なさげに聞く私。そんな自分にどこか情けなさを感じた。彼女は力を振り絞るように一つ一つの質問に丁寧に答えていた。早くこの気まずさから抜け出そうと今回のカウンセリングを早々に切り上げようとした時、彼女の口から衝撃的な言葉が出てきたのだ。
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