第3話 再会

今日は水曜日だ。

障害者雇用で働いている果歩は午後4時で上がれる。

会社を出るとアートスクール大宮のある大宮ソニックシティに急いで歩いた。

途中、ファーストフードで早い夕飯を食べ、教室に入る。

今日も高橋先生は女性生徒に交じってキャッキャと騒いでいる。

噂では高橋先生はゲイであり、それを知った男性生徒は違う曜日に速攻変えるらしい。

なので、男性生徒が夕方の部でもいないので、出会いがない。

最も、出会いなど期待していないのだが・・・。

それにもまして、高橋先生は今日はすごいはしゃぎようだ。

「見てー!この血管」

どうやら、新しく男性生徒が入ってきたらしい。

近くにいた和子さんに探りを入れてみた。

「イケメンのサラリーマンのおじさまが入ってきたのよ。なんでも、昔、バンド組んでたんだって。それで、音楽の話で高橋先生と盛り上がってね。というか、高橋先生が勝手にすり寄ってるんだけど。また、違う曜日に変えるわよ。新しいおじさま。」

果歩はいつものことだと思い、イーゼルとキャンバスを用意して、油絵に取り掛かった。

「キャー!康孝さん、初めてにしてはデッサンお上手ー」

康孝?同じ名前の人はごまんといる。

早く絵に集中したい。

果歩は、その康孝さんと高橋先生のやり取りを見ないで、黙々と描いていた。

「果歩?もしかして、果歩だよな?30年たっても変わらないな。俺だよ。柏木康孝だよ。久しぶり。こんなところで会うなんて」

果歩は、びっくりして、後ろを振り向いた。

白髪頭の康孝が立っていた。

白髪頭でしわがあるが、それ以外はおなかも出ていないし、太ってもいない。

康孝の面影が残っている。

夢?

果歩はどうしたらいいかわからなかった。

「あらー。康孝さん、授業に集中集中。小菅さん何色目使ってるのよ。二人とも授業に集中!」

高橋先生がヒステリーをあげた。

「小菅さんと柏木さんお知り合い?」

教室が大騒ぎになった。

「お静かに!授業に集中!」

高橋先生はもっとヒステリックになった。

「小菅さん、授業が終わったらちょっとお茶しませんか?懐かしすぎる」

「康孝さん!授業に集中!」

「柏木さんいいですよ」

キャー!

教室中が大騒ぎになった。

「皆さん、お静かに!授業に集中!」

教室中の騒ぎは高橋先生がいくらヒステリックになっても収まらなかった。


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