Chapter ⑤:怪談雑記#1
【胸糞注意】怪談雑記〜きくの保育園〜(2020年11月28日公開)
りっきー氏「では、本日はよろしくお願い致します。わざわざお忙しいところ、取材を受けてくださってありがとうございます。」
東海林さん「お願いします。まぁ、暴露といえば暴露なんですけど、一人であの時のモヤモヤを抱えていたくはなかったので、今日はりっきーさんにお話をしようと思います。……えーっと何から話しましょう。」
りっきー氏「それじゃ、件のきくの保育園の内情についてお聞かせ願えますか?」
東海林さん「分かりました。端的に言うなら、あそこは嫌な職場でした。女の園ならではのドロドロした雰囲気があるというか、表向きは仲が良い感じなんですけどその実は保育士同士でギスギスしてます。園長の仲村先生なんてもっと酷くて、モラハラや陰湿な嫌がらせがすごいんですよ。」
りっきー氏「本当に災難でしたね。東海林さんはどのような立ち位置だったのでしょう?」
東海林さん「私は年齢が一番若かったので、駒使いのような扱いをされていました。機嫌が悪くなると私に自分の業務を丸投げしたり、生活費に困っているとか言って金銭をせびられたこともありました。そのお金も返ってはこなかったんですけどね。そんな折、きくの保育園に若い男性の保育士さんがやって来ました。30歳で水野悠介、って人なんですけど。」
りっきー氏「その、水野さんはどんな方だったんでしょうか?」
東海林さん「とても勤勉で優しい人で、きくの保育園初の男の先生というのもあって子供達からも人気でしたね。私自身も男手が欲しかったんで、彼の登場は喜ばしかったです。」
りっきー氏「確かに子供相手の仕事は体力を消耗しますからね。世間的には男性保育士さんに厳しい偏見を持ってる人が多いですが、意外に男性の方が保育には適役だと思います。」
東海林さん「そうですよね。ですが彼は程なくして、他の保育士さんや仲村先生に目をつけられてしまいました。男性保育士ということもそうなんですが、彼の名前がある人物と読みが一緒だったんです。漢字は違うんですけど。」
りっきー氏「それって、もしかして……溺死事件の一年前に起こった葛飾区の女子小学生の誘拐事件の犯人と同じだったりします?」
東海林さん「当たりです。女子小学生を狙って猥褻な行為を繰り返していた、あの水野佑輔です。ですが彼は水野の親戚でも何でもない赤の他人なんです。にも関わらず、仲村先生達は悠介君に対して嫌がらせやモラハラをするようになったんです。」
りっきー氏「標的が東海林さんから水野……悠介さんに変わった、ということですか。」
東海林さん「そうです。そして2020年の7月、恐るべき事件が起こりました。この日はプールで遊ぶ時間があったんです。りっきーさんは事前に記事をご覧になられているのでご存知だと思います。」
りっきー氏「えぇ、例の事件ですよね。」
東海林さん「あの事件、莉音ちゃんが溺死した責任は悠介君にあるってことになっていますけど事実は全く違います。そもそも悠介君はプールの授業やお着替えからは外されていました。理由は男性の保育士さんが子供達に淫らな行為を働く事件が多発しているという、昨今の事情を踏まえた上での園の方針です。」
りっきー氏「やっぱりそうだったんですね。男性保育士が子供達のお着替えについていたって所にずっと違和感を感じていました。」
東海林さん「その日は私と小関さんの二人で子供達を監視していました。お着替えから、プールでの時間も含めて。プールからみんなをあがらせて教室で着替えさせていた時、子供達は全員で20人いるはずなのに一人だけ見当たりませんでした。慌てて探しに外に出ると、プールの方から女の子の声が聞こえました。プールへ駆けつけると、すっぽんぽんの莉音ちゃんが顔に水をつけたまま空に背を向けて、ぷかーっと浮かんでました。慌てて莉音ちゃんをプールサイドにあげてみると、呼吸が弱々しくなっていました。近くの病院に救急搬送されましたが、悲しいことに……」
りっきー氏「莉音ちゃんとご家族のためにもこの場でお悔やみ申し上げます。では、それからどのような経緯で悠介さんが訴えられることとなったのでしょうか?」
《 Chapter⑥へ続く 》
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