報鳥新聞テレビニュースより

【theドキュメント】最愛の娘のために、民事で戦った夫婦に密着(2020年9月4日放送)

それは某テレビ局がYouTubeにアップロードした動画で、死亡した当時4歳の娘さんの名誉と尊厳を取り戻すために民事訴訟を起こした、30代夫婦の密着ドキュメンタリーだった。

夫婦の名前は袴田嗣晴・世那さん夫婦。

彼らは最愛の一人娘・莉音ちゃんを2020年7月に亡くしていた。死因はプールの時間の際に溺死したことによる低酸素脳症だった。

袴田さん夫婦は園児の監視を怠った保育園を相手取り、事件当日に見守り役を買って出た男性保育士(30)と当時同園の園長を勤めていた仲村尚子氏(57)に損害賠償金・2900万円を請求した。

最初はそのように話が進んでいた。

しかし、あることが起こって事件は急展開を迎えた。被疑者である30代の男性保育士が在宅起訴中に自宅で自殺をしたのである。書類送検をする前の捜査を行ってる途中での出来事だったので、警察や事件関係者はとても驚いた。

男性保育士が亡くなったのは事件発生日の三日後。それは先述のニュース記事が公開された日のことだった。袴田さん夫婦は被疑者である男性保育士の死亡により、損害賠償金を男性保育士の親族と園長の仲村氏に求めた。

結果、袴田さん夫婦は勝訴。

地方裁判所の入り口で、嗣春さんが「勝訴」と達筆で書かれた紙を外で待つ報道陣に向けて、泣き笑いしながら掲げている。かくして損害賠償金2900万円を受け取り、天国にいる一人娘・莉音ちゃんの名誉と尊厳を勝ち取った。

「仏壇もちょっと豪華にして、莉音の好きなアニメキャラのぬいぐるみなんかも供えてみました。」

ラストは父親の嗣晴さんが、莉音ちゃんが大好きだというお菓子やアニメキャラクターのぬいぐるみなどを、楽しそうに仏壇に供える場面で締め括られている。52分11秒の密着ドキュメンタリー動画はハッピーエンド風に閉幕した。

＊

ここで一つ、気づいたことがある。

ラジオ番組に怪談を投稿した小関さんは、男性保育士の存在を隠していたことになるのではないかということだ。

彼女がきくの保育園に勤め始めたのは、先述のラジオ番組がオンエアされ、園を退職した2024年よりも7年前。2017年から勤めていたこととなる。ということは溺死事故が起こった2020年はまだ在籍しているので、当然彼女も同園の保育士として事件に立ち会っているはず。

なのに男性保育士や、事件について全く把握していないのは不自然だ。

あたかも心当たりがない風を装っていたが、ふとした拍子にボロが出てしまっていた。

きくの保育園は「何か」を隠している。

「とはいっても、その当事者に連絡が取れる訳でもないから真相は闇の中だよなぁ。」

しかし情報は再びすぐに見つかった。

先程、Xできくの保育園を特定したユーザー・りっきー(@Ricky_mouth)氏のポストに寄せられた返信の中に溺死事件が起きた2020年当時に、同園に保育士として在籍をしていた方がいた。

SHOWG @shoji_mom ・2024/12/29

夜分遅くに申し訳ございません、事件当時にきくの保育園で働いていたものです。私でよければ当時のことをお話しできるのですが……

その方は既に保育士を辞職しており、園を特定したりっきー氏(本名不詳)に直で会って、当時きくの保育園で起こったことを暴露した。りっきー氏のYouTubeアカウントにはその時の話の内容が雑記動画として公開されていた。

彼により怪談雑記としてYouTubeに公開された、14分59秒のこの動画は取材相手の女性・東海林さん(32)とりっきー氏の会話と、合間にテロップや画像資料を挟んだ内容となっている。

　　　　　　《 Chapter⑤へ続く 》