第74話

「少年」



八千流が狐面へと歩いていく。



「ゾーンってなんだ?」



気になっていたのか……。



「ゾーン?ああ、一華ちゃんはね“黒豹”のことになると抑えが効かず人の話しも聞かないという困ったちゃん状態になることが多々あってね。八千達はその状態のことをゾーンって呼んでる」



「「困ったちゃん状態……」」



下ろしてきちんと立たせた一華が微妙な表情をし、狐面もまた“なんだそれは?”と微妙な表情?


仮面でわからないが。



てか、コイツはなんでいつも仮面をつけてるんだ?



そして誰なんだ?



「昨日といい、今日といい、助けてくれてありがとうね少年」



八千流がニッコリと笑って少年に礼を言う。



我が姉ながら、こういうところは凄いと思う。



無邪気に素直に礼を言えるところ。



俺はまだコイツの正体がわからないから、礼は言えない。



寧ろ、助けてくれたのには裏があるのでは、と考えている。



八千流ももちろんそれは考えているだろう。



でもこうやって礼を言える。



八千流は少年の頭を撫でるべく手を伸ばしーー



ペッ!!



「「……」」



振り払われる。



だが、これで諦めるような八千流ではない。




ぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺぺっ!!



何度もチャレンジしては振り払われる。



「何やってんの?あの二人」



やっと落ち着いた一華が激しい攻防を繰り広げる二人を見て言う。



「頭を撫でようとする者と撫でられたくない者の戦いってところか」



「……へぇ」



ちょっと不貞腐れたような一華。


八千流があっちばかり構うからか。



ぺぺぺぺぺぺウーーッ!!。



パトカーのサイレンの音が聞こえてきた。



竜かな?



「隙あり!!」



「甘い」



ペーーンッ!!



「痛ーーいっ!!」



最後まで八千流は、奴の頭を撫でることは出来なかった。



やるな、狐面。

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