第2話 事件は影と共に
行方不明になった女子生徒を探す依頼を受けた探偵とイケメン店員さんは学校へとやって来た。
「どうだ?」
「やはり……感じますね」
探偵の年季が入ったコンパクトカーの中から学校を見ていると、パトロールをしている警察から声をかけられてしまう。
「ちょっとすいません」
「はいはい」
「すいません、今この場所でパトロールしているんですが、お二人共学校を見ていた様ですが何か用事でもありましたか?」
「いえ、特に用事はないんですよ。 ただパトロールしている警察の方が多いかな〜と思っただけですよ」
「そうですか、一応免許証見せていただいても?」
「ええ、かまいませんが、ちょっと助手席の奴を見てもらえません?」
「なんでしょうか?」
警察官が助手席の店員と目を合わせると……。
「……うん……、もう行っていいですよ……」
「そりゃどうも。 ではでは〜」
少し離れ、学校近くのコンビニの駐車場に車を止め、パンとコーヒー、ホットスナックを買って食べ始める。
「警察がいなくなったら車は近くに止めて、学校に忍び込むしかないな」
「そうですね……、しかし……この車が相変わらずボロいから目立つのでは?」
「なに言ってるんだ! この味がいいんじゃ無いか!」
「……人の感覚はわかりませんね……」
「俺だって、お前がなんでカフェなんてやってるのか不思議だよ」
「それは簡単な事ですよ。 私は人を化かすのが趣味ですからね。 私のこの姿に化かされて連日沢山の女性が来店してくれてますから」
「……そーかい……」
食べ終わった探偵は棒の付いた飴を舐めながら警察がいなくなるのを待っていた。
「おじさんが棒付きの飴を舐めてるのを警察が見たら、また声をかけられそうです」
「うっせー、お前がタバコの臭いが嫌だなんて言うから仕方ないだろ」
「電子タバコなら我慢すると言ってますが?」
「バーカ、あんなのは吸った気にならないんだよ」
「そんなもんですかね?」
「そう言うもんだ……と、そろそろ行くか」
車を学校の近くに動かし、探偵は閉まっている正門をよじ登って学校に入る。
イケメン店員は軽くジャンプして飛び越えてしまう。
「大変そうですね。 手伝いますか?」
「うるへー、いらねえよ!」
なんとか学校へ入ると、イケメン店員のキツネ耳がピクピク動く。
「やはり思っていた通りですね」
「そうか、それじゃ俺の出番は……女子生徒の保護だな」
「そうですね、頼みますよ」
「よし、行くか」
イケメン店員の後に着いて行く。
学校の裏側にある倉庫の一角……そこで止まる。
「ここですね」
「また歪みか?」
「ええ……、それでは開きますよ」
イケメン店員が手をかざすと、空間に波紋がたち、黒い空間が現れる。
二人が中へ入り暗い空間を進む。
「いつ見ても気味が悪い空間だな」
「それはそうですよ。
「わかってるって。 しかし俺この花の匂いあんまり好きじゃ無いんだよな」
「文句言わないでくださいよ。
「そうか〜?」
そんな話しをしながらも暗い空間を進むとピタッと止まる。
「……ここですね……」
「ここか? ……女の子は……お! いたいた」
「待って下さい! そこにいますね。 姿を現したらどうです?」
女の子の前にモヤが現れだんだんと姿が見えてくる。
「……成程……やはりあなたでしたか……
「シャー!!」
そこにいた猫は近づく俺達を威嚇している。
「え? あんな猫が女の子を攫ったってのか?」
「そうです。
「どうにか出来るか?」
「勿論です。 私が相手をしますので……」
「俺が女の子を助けて出口から出る。 いつものパターンだな」
「そうです。 しっかりと捕まえていて下さいね。 ではお願いしますよ!」
イケメン店員から尻尾が二本生え青白い火球が猫の妖怪に放たれる。
猫の妖怪は上手く躱わすが誘導されて女の子から離れて行く。
「いまだ!」
探偵が眠っている女の子を抱き抱え、出口へドタドタと走ると、
そしてニャーンと一声鳴いて手を下ろすと、抱えていた女の子が
「おいおい、どうなってんだ!」
「だから言ったじゃないですか! しっかりと掴んでいて下さいって!」
「そうは言ってもよ」
「まぁ、相手が妖怪だし仕方ありませんか……、……痛めつけるのは性に合わないのですが、少女を離さないのであれば仕方ありません」
沢山の青白い火球がデカい招き猫へ向かって飛んで行く。
しかし招き猫はニャーンと一声鳴いて手を振り下ろすと、火球はこっちに返ってくる。
「うわっち! あっち! あっち! おい! どこ狙ってるんだ!」
「さすが招き猫です。 私の火球を私達に向けて招いたようですね……、仕方ありませんね……」
更に尻尾が一本追加され、三本の尻尾となる。
「これも返せますか?」
さっきまで小さかった火球はどんどん集まり一個の大きな火球へと変わった。
「おい! そんなのもし返ってきたら火傷じゃ済まないぞ!」
「安心して下さい。 これはあの妖怪では返せませんので」
片腕を招き猫に向けると火球が勢いよく飛び、招き猫へと向かって行く。
「ニャーン」
招き猫が腕を振り下ろすが、火球は止まらずに直撃した。
「ニャギャー!!」
青白い炎に焼かれ、招き猫は小さな猫へと姿が変わる。
「さあこれでトドメといきましょう」
手をかざし火球を出現させ、猫へと向かって撃ち放つ。
「まってーー!」
目を覚ました女の子が猫の前に立ち塞がった。
「おい! 危ねぇ!」
探偵が女の子を庇う。
「っと危ない」
火球はギリギリで消え……。
「あっち! あっち!」
「おっと、すいません」
指をパチンと鳴らすと燃えていたコートから火は消えた。
「うおおー! おれの一張羅がぁーー!」
「少女を早く助けないからですよ……さて、そこをどいてくれませんか?」
「だ、だめー! この子は悪く無いの!」
「困りましたね。 これでは依頼達成が出来ません……仕方ない、無理矢理にでも消し去りますか」
「待て待て、俺に話しをさせてくれ」
「またですか? 面倒臭いですが……、手早く頼みますよ」
「ああ……」
探偵は女の子に話しを聞いてみると、女の子は学校の帰り道、捨て猫だったこの猫を見つけ家に連れて帰ったが、家では飼えない事を告げられ学校の倉庫で秘密にしてご飯をあげたりしていたらしい。
ただ、元から病弱だったために亡くなってしまった猫をここに埋めたと言う。
そして最近、親と喧嘩して家に帰りたく無いのでこの場所に来ると、猫は女の子を助けるためにこの世界に招き入れたと言う訳だ。
「なあ、この猫悪い奴ではなさそうだぜ」
「そうですね。 ですが、私には関係の無い事です。 邪魔をする者は誰であろうと消し去ります」
「そんな事無いだろ、ほら、見てみろよ」
猫は女の子に抱かれ、大人しく甘えている。
「……ハァー……、わかりました。 後はあなたが責任とって下さいよ」
「わかったわかったって」
「それでは戻りますよ」
指をパチンと鳴らすと、元の場所へと戻って来た。
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