その探偵はコーヒーの香り

かなちょろ

第1話 不思議なカフェ

 私が良く行くカフェにはイケメン店員がいるカフェがある。

 銀髪の髪は少し長めで縛り、細身の高身長。 目は細く誰が見てもイケメンだ。

 面白いのは、そのカフェのコンセプトがキツネの為に、店員さんは狐のエプロン、狐の耳を身に付けていて、良く『その耳本物ですか〜?』とか『触りた〜い』などの声も良く聞こえる。 店員さんは『お触りは禁止ですよ、コンコン』と言いながら耳をピコピコと動かしている。

 あの耳どうなってるんだろ?


 コーヒーも美味しく、キツネのラテアートもしてくれ、パンケーキやパフェもキツネになっていて可愛い。 伝票も葉っぱになっていたりと結構こだわって見える。

 だから私も良く行くし、店員さん目当てで女性のお客さんが沢山来店する。

 ……と思いきや、カウンター席に一人のおじさんが座っていて、コーヒーを飲んでいるこのおじさんがイケメン店員のお知り合いなのか知らないけど、グラスを磨いている店員さんに話しかけてたりする。


「なあ、何か仕事のネタでも無いか?」

「知りませんよ」

「客の中に困ってる人とかいない? 今月ピンチでさあ」

「いつも同じ事言ってませんか? こんな所にいないで仕事探して来てはどうです?」

「ここのコーヒー飲まないと一日が始まらないんだよ」

「仕方ない人ですね」


 こんなやりとりが聞こえて来る。

 女性ばかりのカフェにおじさんが一人、しかも仲が良さげ……、他のお客は皆んな困惑して見てる。


「お姉さんも何かあったらよろしく」


 おじさんが席を回って名刺を渡して来る。


「人のお店で営業しないで下さい。 営業妨害ですよ」

「悪かったって。 コーヒーもう一杯頼むからさ」

「まったく……」


 そう言ってハンドドリップでコーヒーを淹れておじさんに提供している。 コーヒーを提供すると各席に回っておかわり無料でコーヒーを注いでくれる。


「お姉さんも如何ですか?」

「良いんですか?」

「はい。 お支払いはお気になさらずに」

「ありがとうございます」


 そう言っておかわりをもらった。

 コーヒーも飲んだし、パンケーキも食べたしそろそろ帰ろうとレジに行くと、おじさんと店員さんがまた話しをしていた。


「え? これ俺が払うの?」

「もちろんですよ。 迷惑料です」

「今月ピンチって言わなかった?」

「なんのことですか? ちゃんと払って下さいよ」

「マジかよ……」


 ……もしかしておかわりの分かな?

 お会計はおかわり分は入っておらず、普通に支払い店を出る。

 そしてふと、もらった名刺に目を通した。


【私立探偵 大林 邦彦おおばやし くにひこ 困りごと解決します。 電話〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇】


 あのおじさん探偵さんだったんだ……。

 探偵って初めて見たかも……。

 私はこの時にもらった名刺の事はすっかり忘れてしまっていた。


 ……そして数日経ったある日、事件は起きた。


 私が働いている小学校で女子生徒が行方不明になると言う事件が起きた。

 学校から子供がまだ帰って来ていないと親御さんから連絡があり、警察、学校の教員全員で学校の中、帰宅路を探すが見つからず、この日は交代での解散となった。


「ふぅ〜……、本当に何処に行ったのかしら……、……誘拐とかじゃ無いと良いんだけど……、無事でいてよ……」


 生徒の事を思いながらいつものカフェ前を通りかかる。

 カフェを見ていて思い出した。


「そうだ、確か……」


 私はカバンから一枚のヨレてしまった名刺を取り出す。


「探偵さんに協力してもらえないかしら……?」


 藁にもすがる思いでカフェに顔を出してみる。


「いらっしゃいませ」


 イケメン店員さんのお出迎え。

 その近くには……。


「いたっーー!!」


 足早にかけより声をかける。


「おわっ! な、なんだあ!?」


 急に声をかけたので驚いてしまっているようだ。


「突然声をかけてしまってすいません。 あの……」


 私が話しだそうとすると、探偵さんは鋭い目で私を見ると、手を出して話しを遮り、店員さんへ目線を送る。

 すると店員さんに手招きされ、お店の本棚が描かれている壁の前に連れて行かれ、絵に描いてある赤い本をクルリと回すと鍵穴が出て来る。

 その鍵穴に鍵を入れ回すと、壁が開き、奥に部屋が見えた。


「あの、ここは……?」

「いいから入って」


 この怪しい探偵さんと二人きり……、こんな密室に連れ込まれて大丈夫かしら? と戸惑いながらも部屋に入る。

 窓も無く、扉が一つだけの部屋。

 そこはテーブルが一つとイスが四つ置いてあるだけだ。


「ここなら誰にも聞かれない。 さて、話しを聞こうか……」


 探偵さんはイスに腰掛け、私も座る。

 そして探偵に説明をする。 女子生徒が帰宅途中で行方不明なった事。 警察、教師で探したが見つからなかった事を告げる。


「成程な……、……どう思う?」

「そうですねぇ……」

「ひゃっ!!」


 いつの間にか定員さんが私の後ろに立っていた。

 え? 扉も開いてないし……? 一緒に入ってきたっけ?


「現場を見てみない事にはなんとも……」


 定員さんは葉っぱの伝票を探偵さんの前に置く。


「……なるほど……オーケー、この依頼受けよう」

「え!? 本当ですか!?」

「ただし、条件がある」

「条件?」

「今回の依頼は誰にも話さない事。 報酬は行方不明の子供を見つけたら受け取る」

「そ、それで報酬なんですが、おいくらでしょうか?」

「そうだな……、本来ならかかった日数プラス経費を頂くが、今回は初めてだからな。 一万円でやってやるよ」

「一万円で良いんですか!?」

「今回は特別さ」

「ありがとうございます!」


 私は一万円を支払い、カフェを後にした。

 勿論この一万円は生徒の親御さんに請求する予定。

 でも……あの探偵さん……本当に大丈夫かしら?

 少し不安になりながらも家に帰った。



「さて……、話しを聞こうか」

「そうですね、彼女からわずかに妖気を感じました。 恐らく行方不明は妖怪の仕業でしょう」

「ま、お前がここにいるって事はそうなんだろうな」

「それより良かったんですか? 依頼料一万円なんて格安で受けたりして」

「俺の出番少なそうだしな。 新規のお客さんは大事にしないと」

「ま、私はが頂ければ問題ありませんが」

「決まりだな。 それじゃ早速行ってみるか」


 店員さんが指をパチンと鳴らすと、外への扉が現れた。


「店は大丈夫なのか?」

「ええ、いつもの様にしていますから」

「……便利だよなぁ……」


 そしてコートを着た探偵と、キツネのエプロンを外し、和服のまま二人は学校へと調査に向かった。

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