第4話
「…………」
無言で箱ごと差し出すと、目を細めてから「ありがと」と躊躇いなく一本抜き取って火を点けて、すぐに深く吸い込むのを見て、このひとも疲れてるんだなぁと思った。
きっとその疲れも、単なるバイトの自分とは雲泥の差なんだろうけど。
小さいころから出来が悪い自覚はあった。
クラスで九九を全部言えるようになったのは自分が最後だったし。
あがり症で人前でうまく喋れないし。
親とうまくいかなくて、友達の家を転々としていたら、せっかく入れた地域で最底辺の高校も留年してしまい、中退。
家出して、ひとりで暮らすようになってからずっとこんな調子で、これから生きていけるんだろうか。
「学校帰り?」
煙草の箱を返してもらって、踵を返そうとしたとき、再び話しかけられて戸惑う。間を空けて、首を横に振ると「学生だよな?」と言われて思わず少し笑った。
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