第3話

(おなじやつだ……)



相手が取りだしたパッケージに目を向けてそう思った。



ワックスで立てられた短髪から、日焼けした肌がのぞく。

近くで働いている人かと、スーツ姿から判断して邪魔にならないように少しずれた。




それにしても疲れた。


まともな頭をもっていないせいて、あえなくフリーターに落ち着いてしまったけど、自分一人を養うことは簡単ではない。それに、欲しいものも食べたいものもたくさんある。



花壇の花は、夕陽を受けてなんだかさみしそうに見えた。



指にふと熱を感じて、ぼーっとしていたせいでだいぶ煙草が短くなってしまっていたことに気付いてため息を吐いた。二本目を取り出して火を点けたとき、





「一本くんない?」



どこか投げやりな声が降ってきて、顔をあげるとどこか鋭い印象を持たせる切れ長の目がこちらを見ていた。

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