第41話
そのまま手を引いて部屋に入る。
つかんだ手首は、ぞっとするほど細い。
ベッドの上に座らせて、改めて眞夏を見つめた。
――余計な肉が削ぎ落とされたような輪郭、闇色の瞳を覆う睫は長く、髪の毛は亜麻色で、暫く切っていないのか、女の子のショートのように長い。
シャツから覗く鎖骨は痛々しいほど浮き出て、銀色の細い鎖が波打っていた。
「最後に床屋さん行ったのいつ?」
「……床屋とか、行ったことねえ」
自分で適当に切ってる、と言う眞夏に絶句する。
「前は姉ちゃんがやってくれてたけど、嫁行っちまったからな」
「ごはんも、前は春名さんが作っててくれたの?」
「大体は」
春名さんは、お兄ちゃんと結婚するとき、どうして眞夏を連れて行かなかったんだろう。ここまで明確なネグレクトを受けている眞夏が、誰の手も借りずに正常に成長していけるとは思わない。
眞夏がここを訪ねてきたからよかったものの、それでも無事な状態とは言えないのに。
もっと最初の時点で問いただすべきだったと自分の行動にも後悔が募る。
私の考えを読んだのか、眞夏は言いにくそうに口を開いた。
「……姉ちゃんは俺のこと連れてこうとしたんだよ。けど、早瀬さんが嫌がったんだ。新婚だから、当たり前だけどな」
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