第39話
「警戒心とかねえのかあんたは」
「え?」
「……なんでもねえ」
ミスった、と呟いて乱暴に自分の髪を整える眞夏は、いつもの冷静な姿からはかけ離れて、年相応だった。いつもはそういう顔をしているんだろうか。学校では、どんな顔をしてるんだろう。大人の前でも物怖じせず、いつもどこか達観したような表情の彼からは、無邪気に笑う姿が想像できない。くそ、と呟きながら赤くなった耳を長めの髪の隙間から覗かせる眞夏に、ふとそんなことを思う。
「大丈夫だよ」
「…………なにが」
「お金のことは心配しなくていいよ。ありがと眞夏、やさしいね」
ゆっくりとそう言うと、気まずげにふいっと目を逸らした。
意外と照れ屋。
「あんたって、」
「うん?」
「よくそういうセリフを……なんでもねえ。てか、じゃあさっきなんで溜息ついてたの」
「溜息?ついてた?」
「飯んとき」
全然覚えてない。
「あ、献立考えてたからかな」
「はぁ?」
「眞夏がね、ここに来るのが分かってたら夕飯とかもうちょいちゃんとしたもの考えられるんだけどなーって。今日質素だったでしょ」
答えると、きょとんとしたように目を見開いてから眉を顰められた。
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