第38話

「全然質素とか思ってねえから」



意図に気付いたのか、即座に否定した。



「食べていい」


「あ、うん。どうぞ」



わざわざ一言聞いた眞夏に、気を遣わせて申し訳ないと思いつつ頷く。

手を合わせて「イタダキマス」と相変わらず言いにくそうに言ってから、味噌汁に手をつけた眞夏の目が伏せられて、長い睫が際立った。



やっぱり、私一人の場合と、眞夏がいる場合じゃ献立が違ってくる。

一人だったら栄養価とかそこまで考えないけど、眞夏がいるなら話が違う。

痩せすぎだし、普段満足に食べられてるとは思えなくらいよく食べる。

ここに来た時くらい満足に食べさせてあげたい。



いつ来るとか分かれば準備出来るんだけどどうするかなあと考えている私を眞夏がじっと見つめていたことには気付かなかった。






「金ねえの?」


「え?」



洗っていた食器を落としそうになった。


横を振り向くと眞夏は居心地が悪そうに食器を拭いている。

ザー、と水が流れる音を背景に、暫くして心配させてしまったことに気付いた。



「……まなつ、」


「心配とかしてねえから」



いや明らかに心配してるでしょ。



「眞夏!」


「なに………って、はあああああ?」



洗っていた食器を置いて手を拭いてからその肩を引き寄せて抱きしめた。

腕の中で、私より幾分か身長が高い眞夏が固まる。



「なんてやさしいの……」


「いやだから、心配とかじゃねえから勘違いすんな!!」



離せ!と言われても構わずよーしよしよしとふわふわの髪の毛をかき混ぜる。



「大丈夫、バイトだけはたくさんしてるから!眞夏は心配しないで勉強してサッカーして帰ってきてね」


「いやそれより離せよ犯すぞ!?」


完全にテンパってる眞夏を仕方なく離すと、首まで真っ赤な顔をしていた。

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