第31話
「やっぱあの親父さん、だめだったか」
「やっぱ、って?」
お兄ちゃんが冷蔵庫を勝手に開けて麦茶を取る。
コップに注ぐその左手には銀色の指輪がきらめいている。
「酔っ払うとき以外はやさしい父親らしいからさ、眞夏くんも男の子だし大丈夫かなって、しばらく児童相談所の人と連絡とって面談もしてもらいつつ、二人で暮らしてもらってたんだよ」
春名もおなか大きかったし。と言いながら困ったような顔をする兄に何も言わず続きを促す。
「でも蛍んとこ来たんだろ」
「……そうだね」
「俺らには大丈夫って言ってたけど、大丈夫じゃなかったんだな。」
「そうかもね」
「蛍、ありがとな」
ぐしゃりとかき混ぜられた。お兄ちゃんは真っ黒な目をしている。私とそっくりな目。春名さんは何色だっただろうか。
「児相に連絡するか」
「え?」
「え、だって眞夏くんちょくちょくここ来てんだろ。お前も勉強とかバイトとかで忙しいだろうし、一応女なんだから何があるかわかんねえし」
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