第27話

「お皿も買っちゃうね。一通りあった方がいいし」



そして宣言どおり籠に俺にいちいち相談しながら日用雑貨を放り込んでいく蛍は、どれがいい?こっちは?といちいち俺に好みを聞いてくる。

最後には弁当の保冷財や仕切りも買い込むと籠は満杯になっていた。



「……悪い」


「え?」



それを見て唐突に思い出した。



「俺財布……」



もってない。そう続けようとしたら、蛍はふっと真顔になった。

黒目がちな目は同じ黒の睫に濃く縁取られていた。



「眞夏、聞いて」



顔の造形が整った女の真顔ほど壮絶にうつくしいものはない。

蛍の顔を見ながらそんなことを思う。始めてあったときから思っていた。この女は、うつくしい顔の造形をなしている。


そしてときおり、とてつもなくやさしい顔をする。



「……私のとこに来るのは大変だったでしょう」



突然の、労わるようなその一言に目を見開いた。


大変だったでしょう。私のところに来るのは。親戚になったばかりの相手を頼るのは。


蛍の目は静かに凪いで、そう物語っていた。



「もっと頼ってほしい」




――…なんで、そんな。

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