第25話
大型百円ショップでカートを取って籠を置くと、義姉――蛍はすい、と歩き出した。
キョロキョロと辺りの棚を見渡している様子から、あまり来たことがないのかと思ったが、蛍は楽しそうにこちらを振り向いた。
「毎回コンビニのお箸とかスプーンじゃゴミになっちゃうから、眞夏用の買っちゃおうかと思って」
「……ほんき?」
「ほんきほんき」
楽しいよねと言いながら、やさしい笑顔を見せた蛍の意図するところは何なのだろうか。
単にやさしくしただけだのか、同情なのか、機嫌をとっているのか。
「眞夏何色が好き?」
青、赤、黄色。
色とりどりのもち手のスプーンが並ぶ中、他意がなさそうな様子の蛍に胸の奥がざわめく。緊張したように早鐘を打ち始める鼓動は嫌なものではない。じいっと商品を真剣に見つめる横顔。
高揚した心臓の鼓動。それが教える感情は、うれしい、というものだった。
騙されているのかもしれないという考えもあるが、それを覆うように、ばかみたいに嬉しいという感情がざわざわと胸を波打っていく。
本来蛍の家に不必要なもの。俺のために、連れてきてくれた。ただそれだけのために。
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