第24話

「学費もあんじゃん。免許取る余裕あんの?」


「学費はね、生活費とかもあってそこまで稼げないから奨学金貰ってるんだよ」


「へえ……」



蛍は何でもないことのように言った。

この人が、なんだか当たり前のように一人で生きていることに気付いた。



普通、大学生って親のすねかじる年じゃないのか。



それなのに蛍という義理の姉は、学費も生活費も、車の免許代もレンタルする金さえ、自分に賄ってしまっている。

ものすごく年が離れているわけではないのに、自立している蛍はなんだかちゃんとした大人のようだった。




「眞夏」


思考に沈んでいると、いつの間にか目的についたらしく、駐車し終わった蛍に声をかけたれた。



「ごめん。制服のまんま連れてきちゃったけど、大丈夫?寄り道とか校則違反だった?」


「べつに平気だけど」



心配そうな声にそう返すと、安心したように息をついた。






「結局何買いに来たんですか」


「眞夏用のスプーン」


「は?」



なに言ってんだあんたと声を上げたが、義姉はいたって真剣らしい。真顔で「あとお皿とお椀とお茶碗も」と付け足される。


……は?

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