第21話

「親せきって女?」


「おー」


「いくつ?」


「……さあ。大学生」


「えっまじかよ!!かわいい?」


「かわいい……っつーか、綺麗めじゃね」


「紹介して」


「しね」




ぜってーしねえよ。


蛍は美人だ。ミディアムロングというのだろうか。長めの黒髪は細くてさらさらで、たまに結い上げられると、目に毒なほど白いうなじがのぞく。小さい顔にそれぞれのパーツが整って配置されている顔は、かわいいというよりも美人だった。俺もたいがい女顔だと自覚しているが、蛍はまた違う造形をしていた。和風美人というのだろうか。控えめに笑う姿は、きっともてるだろう。そこまで考えて、自分の眉間にしわが寄るのが分かった。



あんなにも嫌いだったのに、いつの間にか餌付けされている。


姉を奪った家族。迷惑かけて罵倒してやるつもりだった。



なのにあいつは。

泊まるようになった俺に、蛍は弁当まで持たしてくれた。



ちっと舌打ちして、脳裏に浮かんだ控えめに笑う横顔を打ち消した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る