眞夏side①

第20話



「眞夏、それなに、お弁当?」


「おー……」



昼休み、人の机の上を覗いてくる友人に生返事を返す。


そこには義姉が作った弁当が乗っていた。




おにぎりとおかずが入った弁当箱。昨日の夕飯の残り物と、前から作っていた常備菜、それに今朝焼いていた卵焼きが詰め込まれている。かぼちゃの煮つけも欠かさずに入れるところがまじでやばい。なんなんだよ。餌付けかよ。くそ。でっかいおにぎりの中には明太子が入っていた。


友人も「うーまそー」と羨ましそうな顔をしている。




「親父さんが作ったの?」


「なわけねえだろ」



あのアル中親父にこんなもの作れるはずがない。あいつが作れるのはカップラーメンが限界だ。



「え、じゃあ誰よ」


「親せき」


「へえー。一口くれ」


「やんねえよ」



義姉の料理はうまい。なんてことない簡単なものだと本人は言うけど、そんなことはないと思う。卵焼きさえ作れないおれからしてみれば、朝の短時間でここまで作れるあのひとは料理にかけて天才なんじゃないかと思う。


姉が嫁に行ってからろくなものを食べていなかった俺にとって、義姉の作る飯の数々は貴重な栄養源だった。本人には言わないど。

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