第17話

ふいっと背けられた顔は照れているのかそうじゃないのか。思わず手が伸びる。



「よしよし」



ふわふわの猫ッ毛に指を差し込むと、びくりと華奢な体が震える。



「心配してくれたの?」


「……っは、なに言ってんの。うぜえ」



ぎっと野良猫みたいに睨む。でも、手は払わない。



「いっぱい食べてね」


「…………おー…」



黙って撫でられている姿は、出会ったころより懐いた猫みたいだ。餌付けしてるみたい。


ふいっと背中を向けて部屋に戻った眞夏は、私が座るのを見届けてから手を合わせて、小さく「いただきます、」と呟くように言った。


眞夏の挨拶は、まるで言い慣れていない言葉を無理やり絞り出しているみたいで、居心地が悪そうな顔をしながらのものだったけど、きちんと毎回手を合わせる姿に、改めて律儀な子だと思う。そしてスプーンでごはんとルーをよそったが最後、怒涛の勢いで食べ始めた。



「あんたさ」


「うん?」


「いい加減『まなつくん』って呼ぶのやめて。なんかきもい」


「君付けが?」


「眞夏でいーよ」



………………。




「……眞夏、オレンジも食べる?」


「食う」

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