第8話

親という単語を出しても興味を引いた様子がなかったので端的に切り出すと、一瞬箸が止まったものの何事もなかったように動き出した。




「家出」


「…………はっきり言うね」


「これ以上ぐだぐだしても仕方ねえし」


「ははぁ」



やっぱりそうか。



「あんた、親父に連絡した?」



すっと視線が合う。


首を振ると、意味わかんねえ、というように眉をひそめられた。その顔に、自分の顔が情けない顔になるのがわかった。多分困った顔をしているんだろう。




「眞夏くんっていくつ?」


「……14」


「中二?」


「そーだけど。つかあんた何。何で連絡しねえの」




うーん。それにしても中二か…こないだまで小学生だったのになあ。


威嚇するような目線に、たぶん、父親とうまくいってないんだろうなあとぼんやりと思った。14か。一番多感な時期だし、嫌なことがあって逃げ場を求めてきたんだろうか。


姉は新婚家庭だし、母親はいない。

頼れるところと言えば、姉の結婚相手の家族くらいだったのだろうか。随分、遠い縁を頼ってきたのだと気づく。ほとんど会ったこともない、義姉の家を訪ねるのに、どれだけの勇気がいっただろうか。


生意気だけど、それでも義弟で、頼ってきてくれているような気がしてここにいてもいい。と言いそうになっている自分に困惑した。

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