その日...君が死んだ
時雨白黒
ワンコール
それは雪が降り寒い夜の出来事だった。仕事を終えた俺、椎菜満は帰宅するために仕度を済ませて職場を離れようとすると携帯電話がなった。見たことが無く非通知からかけられていた番号の為悪戯電話だと思い鳴りやむのを待つことにした。間違い電話の可能性もあり気にも留めていなかった。電話が鳴りやむのを待つが一向に終わらない。やっと鳴りやんだと思った矢先に再び同じ番号から電話がかかってきた。どうやら間違い電話ではないらしい。新手の悪戯かといつもなら相手にしないが嫌な予感がしてならない。俺は今日みたいに雪が降る寒い日が憂鬱で嫌いだった。何度もかかってくる電話に仕方なく出ることを決めた。深いため息をしながら電話の主に話しかけた。
「もしもし...あの?どちら様ですか?」
「あの...いたずら電話ならお断りで、切りますよ」
電話に出たがやはり返答はなく無言のままで俺はいたずら電話だと思い電話を切ろうとした。すると電話の主がこう言ったのだ。
『堤千冬が死んだ』
「え?今なんて...」
俺は何かを言おうとしたが電話は直ぐに切られてしまった。いたすらか?相手の主はどうして堤千冬を知っているのだろう?疑問が尽きなかった。堤千冬は俺の元恋人だった。堤千冬とはもう何年も会っていないし、連絡も取っていない。悪戯にしてはタチが悪いと思ったが気にしないことにした。
俺が何故雪が降る寒い夜が嫌いで憂鬱なのか...その理由は俺がついていない日はいつも雪が降る寒い夜だからだ。父親が交通事故で亡くなった時も仲が良くて別れるはずがなかった元恋人にフラれた時もこんな寒い夜だった。今思えばなぜフラれたのだろう。前日も仲良く話しをしたはずなのに。
「また明日ね」
そう笑って手を振ってくれたはずなのに次の日...俺は呼び出されてフラれた。
「急に呼び出してごめんね。あの...別れて欲しいの...ごめんなさい」
泣きそうな顔をして頭を下げる彼女に問い詰めることができぬまま俺たちは別れて会うことは無かった。彼女と別れた後俺は東京に就職先が決まっておりそのまま上京する形となった。最後くらい彼女に会いたいと思ったが別れてしまい、会いづらく連絡も取っていない。
「ほんと...なんでこんな時に思いだすんだろう。疲れてるのかな...早く帰ろう」
帰る途中気分が乗らなかった俺は喫茶店に入り珈琲を頼む。頼んだ珈琲を一口飲むと再び携帯電話がなる。また非通知かと思ったが相手は堤千冬の父親だった。
「もしもし...あの..お久しぶりで」
俺は恐る恐る電話に出ると切羽詰まった声で話しかけられた。
『千冬を見てないかい!』
「千冬さんですか?俺はもう、千冬さんとは会っていないし連絡も取っていないです。すみません...千冬さんに何かあったんですか?」
『実は...千冬は一カ月前から行方不明なんだ。君の所に連絡が来ていないか聞こうとしたんだよ』
「え?千冬.....さんが行方不明!」
俺は動揺し周囲のことを気にせず大声で言ってしまい急いで代金を払うと喫茶店を出た。歩きながら自宅に向かう。
「すみません、大声出して...」
『構わないよ。私も動揺させてしまったね』
「いえ...行方不明...そんな...」
『そうなんだ。一カ月前から行方が分からなくて探してるんだ』
「一カ月も行方不明なんて...俺..知らなくて...」
『君は地元から離れているから知らなくても無理はない。椎菜君は何か知らないかい?』
「分かりません...俺、探して見ます!」
『ああ、頼むよ。椎菜君』
話しをしていると自宅に着き一旦電話を切ろうと思った時ふとある物に気づいた。玄関にダンボールが置いてあった。
「はい、それで...あれ?ダンボールが置いてある」
『ダンボール?』
「はい、俺..ネット注文とかしないですけど..あれ?」
『どうしたんだい?』
「あの..聞いていいですか?」
『構わないよ』
「あの..俺に荷物を送りましたか?」
『荷物?何も送っていないが』
「でも、堤さんが俺宛に住所が書かれているみたいで」
『私は送っていないがそのダンボールに何か書いていないかい?』
「え、ええと..中々取りに来ないので直接置きに来ました。一カ月も放置しないでくださいって書いてあります。なんだこれ?」
『普通一カ月も放置すれば廃棄するはず...うん?一カ月...まさか!』
「俺、この荷物開けて見ます」
俺はダンボールを開けようと顔を近づけた時にマジックで"お届けの品お届けします!"と書かれていた。
「うん?お届けの品お届けしますって何だ?」
『お届けの品の品..嫌な予感がする。やめなさい、椎菜君!そのダンボールの中はもしかしたら!』
「う、うううわああああああああああああああああああああああああ!」
『椎菜君!椎菜君!一体どうしたんだい!一体何が合ったんだ!』
「な、中に...ち、ち、ち、千冬が!千冬!千冬!千冬!千冬!千冬!」
『落ちつきなさい!とにかく、警察に連絡を!』
俺を止める声が聞こえたが既にダンボールを開けてしまい意味がなかった。中を開けて中身を見た俺は衝撃と吐き気が襲った。惨めに俺は泣き叫ぶしかなかった。信じたくなかった。一カ月と聞いた時嫌な予感がしていた。しかし、嫌な予感は的中した。やはり雪の降る寒い日は嫌いで憂鬱だ。
(悪夢だ...これは現実じゃない...だってありえない。ありえないはずだ...だって彼女が...)
俺は冷静ではいられず縋り付くように泣き叫んだ。堤千冬の父親が警察を呼び、駆けつけるまで取り乱した。ダンボールの中に入っていたのは元恋人、堤千冬の遺体だった。
その日...君が死んだ 時雨白黒 @siguresiguro
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