①全裸で雨の中を踊るシーンについて。
まず一つめは、コニーと森番オリバーの二人が、雨の降る中、全裸になって走り回るシーンについてです。
おそらく卑猥だと言われる所以は、このシーンに原因があるのやもしれません。
一見、このシーンだけを見れば、ただの頭のおかしいバカップルがふざけているようにしか見えません。
でも、話の前後をきちんと理解していれば、あのシーンが表現しているものは、そんな浅はかなものではないことがわかると思います。
あのシーンに至る直前、コニーとオリバーは、かなり真面目な話をしているのです。それも、身分の格差による偏見や差別、生活の貧しさなど、この作品の根本にあるといっていい時代背景についてです。
オリバーから未来のない暗い話を聞かされたコニーは、わざと話を変えようとするかのように服を脱ぎ始めます。そして、外へ出て、雨の中を全裸で踊るのです。
台詞の一つもないシーンですが、私には、それがコニーのオリバーに対する答えなんだと感じました。
未視聴の方のために解説しますと、コニーは、大地主である準男爵クリフォードの妻であり、オリバーはそのクリフォードに雇われているただの従業員の一人にすぎません。上流階級の奥方と、労働階級の男です。二人の間には、明確な格差が存在していました。
そのことを思い悩むオリバーに対して、コニーは、肩書や身分など関係のない、裸の自分をオリバーに見せたかったのだと私は思います。そうすることで、コニーのオリバーへの愛がごく自然と視聴者にも伝わるように表現されているのだと思います。
……まぁ、原作を読んでないので何とも言えませんが、原作でも同様のシーンがあって、おそらく作者が伝えたいことの表現方法として全裸で雨の中踊る二人、としたのでしょう。たぶん。
森の中に降る雨は、社会の象徴でもあると思います。その中で、二人は全裸で笑いながら踊って走り回るのです。そんな二人の間に、身分の壁はありません。二人は、心からただの一人の人間として愛し合っているのだと私は感じました。
卑猥なんて、とんでもない。アダムとイブの姿です。人間本来の姿であり、芸術的で神話的でもある。素晴らしいシーンだと思いました。
私がこれを書きたかったのは、実は、他の方による映画の感想をネットで見ていたところ、このシーンを馬鹿にするようなコメントがあったため、いやそうじゃないだろう、と思ったからです。ちょっとスッキリしました。
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