街路樹の影でまちぼうけ


朝日が街の切り絵をほどいて

空のボトルメールを握りしめたまま

街路樹の影でまちぼうけ

誰かの足音を探すように淡く瞬く


裂け目からステンドグラスが光を散らし

甘ったるいロシアンティーを吸い込むみたいに

過ぎた夢をどこかで飲み干そうとしている


書きかけの手紙には面影がからみつき

言葉は手元で触れるほど溶けていく


「お釣りちゃんともらったっけ」

つぶやく声は誰の気にも留まらない


煤けた空気が何かを嘲笑うように漂い

夜の名残が形を失いながら背を向ける

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友人の詩 葦邑井戸 @ashimuraid

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