第50話 報酬・餞別・景気付け

ベルウェイン商会での用事を済ませた俺は再びミリーナ宅へ向かった。


彼女の借金が完済されたことを証明する書類を届けるためと、俺から借りたことになる借金の書類を作成するためである。


借用書は催促する気がなくとも必要だ。


ミリーナや彼女の妹であるルーマの言動は少なからず変化を見せるだろうし、それで周囲の借金持ちが自分の分もと押しかけて来ても応じられないからな。


なのであくまでも無利子になっただけだと言うことを証明するため、きっちり借用書を作成するつもりである。


そうしてミリーナ宅に到着すると、ルーマと共に歓迎されて部屋に招き入れられた。



「はい、これがベルウェイン商会の借金を完済した証明書だ。なくさないようにな」


「「わぁっ♪」」



俺が出した書類に2人は嬉しそうな声を上げたが、そこで俺は釘を刺す。



「わかってはいると思うが、借金した相手が俺に代わっただけで借金そのものがなくなったわけじゃないからな?」


「わかってるわよ♪」

「ちゃんとお返しします!」



2人はそう言うと俺に対する借用書に連名でサインをし、2枚作成したうちの1枚をベルウェイン商会へ完済した証明書と共に大事そうに仕舞った。



「じゃあ、俺はこれで……」


「あっ、もう帰るの?もう少しゆっくりしていったら?」

「と、泊まっていただいても……」



借金の話が終わり、お暇しようとしたところで引き止められる。


ミリーナは言葉で止めるだけだったが、ルーマは俺の手を取ると自分の胸を揉ませながら言ってきた。



ムニムニ……


「ンッ♡」



良い感触だ。


しかし……ベルウェイン商会の行商に同行することとなった件をララに伝え、その準備を始めなくてはならない。


元々この町を離れる予定だったが、同行者がいるとなればまた別の準備が必要になるからな。


が溢れ出しているルーマには悪いが、前回お邪魔した際に十分楽しませてもらったので今日のところは辞退させてもらおう。



「悪いが近々ベルウェイン商会の行商に同行するってことになってな。その準備を進めたいから今日は遠慮しておくよ」


「えっ!?そうなんですか?」


「ああ。俺はそのまま"遺跡"に行くつもりでな、戻ってくるのは少し先になると思うが……」



そう返すとルーマは詰め寄ってくる。



「か、帰ってくるんですよね?」



有力な冒険者が"遺跡"に向かうと、向こうでの稼ぎが良くて帰ってこなくなる可能性がある。


ルーマは俺も有力な冒険者だと思ってか、この町に戻ってこないことを懸念しているようだ。


そんな彼女に俺は手を動かしつつ答える。



モミモミ……


「ンッ♡」


「借金のこともあるしちゃんと帰ってくるよ」


「は、はい。わかりましたぁ……♡」



俺の手の動きにより、ルーマの身体も戻って来る目的になっていることを示す。


もちろん実際にはそれが目的というわけでもない。


しかし、それもあってか彼女は納得してくれたようなので良しとする。


金に関しては冒険者ギルドさえあれば別の土地で引き出せるそうなので、この町のギルドに納めてもらえばそれでもいいのだが……まぁ、エルゼリアとケイロンのこともあってどうせ戻ってくるつもりだしな。


俺達の様子を見ていたミリーナも納得したようで、ルーマと揃って帰る俺を見送ってくれた。





その後、俺は自分の宿に戻るとララに商隊と一緒に町を出ることになったと伝える。



「商隊と?」


「ああ。町の治安が良くなったせいで町を出る奴もいるだろうって話でな」


「あぁ、そういう連中が商隊の護衛にいるかも知れないから貴方にってことね」


「そういうことだな。構わないか?」



商隊はほとんどが男であるらしく、体型から明らかに女であることがわかるララはで目をつけられる可能性がある。


彼女はスキルで身体能力を強化でき、おそらく一般的な男を優に超える力を持つ。


その上で交替しつつ警戒を行うつもりではあるが、それでも不安だと思うのならこの町で待機しておいてもらってもいい。


生活費についてはギルドを通して送ればいいし、何ならエルゼリアの手伝いでもやって稼げばいいからな。


その辺りのことを考えて聞いてみたところ、ララは少し考えるも俺と同行することを選んだ。



「んー……ま、大丈夫でしょう。道中で実力を見せておけば下手にちょっかいを掛けてくることはないはずよ」


「まぁそうだな。いざとなればケイロンがやった"入れ替え"をやればいい」


「私はまだ見てないけど……それを使うにしても、私が捕まったときに自分と入れ替えたりしないでよ?仮にも私は貴方の護衛なんだから」


「わかってるよ。そのときはゴーレムを使うさ」


「ん、じゃあ旅の準備を進めましょうか」



こうしてララの了解も取れたので、オレ達は当初の予定通りにこの町を出ることとなった。







数日後、町を出る前日に俺は送別会のようなものを開かれた。


開いたのはナタリアとジェミナで、ギルド長のフランチェスカ氏も参加している。


冒険者ギルドの関係者が主催ということで、自分のことを知っている者がいる可能性を考慮してララは不参加だ。



「ちゃんと帰ってくるんだぞ?」


「そのつもりですよ」



フランチェスカ氏とそんな話をしながら食事を進め……そろそろお開きかという頃には酒を飲みすぎていたのか、ナタリアとジェミナが揃ってダウンしており動けないようだった。



「うーん、仕方ないな。ここの上は宿になっているから、空いていればそこに放り込んでおこう」


「そうですね」



俺が同意するとフランチェスカ氏は宿の受付をするカウンターへ向かい、少し話すと鍵とランプを受け取って戻ってくる。



「空いていた。2人を運ぼう」


「はい。2人とも俺が運びましょうか?」


「ああ、頼めるか?」


「大丈夫です」



俺は自身をゴーレム化し、その力でナタリアとジェミナを左右に抱えると少し驚いたフランチェスカ氏が誘導を始めた。



コッ、コッ、コッ……


「……意外に腕力もあるのだな」


「え?まぁ、それなりに」


「そうか……そうかぁ……」


「?」



しみじみと呟く彼女に俺は少し疑問を持ったが、そこまで気にすることでもないと思いそのままついて行く。


そうして3階の一番奥の部屋に案内されると、フランチェスカ氏が部屋のドアを開けたので中に入る。


今回も良い店を用意してくれたので宿も相応に良いものであり、その中でも良い部屋なのか広くて程よく家具や装飾品がある部屋だった。


ベッドもそれに見合う大きさで、4,5人は横になれそうな大きさだ。


地方の町とはいえ国の中心部から立場のある人が来ることもあるそうで、ここはそういったときに使われる部屋なのだろう。


まぁ、今はこの2人を……と、1人ずつベッドに寝かせようとしていると、背後で扉の閉まる音が聞こえてきた。



キィッ、パタン



それと同時に俺の身体は左右から捕らえられ、柔らかい感触達により仰向けに寝かされる。



ガシッ、ボスッ


「おっと……?」



あれ、前にもこんな流れがあったな。


ギルド長という立場の人がいるし、2人とも酔っているのなら大丈夫かと考えていたのだが。


そう思っているとフランチェスカ氏がこちらに近寄り、手に持っていたランプをベッド横のテーブルに置く。


その流れで彼女は自分の服に手をかける。



プチッ、プチッ……ファサッ



開かれたそこにはなかなか標高の高い双丘があり、フランチェスカ氏は下着で覆われたそこを強調しつつ迫ってきた。



「報酬と餞別と景気付けだ。明日に差し障りのない程度にはなるが、存分に受け取ってくれ」



その言葉に左右の2人が楽しげに言う。



「餞別です♡」

「じゃ、私は景気付けで♡」



ならギルド長は報酬か。


まぁ……前々からそのつもりだとは言っていたし、報酬というからにはこれで何かを要求されることもないだろう。


されたとしても逃げればいいし、せっかくのお誘いなのでここはおくとするか。


そう決めた俺は左右の2人に手を伸ばし、それぞれの胸を掴むと遠慮なく揉み捏ねる。



ワシッ、モニュモニュ……ムニムニ……



「「あっ♡」」



それが俺の答えだと受け取った彼女達は嬉しそうな声を上げ、それに応じてフランチェスカ氏は俺に跨ってきた。



「では……召し上がれ♡」







「うぅん……ふぅ」



翌朝、目が覚めた俺は左右を見る。


そこには裸のナタリアとジェミナがおり、満足そうな顔で眠っていた。


後始末と入浴は魔法として済ませてあるので、その身体とベッドは綺麗になっていて不快感はない。


ではフランチェスカ氏がどこにいたかというと……彼女はシーツの中から顔を出し、いつもとは違う柔らかい表情と口調で声を掛けてくる。



「おはよう。よく……は眠れてないわよね。大丈夫?」



3人を相手に満足させるまで頑張ったので、寝入ったのはそれなりに遅い時間だった。


だからか、フランチェスカ氏は町を出るに当たって俺の体調を気にしているらしい。


そんな彼女に俺は答える。



「まぁ平気ですよ。もっと頑張ったこともありますんで」


「えっ、あれ以上に?」



昨夜は3人共が顔を崩れさせるほどにしてあげた。


それを思い返したフランチェスカ氏は、それ以上のことを想像して恐れつつも興味深そうな目をしている。


次の機会があるとして、期待され過ぎても困るので補足しておく。



「もっと多い人数を相手にしたと言うだけですよ」


「あぁ……それはそれで、時間さえあればもっとできたってことよね」



あれ?方向は変わったが結局は期待値が上がったようだ。


彼女は俺の上で胸を潰しながら言葉を続ける。



ムニュゥゥ……


「絶対にまたシましょうね♪それと……私のことはフランと呼ぶように♡」


「はあ、わかりました。フランさん」


「ん♡」



愛称で呼ばせるほど気に入られたか。


呼びやすいのでそれはいいが、流石に仕事中はわきまえよう。


愛称で呼ぶことを了承すると満足そうな顔をしたフランだったが、さらにはこんなことを言ってくる。



「……"遺跡"にいるとは限らないけど、私の師匠に会ったら気をつけるようにね。よほど無礼でなければ問題はないと思うけど、S級2位というだけあって相当な手練れだから」


「その辺りは大丈夫ですよ。俺も相手がよほど無礼でない限りは穏便に済ませるほうですから」



そう返すとフランは微妙な顔をした。



「あー……うん、師匠はちょっと態度が大きいから、その辺は大目に見てあげてね」



その実力とギルドの高いランク故に態度も大きいということか。


まぁ、極力関わらないようにしておけばいいし、よっぽどの無理難題でも言われない限りは我慢するとしよう。


それを伝えるとフランは真面目な顔で言った。



「あ、年齢の話は絶対しないように。師匠にとっては喧嘩を売ってるのと同じ扱いだから」



まぁ、女が相手だと基本的には地雷だからな。



「わかってますよ。大体の女性はそうでしょうし」


「師匠の場合はもっと危ないんだけど……うん、わかってるならまぁ大丈夫か」



人一倍そう言った話に敏感だということか、気をつけよう。


そんな話を終えると少しだけイチャイチャし、起きたナタリアとジェミナがそれに混ざるともう少しだけその時間を延ばした。

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