第43話 エルゼリア拉致計画
ケイロンに接触してきた男が去った後、俺は彼女?を"格納庫"へと仕舞った。
あの男と接触したケイロンがいては、尾行がバレやすくなると考えたからだ。
ケイロンがあの男に渡した指輪型ゴーレムで位置はわかるし、周囲の音声も聞こうと思えば聞ける。
なのであの男との距離が空いても問題なく追跡が可能であり、尾行に慣れていない俺でも気づかれないだろう。
(マスター、エルゼリア達から連絡は?)
ケイロンに問われ、俺は別のゴーレムと音声の通信を開始する。
それはケイロンがあの男に渡した指輪型ゴーレムと同じ物で、エルゼリア達に渡しておいた物だった。
とは言えそれも送信専用であり、緊急事態が起きた場合のことを考えると双方向に送受信ができるような物も欲しいところである。
音を発するための仕組みがあればいいわけだから……糸電話の紙コップのような、振動して音を発する物をゴーレムとして作ればいいのかな。
普通のゴーレムはオンオフが俺にしか操作できないので、相手から通話を掛けてくる事はできないのだが……
繋ぎっぱなしでは魔力切れを起こすし、常に音声の送受信をしていれば都合の悪い話を聞かれたりするだろうしなぁ。
さて、それはさておき。
ララとエルゼリアのそれぞれに渡した指輪から1つずつ音声を受信する。
2人とも同じ部屋にいるようで、同じ発言が聞こえてくるな。
なので護衛対象であるエルゼリアの指輪からの音声に集中する。
(ルルさんもジオとは寝てるのよね?)
(ええ)
(私はジオが初めての相手だからわからないんだけど、アレってあんなに気持ちいいのが当たり前なの?)
(私もジオが初めてだから……)
(あぁ、そうなのね。きっかけは?)
(貴女と同じで、彼に助けられて……まぁ、勢いで自分から)
(あら、そこも似たようなものだったのね♪彼って他にも女はいるの?)
(んー……抱いただけの女なら、私が行動を共にするようになってから10人ぐらいはいたわね)
(へぇ、それってどのぐらいの期間?)
(10日も経ってないわ)
(えっ?移動も考えると一晩で何人か相手してたってこと?)
(そうね。力を貸したお礼としてってことだったけど)
(それはその土地の代表から?)
(ええ。できれば定住して欲しそうだったから、それも狙ってたんでしょうね)
(まぁ、あの力があればそう考えてもおかしくはないわね。でもお相手した女のほうはどうだったのかしら?嫌がったりはしてなかった?)
(そんな女なら彼は受け入れないわよ。私は顔を見せられないから参加してなかったけど、翌朝にはまた抱いてって言いながら帰っていったから楽しんだんじゃない?)
(そっか。まぁ彼なら無理強いはしないでしょうし、あの気持ち良さなら喜ぶわよね。それで貴方の時って……)
俺はこの辺りで通信を切った。
どうやら
というわけで……俺はケイロンに接触してきた男の追跡を再開し、奴に持たせた指輪からの音声を聞き取りながら歩を進めるのだった。
しばらくして……俺が辿り着いていたのは歓楽街だった。
今はもう夕暮れ時になっており、
「一発どう?今日はまだ
などというお誘いをされたりしている。
こんな所に来るということは……あの男、早速指輪の効果を試そうとしているのか?
その指輪からの音声を聞いてみた。
(お兄さん、一発どう?)
(また今度な。今日は先約があるからよ)
俺を誘ってきた女とは別の女を断っている。
ふむ、あの男の目的は女じゃないのかもしれない。
いつまで掛かるかわからないエルゼリアの尾行なんてしていたわけだし、あの指輪を入手する予定はなかったはずだからな。
まぁ、先約というのが単に買う予定の女を決めているというだけの可能性もあるが。
となると……結局どこへ向かってるんだ?
もしかすると、奴の目的地は歓楽街を通過した先なのかもしれないな。
いずれにしろ、尾行に気づかれないよう距離を取っておかなければならないので、声を掛けてくる女には少しだけ時間を割くことにする。
「ねぇねぇ、どう?そこそこ大きいんだけど」
ムニュリ
新たに自分を売り込んできた女はそう言うと、
ララやエルゼリアほどではないが、そこにはしっかりとした渓谷が刻まれている。
彼女はタレ目の美女でメリハリのあるスタイルだし、道端で客を取る必要はなさそうなぐらいだ。
まぁ、何かしらの事情があるのだろう。
そんな相手であれば十分魅力的であり、俺は強調された胸に目を向ける。
その視線を感じ取った彼女は、売り込みに成功する見込みがあると判断してか次の行動に移った。
「ほらほら、お試しにどうぞ♪」
ガシッ、ムニュムニュ……
「えーっと……」
彼女はいきなり俺の手を掴み、自分の胸を揉ませてくる。
ふむ……これはこれで、これまでと違った味わいがあるな。
この3日間、俺はララとエルゼリアを相手に十分なほど彼女達の身体を味わっていた。
外出するのは敵を誘うための買い出しのときだけで、それ以外は暇だったしな。
もちろん襲撃の警戒はしていたが、24時間警備ができるケイロンもいたので存分に楽しんでいたのである。
とは言え、有事の際を考慮し自身をゴーレム化して体力の回復をしており、それに伴って精力の方も回復していたのでそれを刺激されると
スリスリ……
「フフッ♪
俺の股間に手を伸ばした彼女は硬度を増したそこを確認し、ここが押しどころだと見て身を寄せると胸や腰を擦り付けてきた。
ムニュムニュ、スリスリ……
「う……」
スッ……
「ね?シましょ?♡」
クイッ、クイッと艶めかしく動く腰に刺激され、首に手を回して顔を近づけた美女に言われるとかなりクるものがある。
しかし……流石に人一人の命がかかっているという主目的を放棄できるわけがなく、俺は彼女の胸から手を離した。
スッ
「ここまで誘ってもらって悪いんだが、今日の目的は別にあってね」
「えぇーっ?」
彼女は断る俺に残念そうな声を上げる。
うーん、ここまで触らせてもらって空振りというのも申し訳ないな。
もしかしたら情報収集の一環でお相手を頼む可能性もあるし、悪い印象は持たれないほうが良い。
なので……俺は柔らかい感触から離れた手を自分の懐に手を入れ、そこから小さい金貨を取り出して彼女に握らせた。
サービスを辞退したのに渡されたそれに、当然ながら彼女は疑問を持つ。
「あら、1万コール?どうして?」
「まぁ、今のでも十分楽しめたからな。それに予定が空いてればお願いしたいんでね」
「あぁ……良い客だと覚えてもらっておけば、私がヤる気になるだろうってことね♪」
彼女は俺の意図を察すると、周囲に見られないようすぐに金貨を財布にしまい込んでから再び身を寄せてくる。
ギュッ
「少し前に通った連中にも貴方を見習ってほしいわ。A級冒険者だかなんだか知らないけど、客待ちの女達に触るだけ触って一銭も払わなかったんだから」
「A級冒険者?」
「そ。何だっけ……何日か前にギルドで罰金を取られたとか言ってたわね」
「もしかして、ブロッグスって奴か?」
奴とその仲間はギルドの受付嬢であるナタリアさんに対する暴行で逮捕されると、高額な罰金か長期の収監を迫られ前者を選んだと聞いていた。
なのでその名前を挙げてみると、彼女は頷いて答える。
「あぁ、そうそう。そんな名前の奴がリーダーみたいだったわね。それで金欠になって女を買うお金もないくせに、こんなとこ来てみみっちく女に手を出してたのよ。まぁ、どこからか"
その時の様子を思い出してか、彼女は嫌なことを思い出すような顔をしながらも最後には笑っていた。
うーん、"千手のジオ"って呼ばれ方にはまだ慣れないな。
役職などの肩書きならともかく、二つ名というのは日本の価値観を持つ大人としてやはり少々恥ずかしい。
不良冒険者への抑止力として必要だし、慣れるまで我慢するしかないのだが。
さて、尾行対象の男との距離を十分離せたので追跡を再開せねば。
俺は抱き着いてたままの彼女から離れようとする。
「あの、そろそろ行かないと」
「そう?じゃあ今度は買いに来てね、チュッ♡」
「んっ!?」
言いながら彼女は俺を抱きしめる手を解き、離れ際に軽くキスをしてくると名乗った。
「あ、私はミリーナよ。貴方は?」
「あぁ、えーっと……ジオって言うんだが」
「えっ?じゃあ貴方が"千手のジオ"?」
「まぁ、一応は。自分でそう名乗ったことはないんだけどな」
「あぁ……なるほどね」
何がなるほどなのかはわからないが、何かに納得して頷いているミリーナ。
「じゃあ、またな」
「あ、うん。またね♪」
そんな彼女に別れを告げ、俺は既に遠く離れた男の追跡に戻った。
追跡に戻ってしばらくすると、男の動きは1つの場所に留まったことを察知する。
正確に言うとあの男が嵌めている指輪型ゴーレムが動かないだけなのだが、外れないように変形させてあるので指が切断でもされていない限りはその場にいるはずだ。
どうやら歓楽街から女を連れ込む客をターゲットにしている宿のようで、夜としては早いが数組の男女が身を寄せ合いながら入っていく。
だが……俺はまだそこには近づかず、音声で様子を探ることにする。
(本当に上手くいくんだろうな?)
(あぁ。あの女の新しい宿もわかったし、あとはアンタ達がさらって来ればいいだけだ)
どちらも聞き覚えのある声だ。
1人はブロッグスで、もう1人は追っていたあの男だ。
こいつらは協力関係にあったのか?
そう思っていると連中の話が進む。
(エルゼリアって言ったか。その女を人質にしてあのジオから金を引き出し、お前の仲間を捕らえたことは手柄を焦ってでっち上げたことだと言わせる)
(そうだ。ジオってやつ本人はともかく、あの女を人質に取れれば俺の仲間を釈放させることはできるだろうからな)
(そう上手く行くか?奴は一瞬でこっちの動きを封じてくるぞ)
(大丈夫だ、エルゼリア本人には別の場所にいてもらうからな。下手に手出しはできなくなるはずだ)
(それだと俺達がその女をさらったって話を信じねぇかもしれねぇぞ?)
(それならそれでいい。いずれあの女の死体が見つかることになるし、その身体にジオには人質にしたことを伝えてあったと書いておけば……)
(奴がその女を見捨てた形にはなるか)
(あぁ。その上でギルドに報告してなきゃ奴は信用を失うだろう。そうなりゃ俺の仲間が捕まった件について奴の言い分が怪しくなる)
(それでお前の仲間が冤罪だと喚けば……どっちの言い分を信用していいかわからず、肝心の女もその時には死んでるから罪を確定できずに釈放される、と)
(ああ。それで俺の目標は達成されるし、仲間が不当に逮捕されたことを訴えてギルドから詫び金を取る。それをアンタ達に支払うって段取りだ)
(で、奴が言うことを聞いても目的は達成できるってわけか。その場合はエルゼリアって女を無事に返してやるのか?)
(あぁ、五体満足で返すつもりではあるぜ。まぁ……飽きるまで
(ククッ、そりゃあいい。だったら俺達にも使わせろよ、ギルドに金持ってかれて女を買えてねえからよ)
(もちろんだ。どうせなら孕ませてから返してやろうぜ)
(ハハッ、それで奴がどんな顔するか見ものだな)
(だろ?頑張ってくれよA級冒険者さん)
(へっ、任せとけ)
その後はエルゼリアをさらう手順などの話に移るが……ふむ、こんなところか。
大体はわかっていたが、エルゼリアを脅迫してきた連中はやはり森で彼女を襲った連中の仲間だったようだ。
となれば、こいつらを片付ければいいってことかな。
そう考えた俺は、連中の話を聞きつつ……
その部屋の暖炉から伸びる煙突に、1つの魔石を投入した。
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