第36話 お礼の後にお呼び出し

路地裏で大量の出血をして倒れていたエルゼリア。


それを発見した俺は、彼女をゴーレム化することで回復させ一命を取り留める。


その後、エルゼリアの部屋で再び魔石を使い身綺麗にさせると、死にかけた恐怖を実感した彼女は俺に抱き着き泣き始めた。


まぁ、それは仕方のないことだろう。


そう思った俺はそのまま好きにさせ……しばらくすると、落ち着きを取り戻した彼女が俺の背中から顔を上げた。



「グスッ……ハァ」


「大丈夫か?」


「何とか、ね」



多少は落ち着いたと言っても、こんな事があっては元の通りにいかないのが普通だろう。


できれば路地裏で倒れていた事情を聞きたいところだが、今日のところはゆっくり休ませたほうが良いな。


そう思っているとエルゼリアが提案してくる。



「……ねぇ、このままベッドに上がらない?」


「ああ、いいぞ」



これは行為のお誘いではなく、残る恐怖心を和らげるためのものだろう。


それに応じない理由はない。


というわけで……俺は彼女に服を着てもらい、共にベッドで横になる。



「ハァァ……」


スリスリ……



並んで横になると、エルゼリアは俺の胸に顔を擦り付けてきた。


再びそのまま好きにさせ、このまま寝るかと思っていると……彼女が事の経緯を語りだす。



「路地を通って宿に戻ろうとしたら声を掛けられてね。今日貴方が捕まえた連中を釈放するために、襲われたことを嘘だったことにしろって言ってきたの」


「なるほど。連中の仲間か」


「はっきりそう言ったわけじゃないけど……それを拒否したらナイフを出してきて、それでも断って何とか逃げ出そうとしたら刺されたのよ」


「短絡的な連中だな。エルゼリアが死んだら事件が嘘だったと申し出ることもできないだろうに」


「そこは一応考えていたみたい。私から誘ってきたことにして、それを確認できなければ……」


「証拠が不十分だから釈放されるかもしれないってことか?でもこの件が発覚すれば捕まえた連中との関わりを疑われるだろう?」


「人目もなかったし、私さえ死んでいれば刺した連中が捕まることはなさそうだったからね。それだと街の外で襲われた件との繋がりを疑われはしても、誰も証明できないでしょ?」



それで言うことを聞けば捕まえた連中は確実に釈放されるし、聞かなくても殺してエルゼリアの瑕疵をでっち上げ、連中が釈放される可能性を上げられるということか。


この短時間でよく考えてるなぁ、都合よくバカだったりすればいいのに。


いや、彼女が生き延びる可能性を考えていないからバカではあるのか?


まぁ、あの状態だったし助かるとは思えなかったんだろうけどな。


そんなことを思いつつ質問する。



「助けは呼べなかったのか?」


「騒いでも刺すって脅されたから……」



まぁ、そんな状況になれば余程慣れていない限り従わざるを得なくなるだろうな。


結局刺されるのなら騒いだほうが良いと考える人もいるかもしれないが、刺されずに逃げようとしたのだから事情が違う。



「一旦従ったフリをするってことはできなかったのか?」


「嘘だったら、その場にいない他の仲間が私を襲うことになってるって」


「あぁ……その後ギルドに訴えて脅してきた連中が捕まっても、結局は襲われるってことか」



それでは従ったフリをしても意味がない。


更に言えばゴーレムの力を知らなかったのだし、仲間というわけでもない俺に言っても守ってくれる保証があるとは思えなかったのだろう。


そう推察していると彼女は明言した。



「それに……従ったら貴方が連中を誤認逮捕したって認めることになるじゃない。助けてもらっておいてそんな恩知らずな真似をしたくはないわ」



つまり、フリとはいえ恩人を裏切ることには拒否感があるらしい。


死にかけながらも俺へのお礼の件を謝ってきたりしたし、やはりエルゼリアは義理堅い性格であるようだ。


その辺はララと似てるな。


となれば……俺の力については口止めしておけば口外しないだろう。


そこに安堵した俺は彼女の後頭部を撫でる。



スッ、スッ……


「ありがとう」


「っ!?な、何言ってるのよ。お礼を言うのは助けてもらったこっちでしょ!」



何かがスイッチになったのか、顔を赤くして捲し立てるエルゼリア。


そんな彼女はふと自身の左手に埋まったままの魔石を思い出し、俺の力について尋ねてきた。



「ねぇ、これってなんなの?」


「んー……誰にも言わないって約束できるか?」


「もちろんよ。2度も助けられてるんだから」


「そうか」



その答えを聞き、俺は自分の力について分かる範囲で教えることにする。





「ゴーレムを作る能力かぁ、それであそこまでのことができるなんて……」



俺の力について説明を終えると、エルゼリアは左手の魔石を撫でながら感心した。



「ということは、今の私は貴方のゴーレムってことになるのね」


「まぁな。ただ、俺が指示を出さなければ自由に動けるはずだ」


「そうね。これ自体は私の意思でやってることだし」


ギュッ、ムニムニ……



そう言うと彼女はまたしても俺を抱き締め、胸に乗っかると自身のそれを擦り付けてくる。


やはり良い物をお持ちだ。


跨られているわけではないのでしていることにはまだ気づかれていないが、今日のところは控えようと思っていたので少々気不味い。


そんな心情に気づいていないエルゼリアは、動きを止めると真面目な顔で聞いてくる。



「ねぇ……これって死ななくなったわけじゃないのよね?」


「違うな。魔石の魔力が続く限りは体の異常が治るってだけだ。魔力が尽きればその効果はなくなるし、これは確かめていないが……魔力が残っていても、即死するような事が起きれば死ぬかもしれない」



殺されかけたので死を回避できそうな効果に期待したらしいが、それを否定する答えを聞いて彼女は少し残念そうに言う。



「そっかぁ……でも怪我が治るだけで十分ありがたいわ。魔力は貴方が補給できるのよね?」


「ん?ああ、そうだが……別にそれを外してゴーレム化を解除してもいいんだぞ?」


「…………」



もちろんゴーレム化を解除できることは教えてあった。


なのでそう言ったわけなのだが、それを聞いたエルゼリアは……



「嫌」



と、拒否をする。


一応、何を嫌がっているのか確認する。



「え?何がだ?」


「ゴーレムじゃなくなるのが」


「えぇ……」



戸惑う俺に彼女は続けた。



「怪我だけじゃなく異常が治るってことは病気も治るってことじゃない?それで指示がない限りは自由に動けるんだし、これを外す理由なんてないじゃない」


「俺の操り人形になってるんだぞ?何をさせられるか怖くないのか?」


「私がお礼をするって言ったら断ろうとしたじゃない。っていうことは見返りを期待して私を助けたわけじゃないんでしょう?そんな人なら酷いことはしないんじゃない?」



つまりは俺を信用しているということらしい。


それは間違っていないが……かと言って他に問題がないわけでもないのだ。


俺はそこに言及する。



「まぁ、それはそうなんだが……他人にバレるのはなぁ」



ゴーレムであることを利用していた場合、世間にバレる可能性が高くなるだろう。


怪我などが瞬時に治れば間違いなく注目されるからな。


更に言うと……ゴーレムの核にした魔石の魔力が少なくなれば、その度に俺が対応しなくてはならなくなる。


そうなれば緊急で場所を問わず対応することになるかもしれず、彼女の怪我が自動的に治るのは俺の能力によるものだとバレてしまうだろう。


それでは口外しないことを約束させたとしても意味がない。


うーん……


勝手にゴーレム化を解除してもいいが、それを嫌がっている事情もわかっているので実行しづらいんだよな。


エルゼリアを刺した連中はまだ自由なんだし、生きていることを知られればまた狙われるかもしれない。


だからこそ、彼女はゴーレムのままでいたいと言ってるんだろうし。


そう考えているとエルゼリアが提案する。



「あ、だったら別の場所に魔石を埋め込んだら良いんじゃない?別に体の表面で見えていなくてもいいんでしょ?」


「それはそうだが……怪我が治ることについてはどう説明する気だ?」


「私がそういうスキルを取得したことにすればいいわ。自分の体が治るだけなんだから他人に害はないでしょう?」


「害はないかもしれないが、魔法使いだったって設定はどうするんだよ」


「魔法使いがスキルを取得できないとは限らないわ。現にS級の冒険者の中にはそういう人もいるはずだし」


「あぁ、そうなのか。でもエルゼリアが望んだのは魔法のような力だろうに」


「それは仕方ないでしょう。後から取得できるスキルは本人の適性や経験によることもあるけど、全てがそうだとは限らないんだし」


「そうか……だが俺はずっとここにいるわけでもないぞ?遠い土地や危ない場所に行くこともあるだろうし」



ギルドに役目を貰ったが、ここでの仕事が減れば余所のギルドへ派遣されるか解任させられるだろう。


ララのこともあるし、同じ土地に長期間留まるつもりはない。


どちらにしても別の土地へ向かうつもりであり、エルゼリアがここに留まるのであれば離れることになって魔力の補給が難しくなる。


それを伝えるとこう返される。



「魔力の補充ならそっちの都合が良いときでいいわよ。そもそも助かっただけで十分なんだから」


「そうか」



そこまで言うのであれば……と俺がその話を承諾しかけると、後押しのためか彼女は再び俺の上で動き出す。



「というわけで……ねぇ、いいでしょう?」


モゾモゾ……ムニムニ……ムギュッ


「う」



今度は完全に俺の上に乗り、胸を擦り付けると同時にしている部分を太股で挟んできた。


これは完全に意図しての行動のようだ。


……まぁ、いいか。


命を脅かせれても俺への義理を通す女だしな。


俺はエルゼリアのお尻に手を伸ばす。



ムニッ


「……遠慮なく貰うぞ?」


「もちろんよ。ゴーレムの力で体力も回復するんでしょ?だったらその……ひ、一晩だろうが二晩だろうがお相手させてもらうわ」


スッ……チュッ



エルゼリアは緊張しながらもそれに了承し、その証明として俺の唇に自身のそれを押し当てると"お礼"の時間が始まるのだった。







翌朝、エルゼリアの隣で目を覚ます。


隣で眠る彼女は満足した顔だ。


まぁ、ほぼ徹夜で続けたんだから実際に満足はしただろうな。


もちろん水のゴーレムでドーム状の壁を張り、防音には気をつけたので苦情は来ておらず俺も存分に愉しめたが。


エルゼリアは初めてながらもゴーレムとしての回復能力で痛みもなく愉しむことができ、快感の味わい方を覚えると積極的に求めてくるようになった。


その際に貫いたの存在により、傷口に異物がある状態で回復すればそのままになると判明する。


これはララ自身のスキルで治るのと同じかな、彼女の場合もそうだったし。


俺はエルゼリアの状態を確認する。


見た目は綺麗な状態だがそれは俺の力で汚れを回収したからであり、その前は長時間続けただけあって体液塗れと言える姿だった。


俺にがあったわけではないが、彼女としてはそれも満足感を得られて喜ばしいことだったようだ。


その満足感を最も得られるのが俺の体液をに貰うことだったらしいが、注ぎ込む度に回収したのでその代わりにという部分もあったのかもしれない。


そんなことを考えていると部屋のドアがノックされる。



コンコン


「あの、宿の者ですが」


「あぁ、ちょっと待ってください」



エルゼリアはまだ寝ていたので俺がそう応え、隣の彼女を揺り起こす。



ユサユサ、プルプル……


「おい、起きろ。宿の人が来てるぞ」



揺すると同時に揺れる胸に目が行きつつも、人を待たせているので起こすほうを優先する。



「んん……んぅ?どうぞぉ……」


ススッ、ガバッ



起きたはいいが……寝ぼけて俺がと思ったのか、エルゼリアはシーツを捲ると大きく股を開く。


そして彼女の声を聞いたのか、入室の許可を得られたと思ったらしい宿の人がドアを開けた。



ガチャッ、キィッ……


「「あ」」



この部屋は狭く、ドアからベッドまでは非常に近い。


つまり……宿の人はエルゼリアの局部を思い切り見せつけられる形となり、ついでにまだ裸だったも見ることになった。



「っ!?……あっ!?すす、すみません!」


バタンッ!



どちらかと言うとを見て顔を赤くし、謝罪と共にドアを閉める宿の人。


若く可愛らしいタイプの女で、意図的ではないとはいえ俺は申しわけない気分になる。


そんな状況にエルゼリアは……



「まだぁ……?♡」



などと寝ぼけ続けていた。

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