第33話 「初仕事」は適当に?

エルゼリアと別れた俺は依頼の掲示板に戻り、今度は高ランクの依頼も見ておくことにする。


と言ってもそこまで数は多くないのだが、依頼書の状態から見るに結構長く貼られているように見えるものばかりだ。


その内容を見ると……どうやら魔境の征服依頼のようだった。


依頼のランクはCが二重線で消されてBに上書きされている。


魔境を発見したときはCランク相当だと判断され、それが今はBランクになっているということか。


請ける冒険者がいなかったからというだけで難易度が上がるわけではないだろうし、魔境が成長しているからこの対応となっているのだろう。


成長している境核は魔力を多く貯め込んでいるだろうし欲しいところだが、前回の事を考えると面倒でもある。


あの数だったし、まともに戦えばこっちの戦力がもたなくなる可能性もあったからな。


今はあのときの境核を手に入れたこともあって魔石の融合や分離で思い通りの魔石を用意でき、それによるゴーレムの運用で同じ規模の魔境でも問題なく征服できるかもしれないが……まぁ、初仕事だし安全を取ろう。


そう考えた俺は、低ランクの討伐依頼を確認して掲示板を離れた。





宿へ戻り、ララを連れて町を出ると南西部の森へ向かう。


その森はかなり広いようで、国内では南部にあるからか動植物が比較的豊富なのだとか。


それに伴ってなのか魔物も多いらしく、多くの冒険者が向かっていた。


歩きながらララが言う。



「常設依頼の対象は新人に譲っておきましょう。帰りにもいたら狩るぐらいで」


「そうだな」



この時期は収穫結果によっては家を出ることになる若者もいるらしく、経験の浅い冒険者が増えるそうなのだ。


そういった冒険者達が獲物を求めて強敵に遭遇してしまう可能性を下げるため、それなりに実力のある冒険者はランクに見合った獲物を狙うのが慣習らしい。


まぁ……実際に制限があるわけではないそうで、誰がどの獲物を狙うのかは自由だそうだが。


そもそも魔物は遠くからでも人間を感知して襲ってくる以上、低ランクの魔物を新人に譲るにはなるべく森の奥深くへ入るぐらいしかないからな。


こちらにはゴーレムもあって人目につきたくないし、この森で活動していたこともあるララがいるのである程度の魔物は対処できる。


そんなわけで、一応は新人であるもわざわざ弱い魔物を狙う必要のない俺達は、慣習に習って森の奥のほうへ入るつもりなのだ。


そうして森に入り、浅い地域にいた冒険者達を横目に奥へ進むと……辺りに人の気配がなくなってきた頃、結構な数の魔物が接近してくるのを感知した。



「ルル、魔物だ。あっちから8体」


「了解。こちらからも距離を詰めておく?なるべく奥でやったほうが良いわよね?」


「そうだな」



万が一新人が奥に踏み込んでるかもしれないし、そっちに流れるのもよろしくない。


そう考えて俺達は戦闘態勢を整え更に奥へ進む。


その先に現れたのは……力士体型で豚の頭部をした魔物、オークの集団だった。



「「ブォォォオォッ!」」



ゴブリンのときも思ったが……色んな作品で見た連中を見ると少し感動するな。


初遭遇のときは焦りしかなかったが。


そんなことを思っているとララが前に出る。



「見た限り特殊な個体はいないようね。貴方は何かあったときのために控えてて」


「了解」



そんなやり取りをすると彼女はオークの集団に向かっていき……あっという間にすべての敵を斬り伏せてしまった。



「フッ!」


ドズッ、ザシュッ、バシャッ、バツンッ


「「ブオォォオォッ……!」」


ドスンッ、バサバサッ、ズルル……



その場に倒れ、草むらに突っ込み、木に寄りかかってずり落ちるオーク達。


1体でも新人の集団にはきついぐらいの扱いらしく、最下級のノーマル級でも普通の人間では到底抵抗できないほどの腕力を持っているそうだ。


それを軽く処理できるのはララのスキルによるもので、俺としては楽ができていいのだが……そんな彼女が俺に言う。



「ジオ。こいつらのも討伐証明になるけど、のほうもお金になるわよ」



精力剤の材料になるらしい。


前世でもそういうものはあったので驚きはせず、こちらの世界へ来てから動物の解体も普通に見るので多少は慣れた。


ララが切り落としたものを、それぞれゴーレムとしてまとめ"格納庫"へしまう。


だが……やはりモノや玉を切り取る光景には微妙に慣れないな。


そうして俺にとっては主目的である魔石も回収し、更に奥へ進むと同じように魔物を狩り続けた。






「そろそろ帰るか」


「そうね」



暫くして、様々な魔物を狩った俺達は町へ帰ることにする。


すると……結構奥まで森に入ったので人の気配はないのだが、少し戻った辺りで妙な魔石の反応があった。


いくつかの魔石が一箇所に集まっており、その場で微妙に動くが大きく移動はしていない。


それをララに伝えると彼女が予想する。



「怪我人かしら?」


「それにしてはこう……短い距離を素早く動いてるようなんだが」


「魔物の攻撃を避けてるとか?」


「かなぁ……ただその場から移動はしようとしていないから、逃げようにも逃げられない状態なのかもしれない。様子を見るだけ見ておくか」


「そうね。問題がなさそうなら放って帰ればいいわ」



というわけで、その人間らしき動きのある場所へ寄って帰ることにしたのだが……


そこにいたのは服を脱がされたエルゼリアと、彼女を押し倒していた男達だった。





エルゼリア視点



ハァ、やっぱり断られたわね。


それもそうか、魔法やスキルを手に入れる方法なんて誰にもわからないんだし。


でもどうしようかしら?


お金がそろそろキツイのは事実だし、簡単な採取依頼じゃやっていけない。


私でもできる他の依頼となれば、町の中でもやれるものはあるけど……そういうのは取り合いになるし、私じゃその取り合いに勝てないのよね。


大体は男の冒険者が群がって、そこへ無理に入った女は身体を触られたりするみたいだし。


それに休暇としてこの町に来ているように誤解させておきたい私としては、必死に依頼の取り合いをしているところを見られるわけにはいかないからね。


もっと安い宿に代えるべきかしら?


でも今の宿だってそこまで高い宿というわけでもないし、これ以上安い宿となると防犯に不安がある。


安さだけを求めると大部屋に知らない人と一緒らしいし、そういう所は基本的に男ばかりで女の私には身の危険しかない。


いくら魔法使いに誤解されていると言っても、流石に寝ていれば襲われる可能性は十分ある。


前に住んでいた町ではそれを知らない新人冒険者が女連れでそういう宿に入って、お金を取られるわ女も襲われるわで大変な目に遭っていたこともあった。


しかも現場にいた冒険者が結託して、誰もが知らないと言って結局犯人はわからなかったのよね。


この町でも素行の悪い冒険者は普通にいるみたいだし、やっぱり気をつけておくに越したことはないわ。


あのジオって男はギルドに"監察役"なんて書かれている登録証を貰ってたし、それだけの実力と素行の良さがあるってことよね。


護衛の女と身体の関係もあるって言ってたから、女に飢えているわけでもないでしょうし安全ではあるのかも。


それを考えると……雑用でもいいから一緒に行動させてもらって、スキルを手に入れるきっかけを探しながらお賃金を貰うっていうのが都合は良いんだけど……


都合が良すぎるか。



「ハァ……」



とりあえず少しでも稼いでおかないと。


そう考えて、私は今日も薬草の採取に向かうのだった。





町の南にある森は獲物が多く、浅い地域には新人が大勢いる。


散歩のついでに薬草の採取をしていることになっている私としては、そういった人達と取り合いをしているところを見せるわけにはいかない。


なので少し奥へ行くのだが、そうなると魔物に襲われる可能性が高くなる。


だからいつもかなり警戒してるんだけど……今日は静かね。


少なくとも、遠くで戦ってる様子は聞こえてきたりする。


それが全然ないってことは、魔物が少ないってことよね。


薬草の採取をするには都合が良いか……いや、他の冒険者も獲物がいないとなれば薬草の採取をやるでしょうね。


"遺跡"のせいで治療院にいる治癒魔法を使える人は少ないし、その費用も高額になってるから安く治療できる薬草の需要はいつもあるわけだし。


それは困るわね。


仕方ない、今日は少し奥で採取することにしよう。





しばらくして、やはり魔物がでない森で薬草の採取をしていると夕暮れ前辺りの時間になっていた。


成果は……いつもより多かったかな?


この辺りは魔物の討伐を目的とする冒険者が多くて、それで薬草が残っていて繁殖していたのかも。


ある程度の冒険者になると、特殊なものでない限りは薬草の採取を「力がない冒険者の仕事」と考え、自分がそう見られないようにと避けてしまうからね。


まぁ、私には都合が良かったからいいんだけど……と思っていると、背後から複数の気配が近づいてきた。


人気ひとけも人目もない場所だし、あまり人と会いたくはない。


というわけでその集団から離れようとしたところ、その集団は私が進んだ方についてきた。


偶然進む方向が同じだったのかもしれないと考え、私は進む方向を変えてみるも……やはり気配はついてくる。


と言うか足音も聞こえてくるほど近づいて来ているし、チラッとそちらを見ればニヤついた男達が私を見ていた。


身の危険を感じた、これは不味い。


でもこれ以上森の奥へ入れば流石に魔物と遭遇するかもしれず、そこで魔法を使って見せなければ私が魔法使いではないとバレてしまう。


そう考えて町の方へ戻ろうとしたところ……私が進もうとした先の木陰から男が出てくる。



「よう、引き上げるのか?」



その男もついてくる男達と同じようにニヤついており、どうやらお仲間であるらしいことが窺えた。


私は声を掛けてきた男に答える。



「ええ。今日は気分が乗らないから戻ろうかと思ったの」


「へぇ。でも今日は魔物が少ねえみたいだし、散歩ならもっとゆっくりしていっても良いんじゃねえか?」


「……私の勝手でしょう」



そう返した私に、男は笑いながら言ってくる。



「ハハッ、そりゃそうだ。じゃあ、こっちはこっちで勝手にヤらせてもらうかな」


ザザッ



男がそう言うと後ろから5人ほどの男達が近づいてきた。


不味い!


そこで私はこの場を離れようとするも……



ザザザッ!


「そう急がなくてもいいだろ?」

「そうそう。俺達と遊んでいけよ」



男達に囲まれ逃げ場がなくなる。


不味い不味い不味い!


私は焦りつつも、なんとかこの状況から逃げ出そうと考える。



「ま、魔法が怖くないのかしら?」


「そりゃ怖いさ、あるんならな」

「「ククク……」」



男の返答に周囲の男達がいやらしく笑う。


これは……魔法を使えないことがバレてる?


そう察した私に男達の1人が言う。



「俺はスキルで耳が良くてなぁ。お前がギルドで話してたことは聞いてんだよ」


「っ!?」



くっ、別の場所にすれば良かった!


でも、別の場所じゃジオが大人しくついてきてくれるとは限らなかったし……


そう思ってもすでに遅く、男達は余裕そうに距離を詰めてくる。



「いやぁ、今日は運が良いな。魔物が居ねぇし、獲物は居るし……じゃ、始めようか!」

「「おおっ!」」


バッ!ガシッ!


「ヒィッ!いやっ!」



男達は一斉に私を押し倒し、杖を奪うと服を脱がせようとしてきた。


マントの下はワンピース型だ。


なので一気に胸まで捲り上げられる。



グィッ


「お、中々のモン持ってんじゃねぇか」


ワシッ、モミモミ……


「やっ、やめ……ムグッ!」



抗議の声を上げようとするも口を塞がれ、男達は遠慮なく私の身体を弄り回す。


下着も上は捲り上げられ、下はずり降ろされて露出させられた。



「「おぉ……♪」」



私の身体に男達が嬉しそうな声を上げる中、こんな案が挙げられる。



「服は杖と一緒に売っ払わねぇのか?だったら汚さねえようにちゃんと脱がしたほうが」


「ああ……そうだな。裏で売れば足もつかねえし」



それにリーダーらしき男がそう答え、男達はどうせだからと私の服をすべて脱がせた。



フニフニ


「ん?この感じだとだったのか。こりゃあ楽しみだな」


「お、いいなぁ。は締まりが良いしよ」

「この女が魔法使いじゃないってわかったのは俺のお陰だってのに」


「まぁ、リーダー特権ってことで」



私の股間を触っていたリーダーらしき男が他の男達そんなことを話しつつ、ズボンを下ろして自らの股間を曝け出す。


そこには硬そうな棒が備わっており、これから私の身体に起こることを想起させように上を向いて自己主張をしていた。



「じゃあ……魔物の様子を見てて時間も時間だし、そろそろ始めるとするか」



の先端が男の手で私の股間に向けられ、遠慮なく入ってこようとする。



「うぅっ、うううーっ!」


バタバタバタバタッ



嫌だ嫌だ嫌だ!


そう思い足をバタつかせるも、すでに股の間に入り込まれていて男の前進を止めることはできない。


それでも最後まで抵抗を試みていると……不意にその前進が止まった。



ガシッ


「ぐっ!何だこりゃ!?」

「なっ、こっちもか!?てか冷てぇっ!」



男の腰を白く大きな手が掴んでいて、他の男達も同じ手に掴まれている。


その内の1人が気付く。



「白くて冷たい手って……まさか」



その男が呟いた直後、森の奥の方からが姿を現した。



「狙ってはいなかったんだが……こっちの初仕事もやることになるとはなぁ」

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