第32話 唐突な依頼

食事をご馳走すると言われてそれを受けた結果……ナタリアとジェミナ、2人の身体も頂くことになった。


翌朝起きると裸の2人が俺の左右に寝ており、涼しい季節だからかその身体を俺に寄せている。


当然その柔らかさに気が行ってしまい、昨夜の2人を思い出しつつ胸を揉み比べた。


ナタリアは大きくて柔らかく、ジェミナも大きいが張りは強めである。


どちらもこれを揺らして悦んでくれていたので、俺の面子も保たれて満足だ。


そんなことをしていると2人が目を覚ます。



「んっ♡んん……ううんっ♡ん?……あっ、おはようございます♡」

「あんっ♡ん?あぁ、おはようございます♡」


「おはようござます」



ジェミナのほうが若干寝起きは良いようで、2人は先程以上に身体を密着させてくる。



ムニュウ……スリスリ……


「昨夜は素敵でした♡」

「良かったよぉ……♡」



身体を擦り付けながらそう言われれば嬉しいもので、俺のモノも喜んで硬くなってしまった。


それで盛り上がったシーツを見て、2人は笑みを深くして尋ねてくる。



「「如何ですか?♡」」






身支度を終えたのはそれから暫く経った頃だった。


お湯のゴーレムを使って身綺麗にさせた2人は、それ以外にもからか満足気である。



「ハアァ……気持ち良かったぁ……♡」

「本当にねぇ……♡身体が綺麗になったのもだけど♪」



ゴーレムの核である魔石を見せるわけにはいかず、足の裏に出していたので一緒にお湯の中に入る必要があった。


そこで前後から2人に挟まれ、身体を使って擦り上げられれば……に入るのも自然なことだろう。


それはさておき。


やはり町でも入浴はサウナが一般的であるらしく、2人はお湯のゴーレムによる入浴を痛く気に入ったようだ。



「またお願いできますか?♡」

「もちろんご一緒に♡」


「……まぁ、都合が付けば」



入浴で綺麗になりその上で色気を放ちつつ頼まれれば、さしたる理由がない限りは無理に断る必要もなく俺はそう答えておくことにする。


そんな俺達は身体が落ち着き次第服を着ると、階下の酒場で朝食を取って宿を出た。


2人はそのままギルドへ出勤するというので、それを見送ってから自分の宿へ戻る。






「スゥ、スゥ……」



宿に戻るといくつもの酒樽が部屋中に転がっており、その中でララは大の字になって安らかに眠っていた。


全て空か。


飲み過ぎだろうと思ったが、彼女のスキルにより健康を考慮する必要がないとのことで放って置く。


そうして空の酒樽を片付けていると、ララは酒樽の1つを抱えたまま目を覚ました。



「ん、んんぅ……あ、おはよう」


「おはよう」


「あっ」



彼女は俺が酒樽を片付けていることに気不味そうな顔をする。


身体に問題はなくとも、別の点で問題があると思っているのだろう。


そんな彼女に俺は聞く。



「いくら分飲んだんだ?」


「えーっと……ぜ、全部じゃないけど……」



そう言ってララが視線を向けたテーブルには、銅貨が数枚残っていただけだった。


えーと、銀貨が1000コールで銅貨が100コールだったか。


ほぼ全部だな。


気不味そうなのはそのせいなのだろうが、使い切ってもいいと言ってあったので責めはしない。



「気にしなくていいぞ。そのつもりで置いていったんだし、俺は俺でを食ってきたからな」


「そ、そう?だったらいいんだけど……」



全額使っていいというのを建前だと思っていたようだが、今のでそうではなかったことを理解し安堵したようだ。


そんな彼女が今後の予定を聞いてくる。



「それで、今のところはどう動くの?」


「可能な限りは魔石を手に入れておきたい。買えばマジックアイテムを持っていると誤解されるだろうし、自力で調達したほうが良いだろう」


「それもそうね。じゃあ討伐依頼でも請ける?」


「まぁ、都合の良さそうなのがあればな。見てくるから食事や身支度をしておきな」



そう言って俺は宿の受付へ向かうと、部屋の延長手続きをしてギルドへ向かった。






ワイワイ……ガヤガヤ……



ギルドの受付側へ入ると今日も混んでおり、朝から?と思えばその原因は掲示板だったようだ。


そこでは依頼の手続きをされたものが、紙に書かれている掲示板に貼られていた。


ランクごとに分かれているらしく、ランクが高くなるにつれて掲示板の前にいる人数は少なくなっている。


というか高ランクの依頼を見ている人はいないな。


打ち合わせのスペースには何組もの冒険者達がおり、ここから剥がした依頼について話し合っているようだ。


そんな様子を見て……俺は特殊な立場ながらもF級であることには違いないので、F級用の討伐依頼を見てみることにする。



「んー……」



ゴブリンにオーク、狼や猪……色々あるな。


魔物も越冬のためか食料確保のために活発な動きを見せるようで、収穫の時期である今それらを狙われかねない人々から依頼が出ているようだ。


特に輸送の護衛が多いのは、人里で保管しておく場合よりも狙われやすいからだろう。


そうして、どれが良いかな……と掲示板を見ていると、横から鋭い視線を感じ始めた。



「……」



何だ?と思ってその視線の主を見てみれば、そこには町へ入る前に俺を商人だと思って話し掛けてきた女がいた。


昨日と同じように魔法使いらしい格好をしており、俺の首元を見つめている。


登録証を見ているようだが……とりあえず挨拶でもして探りを入れてみよう。



「おはよう」


「おはよう」


「何か用か?」


「それ、普通の登録証じゃないわよね?」


「まぁ、色々あって」



その返答で察したのか、彼女は顔を寄せてきて小声で聞いてくる。



「昨日、A級下位の冒険者達が受付嬢に手を出して捕まったらしいけど……捕まえたのアンタ?」


「まぁ、そうだな」


「じゃあ、"千手せんじゅのジオ"ってアンタなの?」


「そう名乗った覚えはないが……ジオではあるな」


「っ!?ちょっと来て!」


ガシッ



答えると同時に腕を捕まれ人混みから引っこ抜かれた俺は、打ち合わせスペースの隅にある席へ連れて行かれた。


俺としては実入りの良い依頼を狙っていたわけでもなく、魔石さえ手に入ればいいので残り物や常設されたものでも問題はない。


なので特に抵抗することなくついて行くが、彼女は俺を座らせると隣の椅子を俺に寄せて座ってくる。


すると再び俺にズイッと顔を寄せて尋ねてきた。



「氷の手をいくつも操るって本当なの?」


「まぁ……一応は」



細かい仕様は秘密なのでそう答えると、彼女は名乗って用件を話す。



「私はエルゼリアって言うんだけど……魔法の使い方を教えてくれないかしら?」


「ハァ?君は魔法使いじゃないのか?」


「……み、見習いってところかしら」



その格好から魔法使いだと思い込んでいたが、どうやら現時点では格好だけだったようだ。


さて、魔法の使い方を教えてほしいと言われても、俺は魔法使いではない可能性が高くその知識もない。


なので教えることなど出来ないわけだが……理由もなく断れば魔法使いでないことを疑われるだろう。


万が一、そこからギルド長のフランチェスカ氏に鑑定させろと言われる流れになると面倒だ。


とりあえず、色々と話を聞いて断るきっかけを探るとしよう。



「何で魔法使いになりたいんだ?」


「実家というか、家業のためね」


「家業?どういうことだ?」



そう聞くとエルゼリアは経緯を話す。



「実家はちょっとした商家だったんだけど、事情があって閉めて引っ越すことになったのよ。それで引っ越した先でも商売をすることにはなったんだけど、同じ事情でまた店を閉めることになるかもしれないからそれを防ぐためね」


「その事情って?」


「多少腕は立つけど素行の悪い冒険者達がいてね。その連中が商売敵に雇われていろんな形で嫌がらせしてきたのよ」


「そんな事があったのか。だが法的に対応できなかったのか?」


「衛兵にも商人ギルドにも訴えたわよ。でも確たる証拠はなかったし、見てた人に証言を頼もうにも連中に脅されてね」


「それは……」


「胸やお尻を触られるどころか揉まれることが毎回のようにあったから、1人でも監視に来てくれてればその現場を見て対処してくれるかと思ったんだけど……"遺跡"に高ランクの冒険者を取られている町としては、多少なりとも腕の立つ冒険者が使えなくなるのは困る。というわけで……」


「誰も来てくれずにお咎めなし、か」


「そういうこと。まぁ、触られてるところを見てもらったぐらいじゃ営業妨害をしに来たって扱いにはならなかったでしょうけどね」



その場限りの痴漢という処理になり、根本的な解決にはならないということだろう。



「それで引っ越した先でも同じようなことがあるかもしれないし、私も力が欲しくなったんだけど……普通に鍛えても対抗できるほどになるのは難しそうでしょ?だから魔法使いを目指してるのよ」


「なるほどなぁ。だが目指してなれるものじゃないだろ?」



魔法使いは先天的な資質を持つ者にしかなれないと聞くし、それは一般的な常識らしいので彼女も知っているはずだ。


するとエルゼリアは腕を組んで答える。



「それは分かってるけど……スキルならなんとかなるかもしれないじゃない?」


「だとしても俺には教えようがないだろ?」


「それはどうかしら?後から身につくスキルって本人の努力や環境によるらしいし」


「そうなのか?」


「少なくとも私が聞いた限りではね」



本人の適性や技術の習熟度によるということだろうか?


この辺りのことは暇があったら調べておこうかな。


さて……スキルを後天的に、という話だが。


努力や環境で会得できる可能性があるとは言え、やはり俺がどうにかできることではないだろうから断ることにする。


元々、俺の能力を知られたくないので断るつもりだったしな。



「うーん……やはり引き受けられないな」


「どうしてよ!?」


「スキルを得られる可能性があるとして……いつまで掛かるかわからないだろうし、何なら死ぬまで無理かもしれない。そんなことには付き合えないよ」


「ぐ」


「それに、その話を受けるとして報酬は用意できるのか?」


「ぐぐ……やっぱり必要?」


「当たり前だろ……」



やっぱりと言っている以上、彼女も無報酬でというのは都合が良すぎると思っているのだろう。


それなりの腕がある冒険者達に対抗できるほどの力を望んでいるわけだし、そんな力を得られることに対する代価はそれなりに大きなものでなくてはならない。


それがわかっているからかエルゼリアは沈んだ顔をする。



「ハァァ……そろそろ不味いんだけどなぁ」


「何が?」


「父が餞別としてある程度のお金をくれてたんだけど……」


「ああ、それが尽きそうだと」


「ええ。この町には一月ひとつきぐらい前に来たんだけど、魔物退治なんて出来ないからね。だから薬草の採取依頼で赤字を減らしていたわ」


「一月か……ん?そう言えば仲間はいないのか?」


「いないわよ。だから薬草取りなんてしてるんじゃない」


「いや、大丈夫なのか?そのー……変な奴に目を付けられるとか」


「あぁ、身体は無事かってことね。それについては無事よ、この格好のお陰で」


「格好のお陰?」


「ええ。ほら、魔法使いって見た目で実力はわからないじゃない?だから下手に手を出せないって考えてるみたいよ」



身に着けている魔法使いの装備はそんなに高価な物でもないそうだが、程々の物の中古ということでそれなりの実力があるのかもしれないと誤解されているそうだ。


薬草採取ばかりしているのにその誤解が通るのは、この町に来ている理由を休暇だということにしているかららしい。


散歩のついでに薬草を採取していることにしているそうな。


ある程度の実力があると思われるにしては若いが冒険者ギルドの登録証は一定のランクまで同じ材質であり、パッと見てもわからないので手を出されずに無事であるようだ。


ただ、それは人間相手にだけ通じる誤解であり、魔物が相手では別の話だと思うのだが……近場の森は浅い地域なら人が多く、獲物の取り合いになるぐらいなので比較的安全なのだとか。



「それは良かったが、長くは続かないよな?」


「だから昨日のことを聞いて、お願いするためにアンタを探してたのよ」


「そう言われてもなぁ……大体、俺だって君が魔法使いではないとわかって身体を狙う可能性もあっただろう?」



そう返すと彼女は少し顔を赤らめて尋ねてくる。



「え?えっと……護衛のあの女とはじゃないの?」


「そういう関係ってのがどういう関係なのかによるが……まぁ、身体の関係ではあるな」


「そ、そうなんだ………………あっ!じ、じゃあ私行くわね。無理なら仕方ないし」


「お、おう」



俺の答えを聞いてを想像したのか、更に顔を赤くしたエルゼリアは席を立ってギルドを出ていったのだった。

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