第3話 感性


 ど! ど! ど! どーゆーこと?!



まったぁ〜、、、度肝をぬくような事を、いきなりルミは言ってきた。


『ルミちゃん‼️ いったい誰を殺したいって思ったの?!』


驚きながら、言うなおみに


『彼と、奥さんに決まってんやんかっ❢』


と、ルミは即答した。


『ルミちゃん、何でそこまで思ったん!?』


『カァーッとなったんや! 自分でも分からへんねんけどな、、、奥さんと、彼が車から降りて玄関に一緒に入るとこ見たんや! そんときな、アタシ、人を殺せるて、確信したわ❣』



『2人に対して殺意が芽生えたの!?』


『そやな』


ふーーーん、、、、


暫くルミとなおみの間に長ーい沈黙が続いた。


なおみは、会話を続けた。


『しんどいなぁ、、、ルミちゃん』


そういう、なおみに対して


『アタシ、意地でも彼を奪ってみせる!!


か、な、ら、ず!!やで‼️』



凄まじい決意と怨念を感じる。その一方で、なおみは、ルミに対する強さを、どこかでリスペクトしている。




今まで、なおみの人生に無いタイプの人だったからだ。


ルミの気性は確かに強さだけじゃなく、激しさを感じる。


暖かい優しさとか、柔らかさはあまり感じられない。 が、


自分の信念を通す為なら、どんな手段も厭わない!


  自分の思いどうりに生きてやる‼️



この、自分の人生を我が物に、欲しい物事や、人を、次々に、手に入れようとするルミの飽くなき追求に、なおみは、ジワジワ足を踏み入れたくなっていった。



『殺すの思い留まったのは、何か理由でもあったん?』


『そんなん、あるはずないやろ?! 一瞬、衝動にかられたんや。


アタシには、一緒になろうて、上手いこと言うといて、家ん中では、奥さんと仲良う、やりよんちゃうか!? そない、思うたら、うしろから頭を殴りとなったわっ‼️』



携帯で、話をしているだけなのに、ヒステリックにキンキーンと響くような、かなきり声で怒りまくる話を聞いていると、ルミの顔や頭から、熱い湯気が出ている姿が浮かぶ。



ルミは、堰を切るように再び喋り初めた。



『アタシの前の(内縁の)夫、病気で死んだんやけどな、、、実は、別に奥さんと、子供が3人もおったんや』



『訳ありやねー』と、なおみは返事しながら、やっぱりな、、、と思った。ルミという人物に対して海線、山線を越えてきた、たくましさを感じたからだ。



『アタシ、その時も、どうしても彼(内縁の夫)と一緒になりたかってんな、、、最終的には、彼(内縁の夫)、アタシと一緒に住んでくれたんやけど、籍は入れられんかってん。


奥さんが、絶対に籍、抜いてくれへんかったんや!


そうするうちに、アタシらにも息子が1人出来てん♥』


『子供、妊娠した時、ルミちゃん嬉しかったあ?』


と聞くなおみに、


『嬉しかったでー❢』と即答。



なおみは思った。


もし、自分だったら、そこは、困る!!


前妻が、籍も抜かないのに、自分は子供だけ妊娠しても、子供ごと、このまま、修羅場に巻き込まれるのが怖いからだ。



『でぇ ??? ルミちゃん達、


その後どーなったん! ???』


なおみは、率直な疑問をぶつけた。


『そりゃ、奥さんとも、すったもんだあってんけどな、、、


結局、彼は、私と同棲してくれて、アタシとの間に産まれた子供を育ててくれたんや』と、勝ち誇るように語尾を強めて言った。



『でもな、、、』


そのあと、ルミは、小さなため息を吐いた。


『暫く幸せは続いたけど、彼が癌になったんや』


『彼(内縁の夫)が、働いてくれよる時は、家に毎月10万いれてくれよってんけど、そのうちな、、、それが5万になり、3万になり、、、しまいには癌になったから、アタシが彼を養うハメになってんやんか、、、』



『アタシの実の父親も、当時、入院しててん。その入院費と、息子との生活と、それと、病気の彼(内縁の夫)の入院費用。 アタシが、3人の男を全部、養わんとあかんなったんや!』




『そんな事があったん?』 なおみはルミの話に聞き入った。



『立ち入った事、聞いてイイ?!』



『なにィ?』



『なんで家に入れてくれるお金が減っていったのー?』


『彼はなあー、自営業やねん。せやから、自分の親や、奥さんと一緒に働いとったんやん。家族経営でな。


アタシの存在がバレてからはな、、、あんまり、給与貰えんなったんや。


奥さんも、絶対、籍は、抜かへんって、頑張らはるし、、、


アタシらに、子供が出来たのが強みで、彼(内縁の夫)の父親も養育費ってことで、そこだけは、理解してくれたのはしてくれたんやけど、、、。


お金は、毎月渡してくれよったんやけど、彼(内縁の夫)が病気になってしもたから、アタシが彼(内縁の夫)の入院費用払わなあかんし、苦しゅうなってなー、、、、、』



 淡々と語るルミの話に、暫くの沈黙があった。そのあと、なおみは、さらに聞いてみたくなった。


でぇ、、??? と、突っ込むなおみに、



『彼を奥さんに返す事にしてん‼️』と、ルミ。



えーーっ‼️ ルミちゃん、あまりにも、せっしょうな、、、


とっさになおみは、そう、感じたが口には出さなかった。


『経済的にどうにもならんかったんや!』


急に気落ちしたように、ルミの声は小さくなりボソッと、呟くような話しかたになった。



『奥さんに病気の彼を引き取ってと依頼する話をした時、奥さん、どんな態度やったのー?


オッケイしてくれたのー?』



奥さんから旦那を奪って勝ち誇っていたにもかかわらず、病気になったからって、、、


経済的に苦しいからって、、、


奥さんに、病気になった旦那を返すって、いったい、どんな神経してるんだ?!



なおみはルミが判らなかった。


ドギマギしながら、疑問をぶつける、なおみに、ルミは、冷静に喋り続けた。



『奥さんな、エラかったで❢』



『実は、奥さんも、最初、彼(ルミの内縁の夫)を人から寝取ったんや。奥さんアタシにこう言うたわ!



私も、人の旦那を奪った。だから、今度は、あなたから、奪われて同じ目に合うことになった。


因果応報やね、、、』って。



『でな、、、前の奥さんの子供も、自分の子供も一緒に育てはったんや』



ということは、そのルミちゃんの内縁の夫は


ルミちゃん


そして、籍を入れている奥さん


その前の奥さん


3人の女性に流れてきているわけだ。


しかも、3人の女性から寝取られる。という形で。



『ルミちゃん、彼(内縁の夫)って、よっぽどイイ男なんだねウインク)』と、煽るなおみに


『悪くないでぇ〜!!』と、直ぐに答えるルミは、面食いと見える😁



     『経済的に』


それが理由で、ルミは、病気になった内縁の夫を泣く泣く、前妻に戻したのだ。

 


ルミの神経が、分からなくなることもあるが、


盲目になれば、人間は、理性など関係なくなるのをなおみはルミから学んだ。


ルミに恐る恐る聞いてみた。


『ねぇ~、ルミちゃん?

今度はルミちゃん自身に、因果応報が返ってくると考えたら、怖くない??』


ルミは、毅然と言った‼️


『せやな!! けど、そんなん、いちいち考えよったら、前に、進まんやんかっ!!』



思考や、理性に邪魔されず、大切なものがルミにはハッキリしていた。



『前の旦那は、10も歳上やったけど、今の彼氏は、一回り以上、歳下やし、当然、いづれは、浮気もする思うわぁ〜


それでも、今、やっぱり、彼と一緒に居たいねん』


『完璧な男やで!!』と、誇らしげに付け加えた。


     さっ、す、がぁ〜‼️


きっぱりと、そう言い切れるルミが羨ましく思えた。


もし、浮気なんかされたら、殺すのなんのって、ルミの事だから、また、取り乱すかも知れない。



それでも、何があろうとも、乗り越えながら結局、最後は、自分のものにしてしまうルミの念の力を密かに尊敬する。



常識に囚われ、人からどう思われるか??なんて、思考を巡らせるよりも先に、



    『私は欲しい‼️ 以上‼️』 


これでイイのだ!! この人は ‼️  

     

     このルミは、、、、、


     これがイイのだ‼️


こんな生き方もあるのだ。そう、感心しているなおみに、


『なおみちゃん、うちに、遊び来ぃひんか??』とルミが誘ってきた。


『息子も、就職して家におらんようになったし、今は暇やさかいな』



そう言われると、ルミの生活ぶりを、急にのぞきたくなった。



なおみは

『行きたいよ‼️いつか、都合つけて、会おうよ。泊まってもイイ???』と、即答した。



『勿論、エエで❢』



心よく迎えてくれるルミに甘えて、なおみは、休みを決めて、再びルミに会いに、大阪へ、行く事にした。




       →第4章へ続く→


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