第12話 各国の反応
南シナ海で発生した「黎明によるEMP攻撃」は、米国政府と軍部を激震させていた。国防総省内の作戦会議室では、国防長官と軍高官たちがスクリーンに映る報告データを見つめていた。
「EMP攻撃の影響は全域に及び、我々のシーフォックスが完全に機能を失った。さらに、中国の海龍も同様の影響を受けたと確認されています。」
海軍作戦部長スティーブン・ホプキンスが冷静な口調で説明する。
国防長官は激昂して机を叩いた。
「我々の最新鋭潜水艦が無力化されただと? 黎明の技術力はどれほどのものだ!」
ホプキンスが冷静に続けた。
「問題はその技術が、これまでの軍事戦術を完全に覆す可能性を秘めている点です。EMP攻撃は、現代の軍事技術において最も脅威的な兵器の一つです。」
「それは分かっている!」
国防長官は苛立ちを隠せずに言葉を続けた。「風間という男を放置すれば、我々の覇権は揺らぐ。彼らを制圧する方法を至急検討しろ!」
一方、作戦室の片隅で会話を聞いていたCIAのエージェントが静かに呟いた。
「風間が次に何を狙っているか、それが分からない以上、下手に動くのは危険だ。」
中国政府もまた、海龍の無力化により激しい議論が巻き起こっていた。人民解放軍海軍総司令官の劉建国が、国家主席習近平に直接報告を行っていた。
「海龍が完全に無力化され、現在復旧作業中です。これは黎明のEMP攻撃によるものと推定されます。」
習近平は厳しい表情で問いかけた。
「彼らの意図は明確になったか?」
「まだ分かりません。ただし、彼らの行動は挑発的であり、我が国の威信を損ねています。」
習はしばらく考え込み、冷静に指示を出した。
「我々は彼らの技術を侮っていた。しかし、これを利用する手段もあるはずだ。国際社会に対して、黎明を危険な存在と位置付け、米国と協力して対応を進める。」
劉は一瞬戸惑った表情を浮かべたが、すぐに敬礼して答えた。
「了解しました。ただし、軍としては武力行使の準備を進めておくべきと考えます。」
習は短く頷いた。
「最後の手段としてだ。」
ロシア政府もまた、黎明の行動に注目していた。大統領府では、プーチン大統領が軍事顧問とともに、南シナ海の状況を確認していた。
「黎明が中国と米国の潜水艦を同時に無力化した。この行動は、軍事技術の分野で新たな局面を示している。」
軍事顧問が報告する。
プーチンは冷静に微笑んだ。
「興味深い。彼らは我々に対する脅威ではないが、米中双方にとっては重大な問題だろう。」
「どう対応されますか?」
プーチンは少し考えた後、ゆっくりと答えた。
「当面は静観する。我々は、この状況を利用する方法を模索するだけだ。」
顧問が少し困惑した表情を浮かべる。
「具体的には?」
プーチンは短く答えた。
「彼らの技術がどのように機能しているかを突き止め、それを我々のものにする。」
日本政府は、黎明が行動不能に陥らせた潜水艦のニュースに対して、国内外から強い圧力を受けていた。首相官邸では、首相の石破茂が閣僚たちと緊急会議を開いていた。
「我々の潜水艦が世界的な注目を浴びている。だが、それは必ずしも良い意味ではない。」
石破首相が冷静な口調で語る。
防衛大臣の中谷防衛大臣が答えた。
「首相、黎明の行動は国際法に反するものではありません。むしろ、彼らの目的が何であるかを世界に明確に示すべきです。」
「だが、それが我が国への批判を招く可能性もある。」
外務大臣が慎重に付け加えた。「特に米中双方からの圧力は無視できません。」
石破は眉をひそめ、机を軽く叩きながら答えた。
「では、シンガポールの調停案をどうする? それが平和的解決に繋がるなら、我々も支援すべきではないか?」
閣僚たちは顔を見合わせ、それぞれの思惑を胸に黙り込んだ。
ニューヨークの国連本部では、安保理の緊急会議が招集され、黎明の行動について議論が行われていた。米中双方は黎明を「国際社会への挑戦」として非難する一方、一部の中立国はその行動に理解を示していた。
スイス大使が静かに発言する。
「黎明が戦争を避けつつ、力を示したことは評価に値する。だが、彼らの意図が不明確なままでは国際社会の不安は解消されない。」
フランス大使も続けた。
「我々はシンガポールの調停案を支持する。直接対話によって、彼らの意図を明確にすることが必要だ。」
一方、米国大使は反発を強める。
「黎明の行動は、いかなる理由があろうとも許されない。我々は彼らを制圧する準備を進めるべきだ。」
会議は結論を出せぬまま、さらなる波乱を予感させる形で閉幕した。
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