第3話 ルイン、契約を結ぶ

病院にて。氷宮花蓮は大量の失血による意識混濁が確認されたものの怪我自体は治っていた。


「氷宮ちゃん…。左足は確かに吹き飛ばされたのよね…?」


そう聞くのは、事務所の所長である間宮だ。


「はい…。棍棒を最初に見た時は血痕は付いてませんでしたけど、吹き飛ばされたあとはついてましたし…それに…配信に私の左足が映ってました…。」


(完全に私の実力不足だ…。一級ではあるけれど私なんて下から数えた方が早い…。)


「それと、あの鬼の仮面をつけた男なのだけれど、ハンター協会の方でも調べてもらったわ。」


「何かわかりましたか…?」


「それが…そんな人物は知らないそうよ。過去の防犯カメラなんかも見たらしいのだけれど、それらしい姿は一切映ってなかったわ。」


私を助けてくれたあの男。ラノベあるあるだったら同じクラスの男の子って線がよくある…。だけれど、誰とも似つかない。


正体を探るよりも、モイストと呼ばれる邪神。その情報を彼は教えてくれた。どこからそれを手に入れたかはサッパリだけれど、石人を作り出す能力…これからは石人関係の邪が出てくるということなのかもしれない。


「あの男の言う事を信じるなら、新人の邪神ってことになるわ…。恐らく使徒も居ないはず…。居たとしても最上位が数体ってのが想定ね。これはハンター協会とも同じ意見。」


やっぱりそういう想定になるよね…。

でもそれよりも重要な事がある。意識が飛びそうな中でも確実にわかったことだ。


「間宮さん…。恐らくあの男は『邪』に属する存在だと思います。それも使徒クラスだと思います。」


「どうしてそう思ったの…?まさか…気配かしら。」


「はい、邪である以上、隠しきれない気配が存在します。どれだけ隠していても確実に気配は漏れます。」


「それなら確かに最上級を軽くあしらう事が出来てもおかしくないわね…。でも何故かしら。だとすると、邪からすると、同胞を売った事になるわ。」


「こう考えれるかもしれません…。餌を提供したって。」


「まさかね…。ならなぜ助けたのかしら…。」


「邪の気持ちなんて分かりたくもないですが、そういう性格なのかもしれません…。」


「さっ!暗い話は置いといてね!復帰配信の時はユズリハちゃんと一緒にコラボしなさい!ユズリハちゃんはまだ四級だからね。」


すると、間宮さんの後ろに立っていたユズリハちゃんが深くお辞儀する。


「よ、よろしくお願いします!」


蔵塚ユズリハ。私より歳がひとつ下の中学生。偵察を得意としており、依頼の危険度を調べて、誰が適性か調べてくれる優秀な子。伸び代があるから面倒を見ている。


そして、ユズリハちゃんは登録者数が80万人と大人気配信者だ。私は110万人なのでまだ抜かれてないけれど、最近のユズリハちゃんの勢いが凄いので負けれない。


「ユズリハちゃん、今度の配信はよろしくね。私も心機一転、初心を忘れないようにしておく。」



□■□■□■□■□■□■□■□■□



「情報は伝えたが、あとはアイツら次第だな。しかし、もう1人くらいこの遊びに付き合ってもらうとするか。出来れば成長要素が多いやつがいい。」


ルインの独り言は誰にも聞かれることは無い。


すると、ルインを呼びかけるような声が聞こえる。


(ーーーい…。ーーーのもとにーて。)


「ん?召喚術か。俺と契約を結びたいやつがいるのか。面白そうだ。そいつを遊びに付き合ってもらうとしよう。」


ルインは開かれた亜空間へと移動する。光の射す方へ移動を開始し、ゲートをくぐりぬける。


そこには建物が立ち並ぶ。子供が沢山集まっており、制服を着ている。どこかの学園のようだ。これは召喚術の授業だろうか。目の前を見ると一人の女の子が汗を沢山流しながら杖を構えている。


「俺と契約を結びたいのはお前か?おなご。」


そう呼ぶと、反応した女の子は驚きのあまり開いた口が塞がらないようだ。


周りを見渡すと、低位の邪が沢山来ており、契約を結んでいる。人型の邪も何体かいるが、せいぜい中級なようだ。1人だけ上級を呼び出し、契約を結んだ事により、指導者であろう女性もその生徒に話しかけている。


この子の周りには人がおらず、恐らく何度も挑戦して失敗した結果、見放されているのだろう。


そこに俺が現れた事により、成功した衝撃で頭の中がいっぱいなのかもしれない。


「おい、おなご。契約をするのだろう。周りを見るに雑兵ばかりだ。俺と契約すれば天を見せてやろう。」


甘い言葉をかければ、乗ってくれるだろう。


「お、お願いします…。あの、あなたの名前は…。」


「俺はルインだ。」


「私と契約を結んでください…!」


「構わん。さっさと手を貸せ。」


慌てたが、女の子は右手を差し出す。


女の子の手の甲に針を突き刺したのち、紋章ができ上がる。


「痛みには耐えるか。これで契約は完了した。」


すると、女の子は質問した。


「私の…契約紋がほかの人と違うんですが、何か違いはありますか…?」


「あぁ、これは俺が独自に生み出した契約紋だ。気にする事はない。なにか条件があるわけでもない。強いて言うならば、従うのではない。お前の人生の遊びに付き合ってやろう。」


「わ、分かりました。」


すると、指導者と思しき女がこちらに歩いてくる。


「志乃さん、邪の呼び出しに成功できましたか。おめでとうございます。長らく苦労されていましたが、呼び出せた事は喜ばしい事です。それで、契約は済みましたか?」


「はい、ルインと名乗る邪と契約を結びました。」


そう言って、志乃は右手の甲の紋章を見せる。


「他の紋章とは形が全然違いますね…。それに名前付きの人型…。ルインと言いましたか…。あなたは少なくとも最上級以上ですね。」


「そうだな…。」


「そのような高位の邪が呼び掛けに答えるとは思えませんでしたので…。」


「面白そうだったのでな…。特に縛りは結んでおらん。安心するといい。しかし、地上に戻るのは300年ぶりか。」


「もしや、ルイン様は相当長生きされてますか?」


「お前達では想像もつかんほど長生きしている。氷河期も経験した、と言えば伝わるか…?」


すると、指導者は驚いた後、深呼吸をした。そして、再度話しかける。


「まさか、貴方様は邪神でございましたか…。」


志乃はその事実に驚いた後、何故かこちらに近づいた。


「えっと…私と契約したのは遊びって言ってましたが…。それは一体…。」


どう答えるのが面白いか…。無難に言った方がいいか?目的のこともあるからな…。


「それは…。」




読者の諸君、また会ったな。


今回はハンターと邪の大まかな説明を行う。


前回、邪の格付けを行っただろう。実力は生きた年数に応じて変わってくるのだ。だが、1000年生きた最上級と100年生きた使徒を比べてみよう。相性の問題もあるが、基本的に格が上の方が強い。技術で応戦はできるであろうが、圧倒的な暴力によって沈められる。


次にハンターについてだ。


五級→祓魔見習い:適正は下級

四級→準祓魔師 :適正は下級

三級→下級祓魔師:適正は下級から中級

二級→中級祓魔師:適正は中級から上級

一級→上級祓魔師:適正は上級から最上級

零級→英雄、逸脱者:使徒または邪神


これで分かってもらえたかな。


氷宮は一級の中では雑魚らしいからな。最上級に負けるのも仕方ない。と俺は判断した。


次は何について話そうか。話すことが決まったらまた言おう。







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