生きて、と君はいった

きみがあまりにも優しく笑うから、この世界はもしかして優しさもあわせ持っているのではないか、と思ってしまって、けれどそれはただの幻想だとわかってもいた。声も、まなじりが人より細まる笑い方も、華奢な肩も触れるだけで心安らぐ指先も。君はその輪郭ごともうどこにも居ないことを、君の遺影で、毎日、再確認している。僕の名前を呼んでと我儘を言いたい。もう全て投げ出して抱き締めてしまいたかった。けれど君はそんなこと望んでやしないから、最期に君が祈った、生きて、を噛み締めて、生きていく。どうか世界よ、優しく、どうか。いつか再び会うときに、その美しさを君に語って、きかせられるように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

恋愛小説集 永遠の恋なんてないよ 蔵野依心 @io_kura

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ