散骨
ある朝、隣で寝ている恋人がもう死んでいることに気付いた。それはもう冷たくなっていた。
私は、なぜか冷静な(おそらく気がふれそうなのをこらえた)頭で、葬儀のことを考えていた。思い出のあの海に撒いて、恋人が好きだと言ったひまわりを浜辺に供えて、しっかり祈りを捧げよう。私はきっと一生、忘れることはないけれど、どうか来世では恋人が幸せであることを神様にお願いしよう。そんなことを考えて、ああ、涙は肝心な時ほど流れない。
そのうちに恋人が「おはよ」と起き出した。
私もそれに倣い「おはよう」と返した。そして、これからの話を持ちかけた。
「あのね、私たち、終わりにしよう」
恋人は最近ではいちばんの優しい、穏やかな顔をして、
「うん、ごめんね」
と謝った。謝りくらいなら愛し続けてくれたらよかったのに。
一緒に住んでいた部屋から旅立つ恋人だった人を見送ったあと、海に行った。
電車で一時間。
二人が一生を約束した海は夏なのに冷たさが冴え渡るかのような青で。それはそれは、美しかった。
もらった指輪を海に放り投げ、大輪のひまわりを、砂浜に供えた。
私を愛してくれた恋人がもうこの世に存在しないことを偲び、永遠がこの世にない儚さを憎んだ。
さようなら愛したひと。来世では幸せな恋をしてね。
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