第8話
それから数日後、運命の日。
清良から『本日決行』とメッセージが来て、亜都は緊張した。
今夜の怜也はホテルのロイヤルスートでの会食を予定していたが、清良による嘘の予定だ。到着後にキャンセルの連絡を入れるから、そういう流れにもっていけ、という指示だった。
肝心のところが雑、と亜都は頭を抱える。
どうやってそういう流れに持って行けばいいのか、さっぱりわからない。
とにかくやるしかない、と亜都はため息をついた。
夜、怜也とともに指定された高級ホテルに行き、ロイヤルスイートに入る。
この部屋もいつかのレストランと同様にアールデコで整えられていて、美しい。
女性従業員がワゴンを押して入って来て、紅茶の準備をする。ワゴンにはケーキも載っていた。
スマホが鳴り、亜都は電話に出る。
「琴峰です」
『私よ、会食のキャンセルを伝えたら仕込みの従業員があなたにお茶をかけるから、あとは流れで』
「……はい」
その流れこそ教えてほしい。いや、教えられても困るのかもしれないが。
『頼みましたわよ』
そう言って、電話は切れた。
「なんだった?」
怜也に聞かれ、亜都はうつむく。
「先方の都合が悪くなって、会食はキャンセルです」
「そうか」
怜也が答えたときだった。
「あ!」
従業員が、手が滑ったように亜都に紅茶をかけた。
「あつっ!」
思わず亜都は声を上げる。
「申し訳ございません! こちらへいらしてください」
女性従業員は亜都を脱衣所へと誘導した。
「服は洗濯してお返しします。その間はこちらをお召しください」
「でも……」
「お早く。清良さまの御命令でございます」
亜都は青ざめ、仕方なく服を脱いだ。下着までは脱げなくて、その上にバスローブを羽織る。
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