一章:仮定法④、それはきっと、魔法の言葉。
目が覚めると、学校の教室にいた。
あれ、おかしいな。家に帰って、いつも通り椅子に座って、猫太郎とおしゃべりして、それから……。
それに、よく見てみればこの教室だって高校の教室じゃない。見ず知らずではない暖かさをはらんでいるけれど、ここは、どこだろう。
帰ってきたときは真っ暗だった空も、今ここから見るととてもきれいな青空だし、何もかも、変なことずくめ。
変な夢。
私はぼうっと消しが荒い黒板を見つめた。
すると突然、ガラッていう大きな音といっしょに視界の端の扉が開いて、一人の大きな男の人がやってきた。
あの顔、どこか見覚えがあるような……
「全員席について~」
「えっ!」
思わず声が漏れた。
あれは、大橋先生。私が小4の時の、担任の先生。
「どうした、藤田」
「い、いえ……?」
今思えば、この自分の声だってひどく幼く、それに高い。後ろをこっそり見れば、顔見知りのみんなが目を丸くして私を見ていた。
どうして、こんなことに?
彼に会いたいからと言って、こんなに精巧な夢を作る技術が私にあったのなら、その才能はもっと別の事に使っても良かったんじゃないか。
だって、余計に虚しくなるだけじゃんか。
「もぉ、寝る」
ぼそっと呟いてから、私は机に突っ伏した。
おでこにむにっとした温かさを感じたのは、多分きっと、気のせいだろう。
帰ろう、あの頃の二人に 三門兵装 @WGS所属 @sanmon-3
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