第21話 特別講義「素数」
「あぁー疲れたー」
ナリーは宿についた途端、ベットに飛びつくなり濁声を発する。
「おつかれさん」
「カズ君、道具屋でわざと私の子と見逃したでしょ!」
「それはごめん」
面倒ごとに巻き込まれたくないというのと、連れ去られるナリーの表情がおもしろかったからつい。それになんとなく、ぽっと出の私はああいう和気藹々とした場にふさわしくないという気がしていたのも理由の一つだった。
「それに、やっぱり変だよ。獅死王のデス・エンハンスがタイミング良く切れた上に、私の魔力があの一瞬だけ20倍以上に膨れ上がったし」
実際、INTは17倍にしかしてないんだけどな。魔法の威力はINTの4/3乗に比例するとかがあるのだろうか。
「超高級毒消し薬を作る能力についてもまだ説明してもらってないよ!?」
酒を飲んだからか、私に弄ばれたことにイラついているからか、やけに攻撃的な口調である。
「そうだな、そろそろ私のスキルについて説明したほうがいいだろう。しかし、スキルを理解するにはまず、お勉強をする必要があるな」
「お勉強?」
「あぁ、数字について、ひいては素数についてだ」
「素数......、あぁ!カズタカのスキルにもたくさん書いてあった」
「まずは約数についてだが......」
普段は大学生に向けた講義しかしていないので、こんな小・中学生レベルの話をするのはあまり慣れてない。何度も質問されながらも、どうしてわからないのかをじっくり考えながら着実に説明を進めた。スキルの獲得順というよりかは説明の難易度の順に教えていった。約数⇒素数⇒<素数判定強化>⇒<エラトステネスの篩>⇒<素因数分解>⇒<素数表>⇒<
「そして素因数分解とは、数を素数の積で表すことだ。例えば、今のナリーのINTの値は750。これを素因数分解すると、2・3・5^3となる」
「ふんふん、なるほど。じゃあ私のATKの値なら3^3・7だね」
「おぉ、速いな!さすがだ」
INTが高いことがあってか、思ったよりかは呑み込みが速く、一時間足らずで理解を終えた。
「ってことはつまり、素因数分解したときの素因数の指数を全て1にしたものが根基ってこと?」
「すごい、その通りだ!」
「はぁ、やっぱりデス・レオンを倒せたのはカズタカのおかげじゃん。私だけ英雄扱いされて、申し訳なさと恥ずかしさが」
「すまない。このスキルについて、みんなに誤解なくうまく説明できる気がしなくてな。ナリーに教えたのが初めてだ」
「にしても、こんな複雑なスキルを扱ってたんだ。常識破りのとんでもスキルだね」
「このスキルで低級毒消し薬の効能を上げて超高級毒消し薬にし、デス・レオンのステータスを激減、そしてナリーのINTを17倍にしたんだ。自分以外のステータスに素数を掛けても一時的な効果しかないから、もう元どおりだろうけど」
「17倍?INTの値はもっと増えてたと思うけどなぁ」
「ほんとか?」
「うん、あの一瞬確かに私のINTは17000は超えていたよ。デス・レオンを倒してレベルが上がった今でもありえない」
確かに、今のナリーのINTは750。17000以上になったというとこは軽く20倍以上に増えた計算になってしまう。なら、彼女の見間違いなのか?
「いったんナリーのINTを2倍にしてみるか」
「うん、やってみて」
ナリー・ルジャンドル Lv23
HP 425?/550 <???>
MP 334?/540 <???>
ATK 189 <???>
INT 2121 (2) <???>
DEF 175 <???>
AGI 242 <???>
「本当だ。本来なら1500のはずなのに、少しだけ多い」
「この(2)っていうのが、カズタカの掛けた素数なんだよね。だとしたら、2を素因数に持つはずだけど......、素因数分解すると3・7・101でやっぱりおかしいよ」
「いい着眼点だな。だけど、これだけではまだナリーのステータスの謎は解けそうにないな」
早速覚えた素因数分解をナリーはしれっと披露する。私はちゃっかり101を素数表に入れる。なんだかんだ初の3桁の素数だ。
「あと前々から気になっていたんだけど、ナリーのHPやMPってほかのステータスと異なるよな、数字の右にハテナがあって」
「うん、それに最大まで回復できない」
「そうなのか?」
「あれ、言ってなかったっけ?いろんな回復薬を過去に飲まされたけど、どれも効果なくて」
うーん、ますます謎は深まるばかりだな。
「まぁ何はともあれ、私のスキルの説明は以上かな」
「ちょっとまって」
「ん?まだ何かあったか」
「<
「あぁ、忘れてた」
素数のことばかり考えていたせいで完全に忘れていた。しかし、これについてどうやってうまく説明しようか。私が異世界転移でこの世界に来たことに触れることは避けられない気がする。
「それとも、まだ言えないことなの?」
起こっているのか悲しんでいるのかよくわからない表情でこちらをじっと見てくる。いや、単に眠くて半目になっているだけか。
彼女は今朝、出会って間もない私に壮絶な過去のことを赤裸々に語ってくれたのだ。それに、彼女がもし魔王討伐の旅に最後まで付き合うとしたら、いつか話すことになるだろう。
「わかった。これについて話せば今度こそ私の全てを話すことになると思う」
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