第20話 宴

 ナリーが"ヘキサウラム"にギルドへと連れていかれ、道具屋には私と店長のみが残った。


「本当はお前さんがやったんだろ?」

「四天王を見たわけでもないのに、ナリーが倒したというのは信じられないのですか?」

「いやぁ、確かに嬢ちゃんはスティープ町では一番の魔法使いさ。しかし、四天王はほかの魔物とは比べ物にならない力を持っている。こんな小さな村など、一瞬で葬られていたはず。C級冒険者なんかが倒したと聞いてもなかなか信じられん」


 四天王とはそんなに恐ろしい敵なのか。


《過去の魔王軍の四天王はどれもS級以上、それに加え凶悪なスキルを持っていることが多いです》


 S級か、この前戦ったマザースライムですらB級なのだから、本来ならただの人間が手を出せる相手ではないのか。


「嬢ちゃんにも不思議なところが多いが、わしはぽっと出のあんたが怪しいと思っただけだよ。実際、人智を超えた技を隠し持っているようだしな」


 そういうと店長はギランと輝く懐疑的な目線をこちらへ向ける。このおじさん、まさか<判定>スキルを持ってたりしないよな?道具だけでなく、人を見抜く力も持っているようだ。


「本当ならせっかくまた出会えたことだし、お前さんを尋問したいところだったんだが、今日はめでたい日なんだろ?あんたもギルドに行ったらどうだ」

「そうですね」


《マスター、本日の戦闘でレベルが上がり、新たなスキル<エラトステネスの篩>を獲得しました。マスターのステータスを表示します》


 素野数隆 Lv15


 HP 1739/1739(37)

 MP 50/94 (2)

 ATK 1081 (23)

 INT 611 (13)

 DEF 893 (19)

 AGI 1739 (37)


 スキル:<素数プライム・ナンバー>、<助手アシスタント


 <素数プライム・ナンバー>:<判定>、<素因数分解>、<根基ラディカル>、<素数表>、<素数判定強化>、<エラトステネスの篩>


 素数表:2,3,5,7,11,13,19,23


 <エラトステネスの篩>:ステータスの値が素数表にある素数で割り切れるかどうかを判定する。


 <エラトステネスのふるい>は本来、素数表を作るのに向いているアルゴリズムのことだ。素数をためないといけない一方で、このスキルを使えば面倒な計算を省くことができる。戦闘中にはなかなか頭が回らないから、かなりありがたいスキルだ。


 私はそんなことを考えながらゆっくりとギルドへ歩みを進めた。




 ◇◇




「あっ、カズタカ!やっときてくれたぁー」


 ギルドに入るとナリーはこちらを半泣きで見つめており、そんなナリーを冒険者たちが囲むようにしてつるんでいる。ナリーはこの町では有名だと勝手に思っていたが、あまりこういうのには慣れていないのだろうか。また一方で、デス・レオン戦の前線にいた冒険者は、間近で見たナリーの火球のサイズをほかの冒険者たちにジェスチャーで伝えようとしていた。


「だぁかぁらぁ、こぉーーーんくらいだったんだって、そんでな、レオンのことを消し炭に変えたわけよ」

「おいおい、さすがにそれは誇張しすぎだろぉ。こんなちっちゃな嬢ちゃんから、自分の体よりも大きな魔法を打てるわけないじゃん」

「それはお前が見てないからでぇ......」


 まだ30分も経っていないはずなのに、みんな完全に酔っぱらっている。


「ナリーちゃん、あの人がカズタカさん?」

「はい、最近パーティーを組んだんです」

「ナリーちゃんにもついに相手が見つかったのね」

「今まで誰が誘っても断り続けたのに」


 ナリーの両隣にいる冒険者のお姉さんがうれし泣きしながら彼女に抱き着く。彼女はほかの誰かとパーティーを組むのを拒みづつけていたのか。それも、呪われたステータスのコンプレックスがあったからか?


「あんたがカズタカかぁ?ナリー様と組むってことは我らの亡きリーダー、デュークよりも強いってことだよなぁ?」

「おっ!"灼熱のテトラ"のハルトがやる気だぞ!」

「「「うぉーっ!!」」」


 ハルトは立ち上がって、ギルドの壁にあった二本の木刀をとり、一本を私に向かって投げる。まさか、これでやれってか?周りも酔ってるせいか、止めに入るどころか、むさ苦しい歓声を上げ、私たちをはやし立てる。しかし、この流れで負けるわけにもいかないな。私は今、町の英雄であるナリーの唯一のパーティーメンバーという体裁だからな、ここは本気で行かせてもらう。


 ハルト Lv32


 HP 864/864

 MP 30/30

 ATK 1023

 INT 61

 DEF 640

 AGI 518


 スキル:<剣術Lv4>


 ちょっと待って、強くないか?


《ギルドではC級として登録されていますが、B級相当といっても過言ではないでしょう》


 困ったな、若干こっちの方がステータスは上だが、あちらには<剣術Lv4>とかいう無視できないスキルを所持している。かといって、善良な人間のステータスを<根基ラディカル>で永久的に下げてしまうのもいたたまれない。さすれば、


「いいだろう。かかってこい」


 私は受け取った木刀をなんとなく構える。


「おい、あんな構えでハルトに勝てると思ってんのか」

「でも、ナリーが唯一認めたやつだしなぁ」


 あぁ、この構えはまずかったらしい。ますます勝てるか不安になってきた。


「ふっ、面白いやつだ。では、行くぞっ!!」


 私は思いっきり木刀を振りかぶり、見事向かってきたハルトに命中させる。


「ぐはっ!?」


 しかし、さすがにやりすぎたか。ハルトはそのまま吹っ飛んでいき、向こうの壁に衝突した。ちょうど彼のINTの値が素数だったもんで、即急に私のATKに掛けさせてもらった。今の私のATKは2867で、彼の3倍弱はある。これほど差があればスキルの有無関係なしに圧勝できるようだ。


「「「「「うぉーっ!!」」」」」


 私の一撃を見て、より一層けたたましい雄たけびが沸き上がる。


「まじかよやりやがった」

「さすがだな!」

「デュークのいない今、ハルトが町一番の剣士だと思っていたが」

「こりゃぁナリーちゃんが惚れるのも納得だね」

「ちょっと、なんで勝手に惚れてることにしてるんですか!?」


 騒がしくも平和を感じる宴が夜遅くまで続き、私たちはやっと自分たちの宿に戻れた。

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