第13話 死の毒
「あれ、日が落ちてきたな」
集中していると、研究していた時のように時間があっという間に過ぎるな。だいぶ疲れたし、道具屋で野宿できる最低限の道具をそろえたから大丈夫だろう。
「水場は、あそこ池でいいかな」
そこそこきれいだし最悪そのまま飲めなくもないが、一応煮沸消毒をするか。前回の反省も踏まえて火打石を持ってきたので、火に関しては問題ない。私はポーションを飲み干し、空いた瓶に水をくむべく池に近づく。ちなみに、ポーションはかなりあまじょっぱく、むしろ水分補給には向いていない。
《忠告。この池は毒により汚染されてます》
「えっ」
水 状態:死の毒
本当だ。明らかに飲んでは行けなさそうな状態である。にしても、水にも<判定>が使えるのか。助手さん、死の毒って煮沸消毒でどうにかならんもんなのか?
《「死の毒」という状態は知りません。しかし、「毒」状態の水は煮沸消毒だけでは解毒できないので、この水も不可能と推測》
助手が知らない状態か。「死」ってついてるくらいだし、私にはどうすることもできなさそうだな。くそっ、ポーションを飲んで無駄にのどが渇いただけじゃないか。
「少し休憩したら夜にならないうちに帰るか」
私は近くの石の上に腰かけ、ふぅっと息を吐く。ここまで10kmくらいは歩いたし、毒消し草採集のときも立ちっぱなしで足がじんじんと痛む。しかし、自然はいいものだな、心が落ち着く。私は生まれてからずっと都会にいたものだから、こういう緑に囲まれた空間に触れたことがほとんどなかった。
私はこの絵にかいたような自然に気づけば魅了されていた。普段は気にすることもない景色をぐるりと見まわし、五感で自然を感じる。風の音、鳥の声、木漏れ日、土のにおい、倒れこんでいる黒髪の少女......。
「倒れこんでいる黒髪の少女!!??」
私は久々に声を荒げ、とっさに彼女のもとへ駆け寄る。
「おい、大丈夫か!?」
「あぁ、冒険者さん。わたし、ゴホッ」
少女は何かを伝えようとするものの、咳きこんでしまう。
「無理するな、一旦落ち着こう」
池の近くで倒れていたからおそらくこの毒でやられたのだろう。プライバシーという概念がこの世界にあるのかどうか知らんが、今は緊急事態。勝手にステータスを見させてもらう。
ナリー・ルジャンドル Lv21
状態:死の毒
HP 12?/500 <???>
MP 213?/520 <???>
ATK 182 <???>
INT 715 <???>
DEF 168 <???>
AGI 232 <???>
スキル:<剣術Lv1>、<槍術Lv1>、<弓術Lv3>、<盾術Lv1>、<鑑定>、<???>
<???>:<???>、<???>、<???>、<判定>
魔法:<
なんなんだ、このステータスは。至る所にハテナがあるじゃないか。しかし、今はそんなことを気にしてる場合じゃない。やはりこの子も「死の毒」に侵されていたか。
助手さん、今持っている毒消し草で彼女の状態異常を直すことは可能か?
《毒消し草では効能が弱すぎるため、通常の「毒」状態すら治せません。道具屋にある毒消し薬を推奨します》
了解。
「あんた、毒消し薬やポーションは持ってないのか」
そう聞くと、彼女は小さく首を横に振る。まぁそうだよな。毒消し草をとりに毒消し薬を準備しようとは思わないよな。それに彼女の横には大量の空の瓶が投げ捨てられている。ポーションも使い果たしてしまったのだろう。
私が現在持っている素数は2,3,7,13,31,37、ポーションは2つか。よし、37をAGEにかけて残りは彼女のHP回復に使うか。これなら彼女の命は後30分は持つだろう。私は彼女を抱きかかえ、道具袋からポーションを二つ取り出し、それを飲むように促す。薬草が入った道具袋はもったいないが、邪魔だからここに置いておく。
「今から全速力で道具屋に向かって毒消し薬を買う。かなりスピードを出すから気をつけろ」
彼女は一瞬きょとんとするも、すぐに縦にうなずく。まだある程度意識があるようだな。生命力は2%程度しかないというのに。この前の私ならとっくに意識を失っていた。
さて、47歳数学者よ。少女を抱えたまま10kmを30分で走りきるのだ。
素野数隆 Lv11
HP 1147/1147 (37)
MP 62/62 (2)
ATK 713 (23)
INT 403 (13)
DEF 589 (19)
AGI 1147 (37)
スキル:<
<
素数表:2,3,7,13,31
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