第11話 帰還
「おぉっ!冒険者が帰ってきたぞ!」
「無事に倒せたのか?」
「はい。親玉と思われるスライムを駆除し、巣屈にスライムは一匹も残ってないです」
「あぁ、なんとお礼を申し上げたらいいのか」
「冒険者様、こちらが報酬の銀貨10枚です。私たちからはこれっぽちしかだせませんが」
「いえいえ、私も今かなり困窮しておりまして。十分にありがたいです」
「まぁ、そんなにお強いのに」
まさか、短剣一本と燃え尽きたたいまつしか持ってないとは思わないだろうな。
「聞く話じゃ、あちこちで魔王軍による襲来が相次いでいるらしい。冒険者の需要と供給がくるっているのも仕方がないか」
元冒険者である農家のおじさんはやれやれと肩をすくめ、大きなため息をつく。にしても、魔王軍か。この世界にきてからまだスライムとしか戦っていないな。どれほど強い敵なのか、さっぱり見当がつかない。
◇◇
「マザースライムですか」
「はい、聞いたことありませんか」
「いえ、初めて聞きました。分裂や合体を繰り返し、ステータスを上げるスライムがいたとは」
「そうですか」
魔物について詳しそうなカウンターのお姉さんに聞いてみたが、助手の言う通り、マザースライムは広く知られていないレアエネミーらしい。
「それと、魔法を使うスライムも珍しいです。スライムは環境に強く依存する生き物なので、火山地帯にいるスライムが炎魔法を使うということならありますが、4属性もそろえているなんて。もしかして、かなり強敵だったのではないですか?」
「いやぁ、まぁ、多少は」
「もう一度忠告しますが、一人での旅は勧めません。推奨階級もこちらが推測でつけたものなので外れることだってあります。想定外の事態に備えて、一人旅は慎んでください」
「......検討します」
◇◇◇
「一人旅は慎め、ねぇ」
《アドバイス。あの方の言う通り、ほかの冒険者とパーティーを組むことを推奨します》
今回の旅で一人旅の難易度を痛感した。特に、魔法が一切使えないとなるとこの先の旅が不安だ。それに、能力を使えば味方のステータスを一時的に大幅に向上させられる、強力なバッファーにもなれる。しかし、この能力についてどう説明すればいいんだ。この世界では素数というスキルどころか、その存在すら知られているかどうか。
《この世界の数学はかなり遅れており、簡単な四則演算しかできません》
まじか。いくら中世とはいえ、私のいた世界ではその時代でももう少し進んでいたぞ。
《この世界では数学の代わりに魔法科学が進んでいます》
「なるほどねぇ」
宿屋のベットでゴロゴロと寝返りを打ちながら、今回の依頼について振り返る。何とか今日も食事にありつけ、残り銀貨は9枚。あと3日はもつ。
「しばらくは簡単そうな依頼を受けて、ゆっくり仲間を集めるとするかな」
できることなら、魔法が使えて、私の能力を理解できるほど頭が良くて、この世界の常識が全くない私を支えてくれる人がいいなぁ。
《忠告。そのような人物はいないかと》
うるさいな。わかってるよ、そんなこと。
現実世界でも素数のことはあまり周囲にわかってもらえなかったんだ。
汚い数だの、意味がないだの、散々だ。
まして数学レベルが小学生以下のこの世界で、私のことを正しく理解する人なんて。
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