第6話 冒険者登録

 町の中心に向かって少し歩くと、そこにはほかの建物とは雰囲気の違う、格式高い建物があった。


《ここがこの町のギルドです》


 中に入ると冒険者と思しき多くの人が壁に貼られた紙をまじまじと見ている。外とは違い、騒々しく、むさくるしい。とりあえずカウンターのお姉さんに声をかけ、冒険者登録とやらを試みる。


「すみません。冒険者登録をお願いしたいのですが」

「はい、新期の方ですね。登録には登録料銀貨2枚と、ステータスの提示をお願いしています」

「銀貨2枚だと......」


 まずい。これでは文字どおり無一文となってしまう!


「......わかりました」


 しかし、ここで渋っても仕方がない。ほかの稼ぎの手段が見つからない以上、賭けに出るしかない。これも初期投資だと思えばいいのだ。私は震える手で小袋から取り出した二枚の銀貨をカウンター上に置き、ステータスウィンドウを表示する。


 素野数隆 Lv7


 HP 629/629 (37)

 MP 34/34 (2)

 ATK 119 (7)

 INT 17

 DEF 85 (5)

 AGI 51 (3)


 スキル:<素数プライム・ナンバー>、<助手アシスタント


 <素数プライム・ナンバー>:<判定>、<素因数分解>、<根基ラディカル>、<素数表>


 素数表:なし


「なるほど、実力はD~C級冒険者並みですね。にしても、何ですかこのスキルは。どれも見たことがありません。いや、このスキルはどこかで見たような......。それに、ステータスの右側にある数字はいったい?」

「あぁーえっと、これはー」

「まさか、<ステータス偽装>を使用してないですよね?」


 ステータス偽装?この世界にはそんなスキルもあるのか。くそっ!ここで躓いてしまっては私のライフラインが途絶えてしまう。


「......ですが、偽装するにしては弱すぎますね。このステータスが本当ならD級冒険者からスタートすることができますが、いかがいたしましょうか?」


 ふぅ、なんとか耐えた。「弱すぎ」という言葉はかなりひっかかるが。だが、この世界にきてすぐは最下級のステータスだった私でも、今ならD級から開始できる。しかし、全く戦闘にはまだ慣れていなし、E級から始めた方がよさそうか。


《アドバイス。マスターのスキルを考慮するとD級でも問題ないかと。それに、E級では受けられる依頼が限られるので、安定した収入は得られません》


 そうか、このカウンターのお姉さんは私のスキルのことが一切わからないのか。私のスキルなら大体の相手のステータスを大幅に下げられるし、大きな素因数を持っていてステータスが下がらなかったとしても、その素因数を自分のステータスに掛けて自身を強化することができる。素因数分解さえできれば基本的にタイマンでは無敵だろう。


「では、D級からの登録をお願いします」

「かしこまりました。パーティーはすでに決まっていますか?」

「パ、パーティー?」

「まさか、あなた一人でいくつもりですか」

「......。危ないですかね?」

「失礼ですが、あなたの年齢とステータスでは」


 うっ、痛いところを突かれた。私は異世界ではなく異世界をした。昨日の宿で確認したが、自分は47歳のやつれたおっさんのまま。確かに、一人では頼りない。不健康な生活を続けていたからか、体にもガタがき始めている。


「.......。」

「まぁ、その辺は自己責任でお願いします。くれぐれも無茶をしないように。道具や装備はきちんとそろえて挑んでくださいね」

「わかりました。ありがとうございます」


 多少の想定外はあったものの何とか冒険者登録を終えられた。お姉さんは道具をきちんとそろえろと言っていたが、具体的には?


《ポーションや毒消し薬のことでしょう。ですが、所持金がないマスターには関係ないことです》


 助手よ、余計なお世話だ。


《それに回復に関してですが、マスターは素数を使うことで現在HPを上げられるので、ポーション類は不必要と思われます》


 それもそうだな。現在HPと現在MPはほかのステータスと違って、いくつも素数を掛け合わせることができる。それなら道具は初めからなくてもよかったか。

 私は冒険者登録を終えると、横にある掲示板に向かう。そこには様々な張り紙があり、依頼内容、報酬、そして冒険者の推奨階級が書かれている。


「D級の依頼でよさそうなのはどれかな。おっ、これなんかどうだろうか」



【依頼:スライムの駆除】


 最近、スライムが私の畑を荒らしに来ていて困っております。スライムの巣屈らしき場所を近くに発見したので、そこでのスライム駆除をお願いします。


 報酬:銀貨10枚

 推奨階級:D~C



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